「BIPROGY FORUM 2024」におけるディスカッション「AI時代のデジタル戦略~スタートアップと共に描く、システム革新の道~」では、生成AIを前提とした世界の広がりを概観し、スタートアップといかに連携していくか、外部の生成AIをつないでプロセスを完全自動化するかなどを示しました。
【パネラー】
東芝テック株式会社 経営企画部CVC室 室長 鳥井 敦さん
キャナルベンチャーズ株式会社 代表取締役 松岡 亮介
スタートアップの登竜門の7割は生成AIサービス
松岡)先週、シリコンバレーでマーケティングDXを掲げているスタートアップを面談しました。マーケティング生成AIを用いて顧客データを分析することで、マーケティングキャンペーンの成果を予測したり、顧客の行動パターンを把握したりすることができます。やはりマーケティングDXは、生成AIを外側に配備する≒インテリジェンスを外側にローンチしていくものだと実感しました。
鳥井)マーケティングDXのスタートアップが最近急に増えてきていると感じますね。
松岡)アメリカのアクセラレータープログラム「Y Combinator」はAirbnbやウーバーイーツを輩出したスタートアップの登竜門となるピッチイベントですが、2024年3月時点で「生成AIを組み込んでいる」会社が70%を占めています。2022年11月に初めてわれわれはGenerative AIを目の当たりにしましたが、爆発的に普及しています。こんなサービスが毎年、数千社、数万社、登場し、成長してくることを考えると、本当に生成AIがすべて周辺に配備されていく世界が待っていると感じますね。
鳥井)資金調達状況を見ていると、Generative AIに取り組むスタートアップは多額の資金を調達しています。その資金の使い道が興味深く、専門性の高いデータを購入したり、データがない場合は専門領域の見識のある優秀な人材を高い時給で雇い、AIにデータを教え込む業務委託に投資しています。外部でこうした活動が行われ、外部のインテリジェンスが構築されていくという世界が、今後本当に現れるでしょう。このような外部インテリジェンスの存在が、企業戦略においてどのように利用されるべきかを考える際に、大きなポテンシャルと同時に怖さも感じます。
松岡)われわれも生成AIを使っていくところで、インテリジェンスをどう構築し、社内でどう活用するかを模索しています。一方で先に述べたように、外部にインテリジェンスが配備され、それがどんどんつながり合うと、新たなセキュリティ対策の考え方が必要になります。この点については、急速に構築される可能性が高いと感じています。
完全オートメーションの時代が来る?
鳥井)スタートアップを見ていると、専門性が高く、分散したソリューションが多いと感じます。ハイパーオートメーションは、ガートナー社の戦略的テクノロジートレンドに3年連続でランクインしていますので、ご存じの方も多いと思います。RPAのようなものを組み合わせ、フルスタック型のAIを使ってデータを生成し、各種ソリューションを組み合わせることで、完全オートメーションが実現されるかもしれません。アメリカでは、こうしたスタートアップが動いている世界観があると感じています。これを日本企業がどう取り入れていけるかが鍵だと思います。
松岡)一つひとつのアプリケーションにつないでいくのではなく、外側のインテリジェンスをマルチにつなぎ合わせる様な、自社のためにうまく構築されるサービスが現れることが期待されます。
鳥井)ノーコードで業務を自動化することで、手動で行っていた業務を完全にオートメーション化する世界観が現れます。このテーマについて、皆さんにもぜひ関心を持っていただきたいです。
松岡)これまでのオープンイノベーションの傾向を見ても、リテール業界はどの業界よりも早く外部のさまざまなサービスが入ってきています。これらをうまくつなぎ合わせることで、新たな可能性が生まれてくると思います。
鳥井)Pactum AI社の調達交渉の自動化システムはウォルマートにも採用されていて、自動発注や請求処理だけでなく、価格のネゴシエーションもぜんぶやってくれるそうです。Generative AIを活用することで、これまで人間が行っていた交渉の価格帯が統計的に見えるようになり、チャットボットがコストや購入条件を交渉することが可能になるようです。請求書発行などの業務オペレーションが一体化され、ECだけでなくバックヤードもオートメーション化される世界観が実現すると思います。
異なる業界や経営資源を持つ会社と情報共有を
松岡)AI導入が進んでいる業界もあれば、業務フローやIT整備の方法が異なる産業もあります。しかし、AI関連のインテリジェンスをどう配備するかについては、業界を超えた共通の課題です。「BIPROGY FORUM 2024」にはさまざまな業界から参加いただき、AIの導入や進化について業界の垣根を越えて情報共有を進めることで、新たな構築が可能になるでしょう。
鳥井さんも私もCVCとして投資活動をしながら、最先端のトレンドをキャッチアップし、それぞれの業界でどのようなことができるのかを考えていきたい。
国内には800のCVCがあり、そのうちの2社がここにいます。CVCは2018年から4倍に増加しています。多くのVCが新しい技術トレンドをキャッチアップしようとしています。一方で、経団連などの経済団体もスタートアップ振興やオープンイノベーションへの着目は年々高まっていて、企業のアセットやノウハウを掛け合わせて産業の発展を目指しています。今回の鳥井さんとの対話のような取り組みを、さまざまな業種の方々と進めています。
AIの進化に関しては、リテール業界が先行しているのでキャッチアップしたいと考えています。BIPROGYグループとしては、デジタル化やDXを効率的に進める方法を提供し、ノウハウや経験値を先端スタートアップと掛け合わせることで、さらなるイノベーションを実現したいと考えています。CVC機能がなくても興味がある方は、ぜひお問い合わせいただき、われわれのコミュニティを拡大していきたいと思います。
鳥井)スタートアップの現状や課題についての話だけでなく、裏話も共有したいので、ぜひこういったコミュニティに参加していただきたいです。先端技術についてスタートアップの人たちから学ぶことで、多くの気づきが得られます。技術が先進的すぎるために実務での課題が見えにくいこともありますが、実務の方に参加してもらうことで、より良いコミュニティが形成されることを期待します。
松岡)技術の進化は速く、会社内で何かを取り入れる際には決断が必要です。皆様と情報を共有し、一緒にイノベーションを進めていくことを目指しています。ぜひお問い合わせください。ご清聴ありがとうございました。