AI教育の重要性が強調される中、一方でスキルを持たない人々にもAIを使いこなせる未来を切り開く流れがあります。株式会社MatrixFlowのAIプラットフォーム「MatrixFlow」は、プログラムの知識がなくても直感的に使えるインターフェイスと高度な機械学習アルゴリズムを備え、すでに多くの企業で活用されています。代表取締役の田本芳文さんにMatrixFlowの開発経緯と、AI社会の近未来像を伺いました。

真のAIの民主化を目指して起業

学生時代に理論物理学の研究をしていた田本さんが、最初に就職したのはWebエンジニアで、その間にプログラミングを学んでいきました。その後、AIサービスのベンチャー企業に転職し、データサイエンティストとして活躍しました。「業務自体は楽しかった」という田本さんがノーコードのAIプラットフォームを独自に開発したきっかけは、2017年にグーグルが提唱し始めた「AIの民主化」という概念でした。

「グーグルの理念自体はとても共感するものがありましたが、実際に提供するツールはエンジニアや大企業を対象にするものばかりで、実態とかけ離れていると感じました。そこで一般のビジネスパーソンでも使えるようなツールを開発できないものかと考え始めました」と田本さんは語ります。

当初はプログラミングを必要とせず、誰でも利用できるAIツールを、休日を利用して「半分趣味」として個人で開発し始めました。最初のうちは誰でもダウンロードできるようにオープンソースで無償提供していましたが、次第に独自のAIツールを制作することが楽しくなり、さらに多くの人々に価値を提供できる可能性を見いだしました。そして、田本さんは2018年にMatrixFlowを創業しました。

AIプラットフォームMatrixFlowは、ブラウザーから利用できるため、インストール作業は不要です。これにより、簡単にAIを導入できます。サンプルデータを使用したツールの体験版は無料で、月額サブスクリプションで有料版も提供しています。その結果、数年間でユーザー数は5000を超え、30社以上が導入するプラットフォームに成長しました。

最短4クリックのユーザーインターフェイス

最短4クリックで操作可能なユーザーインターフェイスを備えるMatrixFlowは、田本さんが志向する「真のAIの民主化」を具現化したプラットフォームです。プログラムの知識が不要であり、かつ、顧客が使いやすいUI/UXに重点を置くことで、データの前処理から機械学習までの一連の手続きを容易に行え、需要予測などのツールを作成できます。

当初はディープラーニング(深層学習)に着目していましたが、顧客の声を反映し、企業が保有する大量のデータベースやExcelなどのデータを活用した機械学習に方針を転換しました。今では数値だけでなく、日本語のテキストも活用可能です。独自のAutoML(自動化された機械学習技術)のアルゴリズムを搭載し、データマイニングやテキストマイニングによるクラスタリングも容易に行えます。

クラスタリングなどはマーケティングにも応用可能ですが、過去のビッグデータを活用する機械学習は、新しい手法を模索するマーケターよりも、食品メーカーや物流会社の需要予測などでよく使用されるそうです。AutoMLによってカスタマイズなしでも需要予測が可能なため、業種を問わず幅広く導入されています。また、API連携も可能であり、RPAツールを活用して自動化を進めている企業も存在します。

「人間は教育がないほうが楽」という発想

AI導入に際し、「費用・時間・手間」が足かせになり、うまくいかない企業が大半であると指摘されています。企業がAIを導入する場合、AIスキルを持ったエンジニアやリテラシーを持つ社員の教育が不可欠であると一般的に考えられがちです。しかし、「教育は良いこととされてますが、よくよく考えるとリソースを使い、人間に負荷を与える行為です。だから、私は教育が必ずしも良いものとは思っていません。ツールとは本来は学ばなくても使えることが理想なので、MatrixFlowはそれを目指しています。人間は、教育がないほうが楽ですし」と笑います。

「現状不足しているAI人材の採用、教育などの課題もMatrixFlowで解決できます。ある程度のITリテラシーがあれば誰でもAIを活用できるという点にフォーカスを置いています。実際に、AIについてまるでわからない企業でも、MatrixFlowを導入することで、全社的にAIを使いこなせるようになったという事例も多くあります。目指す社会の実現に近づいてきたのかな、という実感はあります」と田本さんは語ります。

(後編へ続く)

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