フリーランスのための家賃保証付きお部屋探しアプリ「smeta(スメタ)」を開発するリース株式会社が目指すのは、家賃の支払い履歴を信用・信頼に変えて、さまざまなサービスや買い物ができるプラットフォームの構築です。代表取締役の中道康徳さんに、変化する社会への対応や今後の展望を伺いました。
これからは個人の信用・信頼を可視化する時代になる
2020年末にはsmetaの正式版をリリースし、ユーザー数は5000人を超えました。フリーランス・個人事業主を主なターゲットにしていますが、開業医、外資系社員などのユーザー比率も増加傾向にあります。どちらも収入が多い職業なので意外に思われがちですが、従来の家賃保証審査では落ちてしまう対象です。外資系企業の場合は、物件を所有している家主が企業名を知らずに却下される、開業医の場合は、開業してからの年数が浅いと借入金が多く収入が安定しないと判断されるなどの理由で審査に落ちやすくなります。そのような人たちの受け皿にもなっています。
日本ではフリーランスや個人事業主は増加傾向にあり、そのほかにアクティブシニア、外国人も多数います。新型コロナウィルス感染症によってリモートワークが広がった今は、さらにこの流れが加速していくと考えられます。大手企業では、一定年齢を過ぎると正社員から業務委託に切り替えるなど、働き方の選択肢を増やしつつ新陳代謝を図る取り組みを始めています。業務委託になると企業に所属しなくなるため、今のままだと自由に働く人が増えれば増えるほど、家を借りられない人が増えることになります。
このように社会が変化する中で、従来型の、企業の信頼でモノを売り買いするシステムが通じなくなると思っています。これまでは、基本的には企業に勤めて、定年退職まで働いて、勤め先の名前で信用を得てお金を借りるのが当たり前でした。しかし、これからは個人の信用や信頼を可視化して、個人の価値でモノの売り買いができるようになる必要があります。
smetaが本当に変えたいのは、物件審査のように個人の信用を企業で働いているかどうかで判断する現在の社会システムです。企業に対する信頼ではなく、他の要素で信用・信頼を可視化できる世界をつくりたいと考えています。
Credit Techとして支払いをもっと面白く
今後は、支払い履歴を信用・信頼に変えて、さまざまなサービスや買い物ができるプラットフォームの構築を目指しています。例えば家賃滞納がない人には信頼スコアを付与し、車の購入や物件購入時の住宅ローンで優遇されるサービスです。住宅ローンについては既に金融機関と話を進めているところです。
また別なアプローチとして、家賃保証という性質をもう少し面白くしたいとも考えています。現在は優良支払者も滞納者も、賃貸物件を契約する際には待遇に差はなく支払う金額も一緒です。一定条件をクリアすると生命保険料が安くなるシステムのように、真面目に家賃を支払うと契約時の保証額が安くなるようなシステムであればよいと思っています。
中国では、人の信用度を信用スコアとして数値化するシステムが広がっています。EC大手のアリババが展開している芝麻(ジーマ)信用では、決済アプリのAlipayと連携して支払い履歴をもとに与信管理を行っています。利用者側は、信用スコアが上がると割引や追加サービスなどの恩恵が受けられるメリットがあり、企業側は、信用スコアを管理することで不正や滞納の軽減が期待できます。
このように家賃支払いと個人の信用とが紐づくシステムが普及すると、家賃滞納者が減少するはずです。滞納がなければ、フリーランスや外国人に対して貸し渋っていた家主も意識が変わるでしょう。そうすると不動産市場はもっと変化が起き、さらなるイノベーションが起こるはずです。