ドローンを活用した法人向けソフトウェアを展開する株式会社CLUEは、「テクノロジーを社会実装し、世の中の不を解決する」を事業ミッションに掲げ、テクノロジーありきではなく、課題解決型でプロダクトを開発・サービス提供しています。代表の阿部亮介さんに、キャナルベンチャーズ株式会社 代表 朝田聡一郎が、EC事業での創業からドローン事業に転換して、さらなる高みを目指す姿勢に迫ります。

研究者ではなく起業家として航空産業を盛り上げる道を目指す

朝田)今年は 5G 元年と言われ、今後ドローン関連の大きな規制緩和も見込まれています。ドローン機体の技術進化と合わせて急速に事業への利活用が進むと考えられます。CLUEは、コロナ禍にあって昨年12月に20億円の大型調達を発表されました。多くの心強い株主が参画される中、キャナルベンチャーズからも出資させていただきましたが、ドローン業界を牽引していく雄として期待しています。今日はいろいろ伺いたいのですが、まずは自己紹介を兼ねて起業までの経緯を教えてください。

阿部)ドローン事業に早い段階で参入したのは、私のバックグラウンドが影響しています。母親が科学雑誌『Newton』が好きで、幼稚園児のころから読み聞かせられてきたんです。特に飛行機やロケットなど、航空系が好きで、ずっと科学技術に興味関心が強い少年時代を過ごしました。

大学も工学部航空宇宙工学科に進んで、JAXAとの共同研究室に所属していました。多くの研究者の方が「日本は国家予算が少なくてなかなか研究が進まない」という話をされていて、国の予算で航空産業を盛り上げるのは難しいと感じるようになりました。そんな経験から、学生ながらに、民間の立場でサステイナブルなビジネスモデルを構築した上で、日本発で航空産業を盛り上げたいと思うようになりました。そこで、大学院では工学の全体像を体系的に理解し、さらに経営の勉強をしようと思い、システム工学を学べる専攻と経営学を学べる専攻の2つの専攻をダブルメジャーしました。

新卒ではディー・エヌ・エーに入社して、エンジニアとしてWebアプリケーションの開発運用を経験しました。起業するなら事業のゼロイチや急激な成長フェーズを経験するようなところにまず身を投じたほうがいい。そういうPDCAが早いのはIT系だろうと考えたからです。

その後、若いうちに海外での事業経験をしたいと思っていたので、シンガポールで現地スタートアップに入社して、プロダクトマネージャー兼アプリ開発エンジニアとして1年ほど働いていました。友達のエンジニアと一緒に起業しようという話になって、帰国して2014年8月に起業しました。

画像: 研究者ではなく起業家として航空産業を盛り上げる道を目指す

EC系で成功するも、さらなる高みを目指してドローン事業に転換

朝田)ANRIの佐俣アンリさんの書籍『僕は君の「熱」に投資しよう―ベンチャーキャピタリストが挑発する7日間の特別講義』にもありましたが、創業時はEC系の事業を立ち上げて、それを売却してドローン事業を立ち上げられたんですよね?

阿部)会社を設立した2014年当時は現在のような資金調達環境ではなく、最初から航空産業の軸で事業を作るのは資金面で難しいと判断しました。当時、有名な女性向けキュレーションメディアが30億円で売却されたというニュースが印象的でした。そこで、われわれもコンシューマー向けサービスで3、4年走って、同規模のM&Aによるキャピタルゲインを使って第2創業で航空産業の事業を作ろうと計画しました。

私も共同創業者もファッションが共通の趣味だったので、アメリカのファッションレンタルサービス「LE TOTE(ル・トート)」などを参考に事業プランを考えました。女性向けに月額数千円で服やアクセサリーが使い放題で、気に入ったら買えるというサービスでアメリカでは急激に事業成長していたビジネスモデルでしたが、日本には当時なかったものです。そこで2014年12月にアクセサリー使い放題のサービス「Lovin'Box」をリリースしたところ、初動がすごく良く、リリース直後にテレビ東京のWBSから取材を受けたこともあり、自己資金では在庫が補えないくらいユーザーが増えました。このタイミングでシードラウンドの資金調達をしようと、VC数社と会ったところ、何社かにご興味を持っていただき、出資を決定してくださったVCさんも数社いらっしゃいました。

ところが最後にお会いしたアンリさんに、「M&Aで小さいヒットを狙うんじゃなくて、これから成長する市場で大きいホームランを狙うほうが阿部さんには絶対向いている。もしこれから新しく事業を作るのであれば、ぜひ出資したい」と言われたんです。アンリさんのその言葉で、自分の視座がすごく開けたように思えました。最初から大きなホームランを狙う打席に立って良いんだと。当時自分は27歳。30歳くらいまでの猛烈に働ける時期にはヒットじゃなくて、ホームランを狙いにいくべきだと気づかされました。

その後、事業転換を決めて「Lovin'Box」はairClosetに事業譲渡しました。「今後、非常に大きくなる市場で事業をゼロから創ろう」と心に決めて、アンリさんにご出資いただいたことをきっかけに、もともとやりたかった航空産業の軸で、いろいろな航空関連のテクノロジーや市場、事業を検証した結果、2015年当時に北米やヨーロッパを中心に徐々に産業利用がスタートしていたドローン市場に行き着きました。日本国内ではドローンを扱うプレイヤーはほとんどいませんでしたが、今後確実に社会実装が進むテクノロジーだと確信が持てたため、ドローン市場に決めて事業を再スタートしました。

朝田)事業が失敗していたわけではないし、出資も決まっていたのに、そこを断ってまでピボットするのはすごく勇気のいることだと思います。何がそう決断させたのでしょうか。スタートアップの起業家にも、すごく参考になる、励みになる話かと思います。

画像: EC系で成功するも、さらなる高みを目指してドローン事業に転換

阿部)当時出資を決定いただいていたキャピタリストの方々からは、「せっかくこんなに成長していて、メディアからの取材が殺到していて、ユーザーも伸びてるのに本当にやめちゃうの?」と言っていただきました。ファッションというドメインに対して日本国内の市場だけを見ると、人口動態的に若い女性はこれから減っていくため、単体事業では年商百億円規模が成長の限界かなと感じられるところがあります。創業当時、ヒットを狙っていた自分としてはそれくらいの事業規模でも十分だと思っていました。しかし、ヒットではなく、ホームランを狙うのであれば、一千億、二千億円、さらにもっと大きな市場を作るのを目指して、最初数年は無風でも波が来た時に沖にいるような、これから急成長する市場に身を置いておくことが重要だと思ったんです。

朝田)まずは「百億円」を目指して頑張っていこう考えているというスタートアップも多いと思いますが、その上の視座って何なんでしょうか?

阿部)会社は「社会の公器」であり、自分が創業した会社は自分のモノではないと意識できているか、そういう会社にしたいと思っているかではないかと思います。株式会社における成果とは、利益を創出することと、会社の事業活動を通じて会社が掲げた使命を達成し、世の中を良くすることの2つだと思います。あくまで個人的な感覚ですが、売上百億円くらいの規模だと、まだ自分のために事業をしている感覚があります。社会の公器として、会社の使命を達成することによって世の中を良くするには、その上の視座が必要になってくると思います。

テクノロジースタートアップとして社会の課題解決に向き合いたい

朝田)改めて、CLUEという社名とロゴに込められた意味を教えてください。

阿部)最初の社名はLovin'Box株式会社でしたが、事業譲渡した後に現社名に変更しました。CLUEには「課題解決の手がかり」という意味が込められています。社名変更当初からドローン事業に転換することは決めていましたが、将来的にはドローンに紐づく周辺のテクノロジーを有機結合させながらソリューションを作っていきたいという思いがありました。会社のロゴは丸い点一つ一つがテクノロジーを表しています。それが線で結ばれることで有機結合されてソリューションを作り出す球になっています。

朝田)社会課題を解決するビジネス創造のために、業界を越えて連携する「ビジネスエコシステム」という考え方がありますが、それと似ていますね。1社だけで課題解決は難しいので、いろんなステークホルダーとつながることによって大きなことを達成できます。

阿部)そうですね。世の中にあるさまざまなテクノロジーを有機結合させて、社会の不の課題解決をするソリューションを生み出し続ける会社でいたいという思いが社名とロゴには込められています。

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