気候危機を回避するべく、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現が求められています。しかし、CO2排出量算定の難しさから企業の取り組みが伸び悩んでいるのが現状です。この課題を解決するソリューションとして「カーボンオフセットクラウド」を提供するSustineri株式会社 代表取締役の針生洋介さんに、創業経緯やサービスの概要、提供意義について伺いました。
環境問題の専門家が「誰もやらないのであれば自分で始めよう」と起業
Sustineri(サスティネリ)は、「Sustainable」を意味するラテン語で、持続可能な社会を作るために必要なインフラを作っていきたいという想いが込められています。
針生さんは、気候変動やサステナビリティに関する調査・コンサルティングやカーボン・オフセットの普及活動など、10年以上環境問題に関わる事業に携わってきました。2015年頃からESG投資(環境や社会に配慮した経営を行っている企業に対する投資)を重視し、環境問題に取り組む企業が増える中で、専門知識やデータが必要となる排出量算定の難しさがカーボン・オフセットの阻害要因だと認識していました。
さらに2019年頃からIT技術を使って気候変動対策を効率化しようという流れが世界的に強まってきたのに対して、日本ではそういった動きが起きないことにも危機感を感じていました。それなら自ら行動を起こそうと2020年に退職し、プログラミングを学び2021年に気候変動対策を行う企業を支援するSustineriを創業しました。商品やサービスを販売するWebサイトやアプリとAPI連携することで温室効果ガスの排出量を算定・可視化し、カーボン・オフセットができる「カーボンオフセットクラウド」を開発・提供しています。
企業と環境プロジェクトをマッチングして実施のハードルを下げる
カーボン・オフセットとは、経済活動で排出するCO2などの温室効果ガスの量に見合ったCO2削減活動に資金を提供して埋め合わせるという考え方です。例えばオンラインで商品を販売すると、商品を車で配送する際にCO2を排出します。そこで森林管理でCO2の吸収を促進するプロジェクト等に資金提供を行い、排出したCO2を差し引きゼロにするという仕組みです。Sustineriが企業とプロジェクト間を仲立ちしてカーボン・オフセットの実施をスムーズにします。
導入する企業側のメリットは、Webサイトやアプリ上で排出量を表示することで、環境意識の高さをアピールし、他社との差別化ができることです。日本では、まだ法的な義務はなくカーボン・オフセットへの関心はそれほど高くありません。しかし、将来的には製品・サービスの選定要件としてCO2排出量の少なさを含める企業や個人が増加していき、気候変動対策をやらないと自社の商品・サービスが選ばれなくなることも考えられます。
「企業がカーボン・オフセットに取り組まなければいけない状況は確実に来ている」
「すでに外資系企業や交通・物流系企業など、気候変動問題に対して関心が高い企業からの問い合わせが増えています。小規模のeコマースでも徐々に問い合わせが増えていて、気候変動に対する問題意識を持つ企業が増加している感じがあります」と針生さんは言います。
今後、企業がカーボン・オフセットに取り組む際にはどのようなところから始めればよいか尋ねたところ、次のように答えてくれました。
「気候危機は大きな社会課題であり、企業がカーボン・オフセットに取り組まなければいけない状況は確実に来ています。排出量を削減するためには現状の排出量を正確に把握することが必要です。まず排出量を正確に算定して全体像を理解した上で、費用対効果を考慮しながら削減対策を取り組むという流れがおすすめです。」