長年にわたり、ホテル・旅館などで見過ごされてきた無断キャンセルやキャンセル料の未払い問題。その解決策として開発されたのが、キャンセル料の請求業務を自動化するサービス「Payn(ペイン)」です。運営元であるPayn株式会社の代表取締役CEO 山下恭平さんに、サービスの概要や、過去の創業経験から得たことなどについて伺いました。

キャンセルに関する課題を解決するために2度目の起業

ホテルや旅館、飲食店などでは、キャンセルポリシーに従い予約の取消時にキャンセル料が発生する場合があります。本来であればきちんと請求すべきですが、料金を支払わない顧客や、そもそも連絡がない無断キャンセル客も一定数存在します。しかし、作業負担やクレーム回避などの理由から、キャンセル料の請求に消極的な事業者が少なくありません。また「どうせキャンセル料は請求されないだろう」という甘い気持ちを持つ人もおり、業界の大きな問題となっています。

これに対する解決策として登場したのが、宿泊施設等のキャンセル料請求業務を自動化するサービス「Payn」です。クラウドサービスとして手軽に利用でき、事業者の代わりにシステムが請求書の作成から顧客への連絡、キャンセル料の回収まで一連の業務を自動で行います。

このサービスを2022年3月に立ち上げた山下さんは、映画リクエストサービスを運営するドリパス、ヤフーなどを経て、宿泊予約の個人間売買サービスを手掛けるスタートアップCansell(キャンセル)株式会社を2016年に創業した経験を持っています。

キャンセル料問題を解決する新たなアプローチ

Cansellは利用者視点でのキャンセル問題を解決するサービスで、やむを得ず宿泊施設をキャンセルしなくてはいけないときに、予約の権利を他者に譲渡することでキャンセル料の負担を減らすというものでした。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響から宿泊予約が激減したことで経営状況が悪化し、最終的に2022年にサービス終了し、会社を清算しました。

予約の無断キャンセルは、「現れない」ことを意味する「ノーショー(No-Show)」という言葉で表現され、宿泊施設に限らず飲食店などにとっても深刻な問題となっています。Cansellの運営を通じてキャンセルの課題に向き合ってきた山下さんは、新しい事業でもう一度起業することを決心し、「起業家として自分が解決できる課題は何か、自分だったらより良い世界にできる領域はどこか」と考えたときに、引き続きキャンセルの問題に挑戦することにしました。

「自分以上にキャンセルの問題に取り組んできた起業家はいない、自分だからこそ解決できる」という自負を持ってPaynのサービスを開発しました。Paynはシステム設定の容易さや、サービス利用料は回収したキャンセル料に対する手数料のみという導入のしやすさなどから、着実に契約数を伸ばしています。さらに導入事業者からの評価も高く、Payn を利用された事業者から同業者への紹介による契約も増えています。

「一度失敗したら終わり」ではない、また次の挑戦ができる社会へ

Cansellは、会社を清算した経緯についてWebメディアで詳細を公開したことが大きな反響を生みました。日本ではあまり語られることがなかった会社をたたむときの情報や経験をあえてメディアを通じて発信した理由について、山下さんは2つの理由を挙げています。

「1つはスタートアップの倒産について詳しく書かれた記事が少ないことでした。私自身も清算を行う際に参考となる情報が少ないことに驚きました。海外と比べて日本ではこのような情報が少なく、エコシステムとしては不健全だと感じています。一度破産したら人生終わり、ではないんだということ、また次のチャレンジをしていけるんだ、ということを伝え、日本におけるスタートアップ起業の回転数を高めていかないといけないという想いがあります。また、2つめは、これまで私たちの活動を取り上げてくれたメディアに対して、筋を通す意味もありました。ポジティブな情報だけ取り上げてもらい、ネガティブな情報を隠すのは一貫性がありません。そのためメディア担当者に必要であれば協力する旨を伝え、隠さずに記事にしてもらいました。実際に、記事が出てからいろいろな方からお声掛けいただき、反響の大きさを実感しました。」

Cansell での事業に失敗した経験をもとに、次の起業へと一歩を踏み出します。

「自分自身は生涯起業家でいきたいと思っているので、一度や二度失敗したとしても諦めずにチャレンジしていきたいと思います。」

(後編へ続く)

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