事業計画クラウド「Scheeme」は事業計画書・収支計画書や開業届・業者マッチングなど、スモールビジネスの起業シーンにおける必要ファクターを網羅しています。Scheeme株式会社代表の杉守一樹さんは、地域金融機関との連携強化により、創業から事業成長までのワンストップサービスを目指しています。
「Scheeme」のプラットフォーム化、SaaS化をさらに進めたい
駒木)コロナ禍でリレーションシップ・バンキングの必要性が注目されていますね。
杉守)金融機関のビジネスモデルは、融資先が事業を拡大して、設備投資のためにさらに融資が必要になって、その金利で儲けるものです。事業者が成長していかないと、自分たちも大きくなれないが、モニタリングできないのでコンサルティング機能をもてないことが、地銀の大きな課題になっています。リレーションシップ・バンキングの流れに僕らがしっかりと入っていければ、みんなが成長することができると思います。
駒木)地銀が地域の中小企業の相談相手としてのポジションで、事業者の成長をどう見極めるかがポイントで、スコアリングにも通じてくると思います。未来の可能性にかけてお金を稼ぐような仕組みができるといいですね。杉守さんが今後伸ばしていきたい領域をお話しいただけますか。
杉守)まずは税理士や地銀、金融公庫とのアライアンスです。それによって、「Scheeme」のプラットフォーム化、SaaS化を進めていくことができます。
駒木)資本性ローンを使った資金調達にも取り組んでいますね。
杉守)資本性ローンの目的は呼び水で、借入金の一部を自己資本とみなすことで、財務バランスを正常化する狙いがあります。債務超過になっていると格付けが下がって融資が受けられないが、一回資本を入れることによって、次の運転資金の融資が受けられます。
駒木)コロナが明けると「Scheeme」のユーザーが一気に増えるのではないですか。
杉守)僕らの人員不足をアライアンスによって補えれば、かなり急激に増えると思います。会計ソフトとツインで使ってもらいたいですね。
駒木)銀行口座やfreeeからの情報に基づいて、Scheemeでアドバイスができるようになりますね。
杉守)リコメンドやチャットでの即時相談もできます。スコアリングで大事なのは業種業態での横比較と、業界的な季節指数で、データの蓄積がどれだけできるかです。会計ソフトだとバッティングしてできないことが、僕たちならできます。
駒木)本当にその会社に合った提案を、AIを使えば自動的に出せるようになってきますか。
杉守)Scheeme内で事業計画書、補助金申請に必要な書類を作成でき、会計ソフトや銀行口座と連携することで収支計画と資金繰り表、銀行の保証協会への申込書も自動化されます。
駒木)Scheemeを導入するのは、財務部長を一人雇うようなものなんですね。
金融の民主化が進む中で、新たなビジネスモデルを作る
駒木)自分たちで資金を集めて、プレイヤーとして融資を行うことは考えていますか。
杉守)それはもちろん考えています。銀行は支店のある都道府県内でしか融資ができないのが暗黙のルールですが、デジタルならかなりいろんなことができます。モニタリングと与信の仕組みがあれば他社でもできると思いますが、金融の民主化がされていく中で、僕らがモデルを作ることもできるし、他社にどんどん使ってもらいたい。自動車なら自動車、飲食なら飲食に特化した、いろんな関係各所が融資とか貸金をやるようになると思います。
駒木)業界特化型のCICのようなサービスでしょうか。
杉守)そうです。法人のスコアリングを、会計ソフトと資金繰りのデータや、個人の信用情報も全部合わせて、銀行だけじゃなくて、いろんなキープレイヤーが融資できるようになります。
駒木)自社メディアでの情報発信や融資の相談などもやっているのでしょうか。
杉守)メディアサイト「Scheeme mag(スキームマグ)」では、事業計画から資金調達、経営までの実践的な情報を発信しています。公認会計士や税理士、銀行員など、融資や補助金の専門家が監修しています。
駒木)月にどのくらいこのメディアから相談がきますか。
杉守)1日に5~10件の相談がありますが、最初のコロナ融資のときには、1カ月間に獲得できたリードは3万件に達しました。
駒木)それはすごい。融資や創業を考えている人が求めている情報を提供しているんですね。
杉守)そうです。その派生でもないですけど、店舗・テナント・オフィス居抜き物件に特化した不動産ポータルサイト「店舗マッチ」も運営しています。
駒木)事業の運営も含めて現在は何名くらいですか。
杉守)エンジニアが6名、カスタマーサクセスが3名、人事・コーポレートが1名と、アライアンスで元金融機関の者が1名、トータル12、13名でやっています。
カスタマーサクセスは採用を進めています。現状では引き合いだけの営業で、クロージング率が25%くらいあるとはいえ、もっと勝てるゲームなのにできない。申請やユーザーサポートも自分たちでやっていて、顧客が増えるとパンクしちゃう状態で、セールスチームとユーザーサポートを分離して、もっと多くのニーズに応えられる組織にしていくために採用を進めています。
駒木)将来どういう会社にしていきたい、どんな経営者になりたいと考えていますか。
杉守)24歳で起業したときに応援してくれた人もいましたが、できるはずがないと否定されることも多かった。挑戦することってすごいリスクで、自分の責任を取ってやっているのに、なぜそれを応援できないのか。海外との開業率の差が2倍以上ある中で、「挑戦を支援する」ことを会社として掲げているので、起業家をもっと増やすプロダクトによっていろんな人が挑戦して、それがいろんな人に波及することによって、「挑戦を支援する」世界が見えてくるかなと思います。
そのためにプロダクトをどんどん磨いて、ユーザーを増やして、つぶれない会社を応援していきたい。金融の大きな変革の時期、潮目はきていると思うので、そこにサービスをしっかりと展開していきたいと考えています。
駒木)挑戦する起業家を全力で応援する社会を作りたいというのは僕たちも同じです。今後に期待しています。本日はありがとうございました。