BIPROGYグループの総合イベント「BIPROGY FORUM 2024」が、6月6~7日、東京会場で行われました。AI・DXに取り組むスタートアップへの出資実績があるキャナルベンチャーズと東芝テックが、スタートアップのもつ知見とプロダクトをパネルディスカッションにて紹介しました。
【パネラー】
東芝テック株式会社 経営企画部CVC室 室長 鳥井 敦さん
キャナルベンチャーズ株式会社 代表取締役 松岡 亮介
選りすぐりのスタートアップと連携
鳥井)東芝テックは、リテール・ソリューション、ワークプレイス・ソリューション、オートID・ソリューションの3つの事業を行っています。国内ではPOSシステムが最も知られていますが、海外でも複合機などを展開しています。
私自身は楽天から東芝テックに移籍し、CVCを立ち上げました。現在、5年目で約20社、VC2社に出資しています。基本的にはリテールソリューションに関わるスタートアップと協業して新しいことに取り組もうとしています。
松岡)キャナルベンチャーズは、日本ユニシス(現:BIPROGY)のCVCとして2017年に発足しました。私は元々金融分野のSEでしたが、2016年頃からマーケティング関連に従事し、オープンイノベーションの旗振り役を務めてきました。今年4月からキャナルベンチャーズの代表として、投資活動を行っています。
キャナルベンチャーズは50億円のファンドを2つ運営し、合計100億円の投資を行っています。BIPROGYのビジネスエコシステムを「BIPROGY FORUM 2024」で紹介していますが、われわれだけではできないソーシングを、さまざまなVCと連携して行っている。2017年からの活動で約45社のスタートアップに投資しています。BIPROGYとは直接関係のないように見えるさまざまな分野にも投資しています。
アクティブに活動するベンチャー企業の中から選りすぐりの45社に投資しているので、こういったスタートアップに興味がある場合は、ぜひお問い合わせください。
Generative AIを業務に生かす段階に
松岡)AIが作るデジタル社会の未来について言えば、2022年11月のChatGPTの登場は大きな衝撃でした。例えば、Instagramが100万人のユーザーを獲得するのに300日かかったのに対し、ChatGPTはローンチからわずか60日で達成しました。現在、どこもかしこもChatGPTやGenerative AIの話題で持ち切りです。皆様の会社でも、どのように導入するか、どうやって環境を構築するかといった議論がなされていると思いますが、東芝テックでは今、Generative AIをどのように扱っていますか。
鳥井)社内でGenerative AIをどう活用するか検討する特別なチームができ、実際の業務でどれだけ効率化できるかを調査しています。投資先とも連携し、Generative AIを活用した製品をリテール向けに開発することを考えています。われわれだけでは難しい部分をスタートアップと協力して進めていきたいと思います。
松岡)BIPROGYでも、社員がある程度自由にChatGPTを使える環境を整えています。日々触れる段階から、実際に業務に生かすための環境整備をしています。東芝テックもBIPROGYも、そうしたステージにあり、多くの会社も同様の段階にあるのではないでしょうか。
小売業で進むGenerative AIによる効率化
松岡)2022年にアクセンチュアが、大企業の経営者に対して「AIをどう戦略的に使おうとしているのか」「実際に自分たちの社内でどう使っていくのか」を調査し、AI活用浸透度をスコア付けしました。すべての業界で大きな伸びが予想されますが、小売業界のAI活用浸透度は平均より高く、2021年の38から2024年には54へ上昇する見込みです。
鳥井)Generative AIはショッパー向けの用途だけでなく、小売業などのバックオフィスやオペレーション領域のプロセスにも浸透していくと思います。Generative AIの利用範囲を少しディープダイブしてみると、業務ごとにスタートアップが取り組んでおり、実用レベルに達しています。
私たちがUSのVCと話している中では、データ分析/BIなどの領域などについては一定技術的なマチュリティーと業務で求められるアキュレシーのバランスが取れてきているため導入が進みやすいとみています。そういった、各業務、タスクごとに導入が早く進む領域と時間がかかる領域とが出てくるとみています。
松岡)企業内にあるデータを生かしていこうという時に、生成AIを動かしながらどうやって実装していくかという、取り扱いの難しさがあって、その議論は非常に活発に行われています。少し後を追いかけるように開発も取り入れられていることと、外側のサービスが順序良くでてきていることが非常によくわかります。
生成AIを使ったスタートアップがダイナミックに動いてくれるのかに注目したい。リテール業界が先行して、旅行関連や保険関連、銀行などは、その後から続くというトレンドが見えます。リテール業界をウォッチしている鳥井さんのお話は非常に参考になります。
生成AIは「利用」から「前提」に
松岡)今日のメインの話は、未来に向けてスタートアップとどう連携するかです。われわれは最先端のトレンドをスタートアップからいろいろ吸収していますが、スタートアップとの連携にはいろいろ方法があります。直接的にその答えを求めるより、スタートアップをどうモニタリングし、キャッチアップするかという話が中心かなと思っています。生成AIをどう「利用」していこうかと、2022年ごろからキャッチアップしてきましたが、いまや「前提」であるとみています。
鳥井)Generative AIというと、コパイロット型といわれるプログラミング支援AIサービスのイメージが強いと思いますが、アメリカではバリューチェーン全部のサービスを提供するフルスタック型のスタートアップが増えています。フルスタック型ならBPOのようにアウトソーシングしてしまえば、仕事をした結果を返してくれます。普通に業務をやっている人にとって、AIの「利用」ではなく、本当に「前提」になるのではないかと非常に感じています。