不動産業界とIT業界でさまざまな経験を積んだ中道康徳さんは、不動産×信用×テクノロジーをテーマに、リース株式会社を起業し、お部屋探しアプリ「smeta」とSaaS型家賃保証支援システム「家賃保証クラウド」を開発・提供しています。起業の経緯とサービス内容について伺いました。

不動産テックのスタートアップを2社設立

大学で建築を学んだ中道さんは、新卒で不動産デベロッパーに入社しました。業務支援システム開発を担当し、さまざまなプロジェクトに携わった経験が今に生きています。その後、不動産情報サービス会社の不動産サイトにおける集客を担当し、さらにインターネット広告会社で広告配信のシステム開発に携わりました。

この広告配信の仕組みは、DSP(Demand-Side Platform)の技術により、従来の固定価格の枠売り広告ではなく、効果効能に応じて価格が変動するものでした。表示回数やクリック単位で広告枠を購入し、広告オークションの入札競争が0.1秒以内に行われます。この技術は、リーマン・ショックで失業した金融工学エンジニアが広告業界に転職したことがきっかけで生まれたと言われています。

広告配信事業は大きな成果を上げ、4年目で上場を果たしました。中道さんはそこに安住するのではなく、目標達成したことで卒業を決め、2015年7月に不動産テックのスタートアップである株式会社ターミナル(現・スマサテ株式会社)を設立し、不動産のおとり広告を除去するサービスなどを展開しました。さらに、膨大な不動産データから適正な賃料を類推する技術を開発し、AI賃料査定システムを提供しました。

賃料推計の分野では国内トップクラスになりましたが、ここにも安住せず、自問自答します。適切な賃料を予測し、大家の収益を維持するのは喜ばれるサービスですが、より深刻な問題がいくつか潜んでいます。人口減少や訪日外国人の増加や外国人の就職活動の苦労などです。

不動産需要はライフサイクルによって変化し、少子化などの要因で、賃貸の部屋が空く可能性が増えていても、大家は外国人にはなかなか貸したがらない傾向があります。不動産会社は近隣トラブルなどを警戒して、切り捨ててしまうことがあります。こうした問題を解決できないかと考え、新しい経営者にバトンタッチをして、中道さんは一度フリーランスになり、いろいろな可能性を模索することにしました。しかし、そこで直面したのは、「賃貸物件を借りるハードルが高い」という問題でした。こうした個人の与信面の課題を解決するために、2社目のスタートアップとして、不動産領域から個人信用(Consumer Credit)のアップデートにチャレンジするべくリース株式会社を2018年9月に設立しました。

個人の信用価値を評価できる社会に貢献したい

働き方改革が叫ばれ、個人の働き方が多様化する中で、不動産賃貸の与信審査手法は旧態依然としたままです。不動産業界の本質的課題を考えるためにフリーランスになった中道さんは、すぐに引越そうにも家を借りられない状況に直面します。それなら買ってしまおうと思ってもローン審査が通らない。最大の理由はフリーランスという社会的属性が故に与信が低いから、つまり社会的な信用を証明できないからです。

金融の根幹は信用取引ですが、信用を支えているものの大半が日本においては事業者になります。個人にお金を貸しているのではなく、そこに紐付いている法人(勤め先)に貸し付けているようなものです。コロナ禍直前くらいに、副業解禁と働き方改革の延長で、大手企業が社員の個人事業主化を促す取り組みに着手しました。雇用契約そのものの見直しの第1弾が始まっています。

時代の変化にシステムが追い付いていない状況下でリースを立ち上げた中道さんは、「個人の信用価値を最大化する」ことを目指します。

日本のCredit Techに挑む

先行する海外のCredit Techを見てみると、中国アリババグループ「芝麻(ジーマ)信用」は、個人の属性や行動履歴から算出した信用スコアが与信や金利優遇などの判断材料になります。アメリカの場合、堅実なクレジットヒストリ―(支払い履歴)を築き、高いクレジットスコアを維持することで、賃貸契約やローンが好条件で結べます。

中国もアメリカも個人に信用が紐付いているのに、日本の場合、個人ではなく勤め先に信用が紐付いていることが大きな違いで、この状況を変えることがリースの挑戦です。そこで、社会的な信用を証明することが難しいフリーランスのための、賃貸向け与信サービス「smeta(スメタ)」を自社開発し、2019年4月よりサービスを開始しました。

さらに、2021年10月より提供している家賃債務保証会社向けにDX推進を可能にする業務支援SaaS「smetaクラウド」と、入居審査のためのAI業務支援ツール「smeta入居審査AI」を統合し、「家賃保証クラウド」という新しいサービス名で提供しています。

(後編へ続く)

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