「東京かあさん」は、第二のお母さんとしてシニア女性が家事サポートをしてくれるサービスです。継続利用はおよそ500世帯、登録しているお母さん(ワーカー)は累計約2000名に及びます。同サービスを運営する株式会社ぴんぴんころり 代表取締役の小日向えりさんに、サービス提供を通じて実現したいことや、今後の展望を伺いました。
「家のことは自分で」という固定概念を変えていきたい
小日向さんは、「東京かあさん」を拡大することで、日本人が持つ家庭に対する価値観をアップデートしたいと考えています。
海外では、必要に応じて家事代行やベビーシッターを利用する文化が当たり前です。しかし日本では、「家のことは自分でやらないといけない」という固定観念が強く、どんなに便利でリーズナブルなサービスがあったとしても、心理的な抵抗から利用をためらってしまいます。
家事や育児にかかる負担は、共働きの家庭にとって大きな課題です。小日向さんは、「女性の社会進出が進み、共働きで仕事と育児を両立するのは本当に大変なことです。なのに日本では、まだベビーシッターや家事代行の利用率は5%程度。夫婦で抱え込まず、『東京かあさん』のような外部サービスを利用するのは当たり前だという文化ができていくといいなと思います」と語ります。
このような家事代行サービスの普及は、家庭内の負担を軽減し、夫婦のストレスを減らすだけでなく、シニア世代や若い世代が持つ仕事や社会活動への参加意欲を高める助けにもなるでしょう。その結果、社会全体が活力に満ちて健全な成長を遂げることが期待されます。
最後の一日まで『今日も幸せだ』と思ってもらえるような社会を
高齢化が進む日本では、2030年にはおよそ3人に1人がシニア世代になる見込みです。この人口構造の変化は、社会に大きな影響を与えることが予測されます。しかし、シニア世代が持つ豊富な経験や知識、そして働く意欲を活かすことで、彼らが新たな活力源となり、社会全体の発展に寄与する可能性があります。
さらには社会問題になっている人手不足の解消につながるだけでなく、シニア世代が抱える貯蓄に対する不安や孤独を解消する助けにもなります。「東京かあさん」では、シニア世代の方々が働くことで、自らの力を社会に貢献することができる場を提供しています。
多くの方からは、「『東京かあさん』で働くようになってから元気になった」という感想が寄せられています。また、責任感や適度なプレッシャーが、かえって働く喜びとなっているという声もあります。
小日向さんは、「一人でも多くの方に生きがいと喜びを届けることで、心身ともに元気で、最後の一日まで『今日も幸せだ』と思ってもらえるような社会を目指しています」と述べています。このような取り組みが、社会全体が幸福に満ちたものとなるための一歩となることでしょう。
将来はパラレルキャリア支援も
小日向さんに今後の展望を尋ねたところ、「シニア男性および40~50代の活用」と「仕事以外のサービス提供」という、2つのビジョンが示されました。
まず1つ目のビジョンは、サービスの担い手としてシニア女性だけでなく、シニア男性も対象に含めることです。利用者の中には、体力や腕力を要するハウスクリーニングや日曜大工といったDIYに対する需要があります。そのため将来は、シニア男性に向けた新たなサービスを展開したいと考えています。
小日向さんは、今後、「東京かあさん」の対象年齢を広げる計画もあるといいます。現在の登録ワーカーの平均年齢は65歳ですが、その下の世代も含める理由について、次のように説明しています。
「人生100年時代と言われており、定年退職年齢は65歳から70歳へと上昇しています。しかし、65歳から突然セカンドキャリアに挑戦するのは体力的にも気力的にも厳しいでしょう。そこで、50歳頃に一度別の仕事に挑戦し、パラレルキャリアにシフトすることを提案します。体力に余裕がある50代なら、さまざまなことに挑戦しながら学び、新しい仕事に取り組むことができます。自分の体力や人生設計に合わせて仕事の量も調節できるため、将来の働き方として理想的だと考えています。」
2つ目のビジョンは、仕事を通じてシニア世代に生きがいを提供するだけでなく、趣味や学びなど、さまざまな形で生きがいを提供することです。その実現のためには、自社だけでなく、同じ価値観を持つ企業と協働して事業を展開することも視野に入れています。
小日向さんは、5年以内には上場し、上場後も社会から得た信頼を基盤に、さまざまな企業と連携し、事業を進化させていきたいと語りました。