「harBest」は、AI開発で時間と手間のかかる学習データを、低コストで高品質に作成し、ノーコード／ローコードでAI開発からAIビジネスの効果測定まで完結できるプラットフォームです。
高品良さんは、AIの開発や運用において不可欠なデータ収集、データ作成に課題を感じ、その解決のために株式会社APTOを創業しました。起業の経緯と「harBest」の特長についてお話を伺いました。
AI開発には「大量で高品質なデータ」が不可欠
大学卒業後、SEとして大手基幹系システムのインフラ構築などに従事した高品さんは、2017年にVRコンテンツの制作会社を設立しました。その一方で、フリーランスでSEとして働きながら、AIの新たな可能性に目を向けるようになりました。
高品さんが最初に取り組んだテーマは、SNSの自動炎上検知サービスでした。しかし、AI精度が一向に上がらなかったため、そのサービスは途中でピボットすることに。精度が上がらない最も大きな原因は、大量で高品質なデータの圧倒的な不足でした。また、そのデータを集めるには膨大な時間と費用がかかるという課題がありました。AIに学習させるためには数10万件のデータが必要で、自分たちでやるのは難しいし、外注すると費用がかかりすぎます。
AIに必要な質の良いデータを簡単に大量に集められるサービスはないのかと模索しました。自動炎上検知サービスを作るつもりが、AIのデータ作成がネックとなって作れなかったことが、APTO（アプト）の創業につながりました。
機械学習は教師あり学習を使うのが主流で、必ずデータが必要となります。データを集める方法としては、Webサイトから任意の情報を収集する、ユーザー行動のログを集める、データを購入するなどの方法があります。また、正解が付与されたデータ（教師データ）を利用する「教師あり学習」では、アノテーション作業に非常に多くの人の介入が必要となるケースが多くなります。そこでアノテーション作業をクラウドワーカーに実施してもらえるプラットフォームを構想し、日本初のアノテーション専用副業アプリ「harBest（ハーベスト）」の開発を始めました。
質も量も重要になるアノテーション作業
アノテーション（annotation）とは「注釈」という意味で、例えば「犬」と「猫」を見分けるAIを作る場合、犬の画像には「犬」、猫の画像には「猫」という「注釈」をつける必要があります。そのアノテーションデータをAIに学習させると、AIは犬と猫の特徴がどこにあるのかを自身で学習します。シベリアン・ハスキーとアラスカン・マラミュートという似たような犬種の場合は、ある程度の量の学習データがないとAIも判断を誤ったりします。
（参考：アラスカンマラミュートとシベリアンハスキーの違いは？
https://dognoie.com/blog/dog-picturebook/alaskaanmalamute-siberianhusky/ ）
アラスカン・マラミュート
シベリアン・ハスキー
アノテーションは質も量も重要であるとともに、AIの学習が終わった後もAIは基本的に劣化が進んでいくことを前提に考え、恒久的に、データの収集、アノテーションをしていく必要があります。
クラウド上でAIデータ収集・作成、AI開発、効果測定ができる「harBest」シリーズ
2020年1月創業のAPTOは、同年12月にクラウド上でAIデータ収集・作成ができる「harBest for Data」α版の提供を開始し、2021年4月にAI作成支援プラットフォーム「harBest」シリーズを正式リリースしました。
アノテーションデータを簡易作成できる「harBest for Data」は、マンパワーが必要なデータ収集・作成の効率化、品質の自動評価を実現します。ノーコードでAI開発が可能な「harBest for MLOps」は、「harBest for Data」との連携でシームレスに開発できます。AIビジネスの効果をリアルタイムに可視化する「harBest for Manage」は、継続的なビジネス改善をサポートします。
「harBest for Data」は、クラウドワーカーにアウトソーシングしてデータを手軽に活用することができます。スマートフォンアプリを通じて作業を行うことで、現在は、クラウドワーカーへのインセンティブとして、Amazonギフト券に交換可能なポイントが付与されます。
高品さんは、「このプラットフォームは、データを収集したい企業側と、ワーカーとして協力するユーザー側の両方にとって価値がある仕組みです」と語っています。
後編では、人間参加型のAI活用についての現状と今後の方針について、お話を伺いました。
harBest(ハーベスト)イメージムービー
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