インバウンド旅行者向け観光サービスのWAmazing加藤代表と、宿泊施設に対するソリューション事業とスマートホテル事業を展開するSQUEEZE舘林代表に、新型コロナウイルスによる観光ビジネスの冷え込みにどう立ち向かったかを伺いました。

WAmazing 翻訳受託と行政受託事業に一時転換

駒木)インバウンド市場は、やはり新型コロナウイルスの影響は大きいですか?

加藤)大きいかどうかなんてもんじゃなくて、完全に止まっています。
ちなみにインバウンド市場というのは実はなくて、台湾市場、香港市場、中国市場がそれぞれあって、全部最適化しなくちゃいけないんです。

台湾政府が日本への渡航警戒レベルを3(警告)まで引き上げて、4月には訪日客はほぼゼロになりました。そこで、サービスの一時休止を決め、4月にオフィスの全退去を決めて、5月1日から仕事のない人はいったん休業や出向とし、雇用調整助成金も受給しています。

駒木)WAmazingのコロナ対策、本当に打ち手が早かった。あの時やれることは全て一気にやり尽くしているように見えました。

いつぞやの日経産業新聞に加藤さんが「How not to die(死なないために)キーを打ち続けよう!」と掲載していましたが、まさにあの通りですね。『どんなに危機に追い込まれても、スタートアップは、やる気を失わなければめったに死ぬことはない。だからキーを打ち続けよう、死なないために!』、今でもこの記事、心に響いています。

加藤)ありがとうございます。5月には、従業員の40%を占める外国籍人材の雇用維持を目的に、翻訳受託サービスを開始しました。自社サービスのローカライズを担当している海外のネイティブ人材の強みを翻訳やローカライズサービスで生かす方針です。

画像: WAmazing 翻訳受託と行政受託事業に一時転換

駒木)行政受託事業にも結構取り組んでいるようですが、どんなものがありますか?

加藤)調査、プロモーション、看板やホームページの多言語化、台湾の旅行博の出展代行など、いろんな公募案件があるんですが、その中から弊社ができそうなものについて応募しています。結果、プラットフォーム事業の縮小をほぼカバーできて今回は行政受託だけで年間1.2億円強の 売り上げを達成できました。また、8月、9月から徐々に休業させたメンバーを戻すこともできています。

駒木)さすがですね、コロナで売り上げゼロになった部分を行政受託で乗り切ってしまうなんて、なかなか普通じゃできない。

ニューノーマルに応じた法人向けサービスを開始

駒木)舘林さんのところは、コロナの影響はどの程度ありましたか?

舘林)ホテル事業はインバウンドの比率が7割くらいで、特に韓国、台湾が多いのですが、そこはガクッと落ちました。大阪で6棟ホテルをやっていますが、コロナ前から日韓関係の悪化の影響で2019年の夏から落ち始めました。今年になってコロナの影響が出始めて、稼働率も一時的には2割に落ちました。

その時に、思いっきりターゲットを振り替えたんです。3月には法人向けにテレワークに対応したレジデンス型モバイルオフィス「Minnモバイルオフィス」の提供を開始しました。また、駐在員の帰国時や海外赴任の延期に向けた法人支援プランも開始しました。急な帰国や自主隔離のニーズがあって、今までなかった客層が3〜4割になって、1カ月、2カ月の長期滞在も増えています。

駒木)素早い選択でしたね。日本人向けに転じたことで、業績はどう変わりました?

舘林)ここ(Minn上野)は8月オープンですが、ほぼ黒字化できていて、週末などは満室になり始めています。3〜4割が長期滞在で、あと3割がGoToトラベルで、残り2〜3割が近隣のステイケーション、ワーケーションというような割合です。

今は9割以上が日本人になっていて、帰国者の受け入れと、ステイケーションに振り分け、東京は平均稼働率が70%を超えています。今までは外国人がメインなので、9割はOTA集客でした。今はポートフォリオ的には自社予約が20〜30%で、直の法人経由も同じくらいで、OTA比率がぐっと下がりました。

画像1: ニューノーマルに応じた法人向けサービスを開始

駒木)長期的にみると、このコロナでポートフォリオが組めるようになったのは、逆に良かったようにも思えますね。

舘林)そうですね。これでインバウンドが戻ってきたら強いと思います。長期滞在では、定期清掃に切り替えることができるので、原価率も下がります。

一方で、ソリューション事業においてはコロナは追い風です。多くの企業がこれまでのホテル運営では難しいという危機感を持ったことから、企画、コンサル、運営、ソフトウェア開発までのニーズがすごく上がっていて、DXという観点で企画から入っていくことが増えてきています。

われわれは宿泊特化の運営でしたが、もっと連携して、ホテルを滞在のプラットフォームとして捉えていただいて、そこからいろんな商品へとつなげていきたいと考えています。

加藤)『街ごとホテル』みたいな感じになると面白いですね。この喫茶店で朝食、こっちの飲み屋で夕食、それにアクティビティもパッケージでといった具合に、街全体が実はホテルの中の施設みたいに見えるといろんな可能性が広がりそうです。また、地域内でUberEats的なもの走らせて、ホテルにいながら街のあらゆるモノが取り寄せできるといい。

舘林)まさにそのコンセプトで、「街全体が体験になる」が加速すると思います。

駒木)地域活性化にも直結しそうですね。さらに、街全体で各々がもつ観光客の情報を連携させる仕組み(デジタルマーケティング)を作ることで、利用客の潜在ニーズの発掘はもちろんのこと、地域(観光地)における人の流れ、動線を意識的に作り出すことができるんじゃないでしょうか?
これからのスマートトラベルの未来像が見えてきた気がします。

次回は新しいホスピタリティのあり方やビジネスの方向性について伺います。

画像2: ニューノーマルに応じた法人向けサービスを開始
画像3: ニューノーマルに応じた法人向けサービスを開始

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