政府は、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラルの達成を目標に掲げています。しかし、海外と比べて日本では気候変動対策への関心が薄く、企業や人が消極的なことが課題となっています。企業のカーボン・オフセット実施を支援するSustineri株式会社 代表取締役の針生洋介さんに、環境問題に対する社会の変化や自社が目指すゴールについて伺いました。
社会が気候変動対策に目を向けるようになり、企業の取り組みが加速した
科学的には、このまま気候変動が進むと人類が生きていくのが困難な状況になることが指摘されています。パリ協定では「世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より十分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をする」ことを目標として掲げており、その実現に向け日本も社会全体でカーボンニュートラルに取り組むことが求められています。
環境問題に積極的なアメリカやヨーロッパと比較すると、日本は3~5年程度意識が遅れていると言われています。学生を中心に気候危機への対策を求める「フライデー・フォー・フューチャー」運動は、2018年にスウェーデンから始まりSNSで世界中に拡散しました。
しかし、日本ではニュースとして取り上げられたものの、社会全体では大きな盛り上がりを見せませんでした。針生さんは、日本人は気候変動問題が“自分ごと”という感覚が薄いことが気候危機に対する動きを鈍らせていると分析しています。
企業価値を創造するために“自分ごと”として捉え始めている
それでも最近では、気候問題の深刻化や企業が求められる役割の変化などを背景に少しずつ風向きが変わってきています。
上場企業に適用されるコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)では、2022年から気候変動への対策についてプライム市場企業に対して厳しい情報開示が求められるようになりました。また気候変動対策の実施状況などの環境評価を行うイギリスの非政府組織CDPは、国内時価総額上位500社を対象に行っていた調査を、2022年から東証プライム上場企業すべてに拡大することを決定しています。
針生さんは、自身が創業を決意した2019年頃と比較した現在の状況について、次のように語っています。
「当時は企業評価を上げる手段、または社会的な責任という文脈で環境対策に取り組むケースが多かった。しかし、顧客から選ばれるため、また付加価値を上げるためといった文脈で取り組むケースが急増しています。企業の新規事業開発室や経営企画室といった部署からのSustineriへの問い合わせも増えている印象があります。社会が気候変動対策への実施を求める動きが加速したことで、今では多くの企業が“自分ごと”として捉え、取り組み始めていると感じます。」
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)をデジタルで支援していく
経済産業省の「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」でも取り上げられたサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは、企業が「持続可能性」を重視し、企業の稼ぐ力とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との対話の在り方を変革するための戦略指針です。
Sustineriは、企業や組織の脱炭素化とサステナブル・トランスフォーメーション(SX)を実現するためのサービスを提供しています。針生さんにSustineriが目指す将来の姿について尋ねたところ、次のような答えが返ってきました。
「日常生活や企業活動のあらゆるシーンでCO2が可視化され、それを元に消費者や企業が意思決定できる、そんな世界を作っていくことが理想です。そして消費者側は『CO2の排出が少ない製品を手軽に選べる』、企業側は『容易にサステナビリティ対応ができ企業価値の創造につながる』サービスを提供していきたいと思っています。できれば企業活動に欠かせないシステムにカーボンオフセットクラウドが組み込まれて、あらゆる業界・業種の製品・サービスでCO2排出量が可視化できるようになると素晴らしいですね。」