株式会社SUKILLS(スキルズ)のCEO西山直隆さんは、日本とインドをつなぐプラットフォームTech Japanを立ち上げ、お互いがより理解し合うことで可能性がさらに広がると考えています。IT世界最高峰であるインド工科大学を中心に、インド高度IT人材のデータベースを構築し、日本企業とつなぎます。
日本の技術やスタートアップ情報をインドに発信
西山さんはインド事業を立ち上げた経験から、「日本企業がインドに注目しているといっても、デスクでマクロの数字を見ているだけでは、イメージがわかないのではないでしょうか。まず何が起きているか見る必要があります。意思決定ができる人が現地に行ってみないと、何も起こらないからです」と語ります。
一方、インドにおいて日本のテクノロジーやスタートアップの認知度は低く、具体的にどういう技術を持ってどんな社会課題を解決しているのか、外国人材が活躍できる機会の有無などが知られていません。
例えば、CEATECに参加するインドのスタートアップに、日本企業とのビジネスミーティングをアレンジしようとしても、コンシューマープロダクトを作っている会社は知られていますが、B2Bの会社は聞いたこともないと言われます。そこで、インド企業にヒアリングして、IoTデバイスを作っているがセンサーに弱いという話を聞き出し、センサーに強い企業を紹介すると非常に感謝されます。採用についても、将来はアメリカの大企業に就職したいと言う学生に、具体的に何がしたいかを聞いて、日本の技術を話すと興味をもってくれます。
日印連携を促進するTech Japanは、日本の技術やスタートアップ情報をインドに発信します。また、IT世界最高峰であるインド工科大学(IIT)中心に、インド高度IT人材のデータベースを構築し、日本のスタートアップとつなげることを目指しています。
インド工科大学と連携して人材データベースと寄付講座開設
IITの新卒採用では、企業は大学から割り当てられた日時にキャンパスで面接し、その日のうちにオファーを出してサインをもらわなくてはなりません。面接解禁日の12月1日がDay1で、日程の早い企業ほど欲しい人材を獲得しやすくなります。世界的な企業が多数参加していて、過去の採用実績や給与水準などによって日程が割り当てられます。
「それなりの実績や人脈がないとDay1級の人材は採用できません。良い層の方々に出会っていないのに、インド人も大したことないという誤解が生じています」。優秀なインド人とチームを組んで仕事をしてきた西山さんは、日本企業の理解不足を残念がります。その一方、日本で5年、10年働いた優秀なインド人が、転職先を日本で探す方法がなくて、FacebookやWhatsAppのインド人コミュニティーやIITの卒業生のグループで情報交換をするしかないという現状がありました。Tech Japanが独自に立ち上げたインド高度IT人材のデータベースには、そういった日本在住の高度インド人材や、新卒採用では会えないようなDay1級の人材が登録されています。
さらに、日本のテクノロジー情報を海外に発信し、高度人材の活用や最先端技術の実装を目的としたR&D機能の設置に向けて、IITハイデラバード校と日印連携に向けたMoUを提携しました。
まず3月から、IITで初めて日本のテクノロジーに関する寄付講座を開設します(コロナウイルスの影響を受けて時期延期)。授業は英語で、日本のスタートアップがどのような最先端技術を開発しているのか、どのような社会課題を解決しているのか、インドの人材にどのような機会を提供できるかを中心に現地の学生に発信します。