双方向動画を活用したクラウド型OJTシステム「ClipLine(クリップライン)」は国内8,500店舗、18万人が利用しています。ClipLine株式会社 代表取締役社長の高橋勇人さんは、支援体制の進化でさらなるシェア拡大を目指します。
短尺動画(クリップ)の活用でOJTを1対多人数に拡張
サービス業では人手不足が続き、チェーン店の多くが本部からの重点施策が実行されない、店長の業務負荷が大きい、離職率が高いなどの問題を抱えています。高橋さんは、その背景にある構造的な問題を指摘します。本部の意図が現場に伝わらない「伝言ゲーム化」、店長に情報が集中する「店長ボトルネック」、さらに、顧客と接するスタッフに教育やケアが行き届かない「スタッフ放置」などです。
来店する顧客はマニュアル的なサービスを求めているわけではありません。わざわざ店に来て食べたり、買い物をしたりするのは、何かしらのサービスを受けたいと思っているからです。だからこそ、サービス業にマニュアルがなくてもいいと高橋さんは考えます。1対1のOJTは教える人によってばらつきがあって、ダメなやり方が伝染してしまう危険性があります。一方、集合研修は移動時間や日程・場所の調整などが必要で、半日の研修を受けて3日後にどれだけ覚えているかと考えると非常に効率が悪い。
ClipLineは短尺動画(クリップ)を使い、OJTを1対多人数へ拡張するもので、クラウドOJTとも言われます。飲食店であれば、30秒前後のお手本映像をタブレットで見て、挨拶から料理の提供、会計、料理の手順、盛り付けまで、一連の仕事を映像で学べます。自分で撮影した映像をお手本映像と見比べることもできます。さらに、映像をレポートして提出して、「経営者や上司がチェックし可否判断する」「同僚が“いいね”」で評価するなどの活用も可能です。
国内サービス業の10%の生産性向上に貢献したい
ClipLineは映像が短いので活用度が高く、新商品のレシピ、営業力の強化など、いろいろな場面で利用できます。スーパーバイザー向けでは臨店の回数を減らして、代わりに店の様子を映像で送り返してもらえばいい。新規出店に伴う大量の新人教育、外国人の育成、店長の育成カリキュラム、接客コンテストなどにも利用できます。
クライアントごとにどのような使用目的で活用すると費用対効果が上がるのか、じっくり打ち合わせをし、その目的に合うコンテンツ制作、運用サポートなどを提供しています。システム的なカスタマズは一切していません。映像、設定、利用目的はクライアントごとに違いますが、それに耐えられる柔軟な管理画面になっています。
2017年5月に特許を取得した「映像音声クリップを利用した自律的学習システム」によって、現場のベストプラクティス(暗黙知)を数十秒単位のクリップ(形式知)へと転化するサイクルをデジタル技術によって高速に回すことができます。
2014年10月にサービスを開始し、外食・小売企業から始まり、現在では介護福祉・薬局・美容など幅広い分野に導入され、約8,500店舗、18万人に利用されています。導入効果として、基礎教育の均質化による顧客満足度向上を反映した売り上げアップ、離職率の削減、新人教育の時間短縮などがあります。
大規模チェーン店が主要ターゲットですが、小規模事業者にも一定のリテラシーがあることから活用されるようになりました。さらなるシェア拡大のためにも、プロダクトの進化、支援体制の進化は必要です。ゆくゆくは、国内サービス業の10%の生産性向上に貢献したいと考えています。