ChatGPTの出現は社会やビジネスを大きく変革し、2024年以降の企業の働き方や顧客との接点は根本から再定義されようとしています。過渡期とも呼ぶべきこの時代に、企業はどう備えておくべきか。

キャナルベンチャーズが主催する「Digital TransformationMeetup(DTMeetup)」は、スタートアップや事業会社同士が深い議論を交わすことでビジネスの活性化を目指す定期交流イベントです。2024年2月28日(水)に開催されたDTMeetupのテーマは、「新たな局面を迎えるDX~DXを成功に導く共創パートナーとの出会い~」です。事業会社のDX部門、新規事業開発部門、およびCVCに所属する約50名の方々(満席)が参集し、積極的にスタートアップと交流され、盛況のMeetupとなりました。

今回は企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するプロダクトについて、AI(人工知能)/CX(カスタマーエクスペリエンス)パートに分けて注目のスタートアップ5社が登壇しました。前編ではAIパートとしてバベル、APTO、トランスファーデータの講演を紹介します。

登壇者
株式会社バベル代表取締役 杉山大幹さん

業務フローを変えずに営業活動の可視化を実現

株式会社バベルは、商談解析クラウド「ailead(エーアイリード)」の開発・提供を行っています。代表取締役の杉山大幹さんは、aileadによって実現する営業活動の効率化と、自社でツールを導入して大きな成果を上げた取り組みについて紹介しました。

画像: 業務フローを変えずに営業活動の可視化を実現

多くの企業では、営業活動のデータ管理や営業生産性を向上させるためのPDCAサイクルが回せないことが課題となっています。特にコロナウイルスの影響で働き方が大きく変化したことから従来型のOJTスタイルが激減し、マネジメントがより難しくなっています。

私たちはそれらの課題を、「営業活動の可視化」と「最適化」というソリューションで解決しています。具体的には、aileadを導入することで、Web会議ツールやIP電話を使用したオンライン商談データを自動で録画し、AIが分析して情報を可視化します。

既存の業務フローを変えずに営業活動の可視化ができ、負担をかけずにセールスイネーブルメント(営業組織の強化・改善のための取り組み)の基盤を作ることができるのが特徴です。日本を代表する大企業をはじめ多くの企業で導入されており、現在では400社以上で導入されています。

自ら成長したプロセス

私たちは、日本一営業生産性が高い組織を作ることを目指していて、自分たちもそれを体現しました。

これらが実現できた理由は、営業生産性に徹底的にこだわり、Salesforceとaileadをフル活用したことです。まずオンラインで問い合わせが入るとSalesforce上で顧客情報を自動保管し、リード(見込み顧客)のスコアリングが行われます。その上でセールスチームに通知が送られます。

売上データを分析すると全体で80%の売り上げは20%の商談から生み出されていることから、リードごとにアクションを最適化する戦略へ切り替えました。受注可能性が高いリードに対しては細やかに対応し、逆に、受注可能性が低い見込み顧客に対しては積極的な対応を控えました。

人材育成に関してもaileadを活用しました。業界別、営業フェーズ別にクラウド上で保存される商談録画データを使い、ロールプレイングや資料作りなどの準備を社員自身で行ってもらうことで、マネージャーの手間が大幅に減りました。これは営業生産性の向上だけでなく、人材の早期育成にもつながっています。

社員が本来の営業活動に専念できるよう、事務作業の効率化も行っています。商談内容は自動で文字起こしされ、商談終了後には議事録付きでSalesforceへのデータ入力がワンクリックで完了。これにより議事録作成の負担を大幅に軽減でき、忙しい営業時間を節約することができました。

今後はビックデータ活用も視野に

aileadは営業効率化ツールとしてだけでなく、AI時代にさらに大きなポテンシャルがあります。日々蓄積される営業活動のビッグデータを活用することで、AIが商談中にリアルタイムで自動フィードバックする機能や、営業マネージャーが悩む営業パイプライン管理(一連の営業活動の分析・管理)を完全自動化することが可能になります。

SFA(セールスフォースオートメーション)という用語は20年前からありますが、営業活動が真の意味でオートメーション化する未来がもうすぐそこに来ています。私たちが目指すビジョンは、「AIと人がそれぞれ得意なことに集中し、仕事の生産性を向上させ、真のSFAを実現すること」です。日本の営業そのものを変えていくことを目指しています。

登壇者
株式会社APTO代表取締役 高品良さん

AI開発に不可欠なデータセットを効率的に収集・作成する仕組みづくり

株式会社APTO(アプト)は、AI開発で必要となる学習データの収集・作成を手助けするプラットフォーム「harBest(ハーベスト)」を提供するほか、AI開発の受託やコンサルティング事業、データセット販売等を手掛けています。代表取締役の高品良さんは、harBestのビジネスモデルやAI開発に不可欠なデータセットの重要性について紹介しました。

画像: AI開発に不可欠なデータセットを効率的に収集・作成する仕組みづくり

AI開発は、データの収集・作成、AIの構築、システムへの組み込み、評価、そして、その評価をもとに再度データの収集・作成を行う、という4つのプロセスから成り立っています。この中で最も時間がかかるのはデータの収集・作成の部分で、全体の約80%を占めます。

データ作成ではアノテーションと呼ばれる作業を行います。これはデータに情報を付与することで、例えば衛星画像からソーラーパネルの位置を指定したり、風景画像から電柱にタグを付けたりする作業を指します。これらの作業は手作業で行われ、大量のデータにタグ付けをするためには多くの人手と時間がかかります。

企業がAI開発を行う際には、事業に関連した大量のアノテーションデータが必要です。しかし、自社にデータが存在しても整理されていないケースや、作業の人手が不足しているケース、また肝心なデータがそもそも存在しないというケースもあります。

そこで私たちが開発したのが、harBestというプラットフォームです。これは一般のユーザーがアノテーション作業やデータ収集を行えるスマホアプリです。作業を依頼したい企業は必要な条件を登録して依頼し、クラウドワーカーはアノテーション作業の量に応じて対価を受け取ります。クラウドソーシングを活用することで、早く、安く、大量のデータを正確に集めることができます。

品質を担保する工夫

クラウドソーシングでアノテーション作業を依頼する際に問題となるのが「品質」と「秘密保持」です。データの品質を担保するためには、必ず1つのデータに対して複数人が作業を行うようにしています。例えば、クラウドワーカーが行った作業に対して別途チェック用のAIが評価し、品質に応じて評価が変動します。適切に作業を行ったユーザーに対してはポイントが支払われ、不適切な作業を行ったユーザーは次第に作業が制限されていきます。

企業で用いるデータの多くは機密性が高く、データを外部に出せないケースが少なくありません。そこでクラウドワーカーの中でも本人確認書類やNDA(秘密保持契約)、契約書などを結んでいるユーザーをプロユーザーとして認証して機密性が高いデータの作業を任せています。それでも解決が難しい場合は、BPO案件として私たちが作業することで安全性を担保しています。またBPOでは障害や難病を持つアノテーション作業者を採用したり、画像などの非構造化データではケニアやナイジェリアのワーカーを採用したりする取り組みもしています。

将来は医療分野へ参入を目指す

今、もう一つ力を入れている部分が医療用のAI利活用です。医療分野ではAIの重要性が高まっている一方で、データに関する課題も多く存在します。そこで2023年12月には順天堂大学と協力し、医療領域におけるデータの課題解決を目指すプロジェクトに参画することを発表しました。大学側が保有する医療ビッグデータをAI開発用のデータへと転用し、医療分野のAI開発に活用する医療用AIデータプラットフォーム事業を開始する予定です。

私たちのミッションは、あらゆる業界でAI開発が進んでいる現状に対して企業がどのようなAI開発を行えばよいのかを示し、日本をAI先進国へと導くことです。そのために、権利問題を解決した高品質なデータセットの提供や、収集が難しい異常データを生成するデータサービスの開始など、さまざまな取り組みを通じてサポートを行っていきます。

登壇者
株式会社トランスファーデータ取締役 保泉泰宏さん

(2024年2月28日(水)の役職は執行役員ですが、2024年3月1日(金)に取締役に就任しております。)

煩雑な出張の予約・経費処理を効率化

株式会社トランスファーデータは、出張予約手配・管理サービス「AI Travel(エーアイトラベル)」を開発・提供しています。取締役(登壇時執行役員)の保泉泰宏さんは、AI Travelにより実現する「移動を軸にしたDX」について紹介しました。

画像: 煩雑な出張の予約・経費処理を効率化

出張は、長い移動時間や時間拘束が負担なだけでなく、出張前後に発生する日程調整からレポート分析、経費からレポート分析するまでの一連の流れは、どれも煩雑な業務です。私たちは、その課題を解決するプロダクトとしてAI Travelを提供しています。AI Travelは、予約情報や出張に関する申請を一元管理できる出張予約手配・管理システムです。国内・国外のホテル、飛行機・新幹線をまとめて検索できるのが特徴で、自由な組み合わせで予約が可能です。出張経費や出張の事前申請・承認もシステム内で完結するので、事務手続きをシンプルにできます。また、予約時の市場価格情報を保持しており、後からでも価格をさかのぼって調べられるので、コスト削減施策の検討・分析にも活用できます。

AI Travelの強みは、出張者が出張時の移動手段や宿泊施設を一括で検索できることです。通常、予約時には複数サイトを遷移して予約をしますが、AI Travelでは検索時間の削減や旅行商材の比較検討が1つの画面でできます。これは飛行機・新幹線・ホテルなどの多様なサプライヤーと提携しているからこそ提供できることです。

AI Travel経由で予約した旅行商材を導入企業様へ当社が法人一括請求をし、また経費精算システムや会計システムと連携をしているため、出張データをシステムへ自動連携することができます。そのため、出張者の経費精算や経理担当者の経理業務が削減できます。通常出張時には、旅行サイトや宿泊施設から領収書を取得して、経費精算をする必要があり、多くの作業負担が発生しますが、これらの業務が削減できるのです。

最近では外資系企業や商社系企業の導入も増えています。出張の経費精算は企業ごとにルールが異なり、「移動距離が100キロメートルを超える場合は宿泊ができる」などの細かい規定がある企業では、煩雑な出張関連手続きが自動化され工数が大幅に削減したと評価されています。エンタープライズ企業でも、約9割の出張でAI Travelが利用されている事例もあります。

外部SaaSとの連携を強化し、移動管理からバックオフィス管理まで

今後は、コスト削減・業務効率化という側面だけでなく、出張のROI(費用対効果)という観点から機能の拡充に取り組んでいきたいと考えています。AI Travelで継続的にデータを収集・蓄積することで、それが適切な出張なのかどうかを議論できるようになります。

そのため、その出張が本当に売り上げに貢献したのかどうかまでを検証できるようにしていく予定です。

また、さまざまな領域のSaaSとの連携を強化しています。会計freee、マネーフォワードクラウド会計、楽楽精算、SAP Concur(コンカー)、SmartHRとAPI連携が可能です。今後もバックオフィスに関連するサービスと連携を深め、AI Travelを移動管理からバックオフィス管理まで一貫して支援するSaaSサービスとして発展をしていきます。

(後編へ続く)

This article is a sponsored article by
''.