農業由来カーボンクレジットの生成・販売を行う株式会社フェイガーは、本来CO2削減義務がない農家が脱炭素に取り組み、削減義務のある企業に買い取ってもらうことで、農家の収益を増やす仕組みを日本全国に広げることを目指しています。CEOの石崎貴紘さんに、脱炭素ビジネスの展望と課題を伺いました。

農家と協力して農業由来カーボンクレジットを生成

カーボンクレジットの生成には、脱炭素の取り組みの記録から、認証機関への申請・取得までに、煩雑かつ膨大な事務手続きが必要になります。フェイガーでは農家と共同して脱炭素農業を推進し、その成果をクレジット化し、認証の申請・取得からクレジット販売による収益化までを一括してサポートしています。

アメリカのような大規模農業なら脱炭素で大きな収入が見込めますが、日本の平均約2ヘクタールという規模では、クレジット化の手間に対してバランスが取りづらいこともあります。規模を大きくするためには、JAなどの協力を得て、村単位や自治体単位でまとめるようにしています。

また、自社開発のプロダクトによって手間を大幅に削減し、効率化を図りました。例えばエビデンスで写真が必要な場合、農家が写真を撮って、JAがそれを集めてフェイガーに送り、必要に応じて電話や現地で確認するといった作業を数百農家分行うことになります。そこで、ログイン不要の写真撮影のみのアプリを活用して、時刻・GPS連携の写真がアップロードされれば証明完了となるようにしました。

こうした取り組みが評価されて、2023年の実績はおおよそ2000ヘクタール、約5000t-CO2に達しましたが、2024年はおよそ1.5万ヘクタール、5万t-CO2の規模が想定されています。

企業のカーボンクレジット調達をサポート

脱炭素が急務となっている企業の多くは、自社の方針に合致するカーボンクレジットを最適な金額・量・タイミングで調達したいと考えていますが、生産者やブローカーが多数いて課題が生じています。海外とのやり取りでは、さらに複雑さが増すこともあります。それに対して、フェイガーは農業由来クレジットを含むボランタリークレジットの調達や利用においてサポートしています。

企業はクレジットのクオリティを重視していて、それが証明されているものは高値で取り引きされます。その場合、J-クレジットなどの認証に通っていることは最低ラインで、現地視察や実測を行っているか、適切なエビデンスが蓄積されているか、不正ができない管理体制か、などが評価基準となります。

フェイガーは、クオリティ・マネジメントを厳格に実施することで、農家の収益最大化も実現しています。また、地域性・自然由来・信頼性の3点が共感ポイントで、特に顔の見える生産者への還元と地域貢献が同時にできることが評価されています。

J-クレジットはCO2の削減量や吸収量の認証を国が行っている制度で、農業由来で取り組める方法論として、「水稲栽培における中干し期間の延長」が2023年3月に認定されました。さらに5月に「JAアクセラレーター第5期」に採択されて、JAグループからの全面的なバックアップも追い風になりました。

地球を守る取り組みを行う事業者と、それを応援する企業を結びたい

フェイガーには農業経験のあるメンバーや農学博士など、農業に熱い思いを抱いているメンバーが集まっています。農業分野の脱炭素を単にビジネスとして進めるのではなく、農業界への還元や、次の世代への食料安全保障の実現を目指しています。その結果、JAグループや農林中央金庫をはじめとして農業に情熱のある事業者との協働が進んでいます。

農業×脱炭素の分野は、東南アジアはまだ十分に進んでいないので、日本が主導的な役割を果たし、広めていければ、少なくとも農業分野においては脱炭素先進国となる可能性があります。フェイガーの社名は、「Faeger」という古英語で美しさや公平・公正さを意味しています。フェイガ―が目指すのは、自分たちだけが儲かるという単なる利益追求ではなく、フェアな取引、意思決定を堅持して、農業で日本がリーダーシップを発揮できる環境を構築することです。

最後に石崎さんは、「地球を美しく保つための取り組みをする事業者を応援し、その取り組みが公平で公正に収益還元されるような社会を実現します」と力強く語ってくれました。

*今回は取材場所としてAg Venture Lab様にご協力いただきました

AgVenture Labとは

「次世代に残る農業を育て、地域のくらしに寄り添い、場所や人をつなぐ」をコンセプトとして、スタートアップ企業やパートナー企業、大学、行政等と協創し、様々な知見やテクノロジーを活用しながら、新たな事業創出、サービス開発、地域課題の解消を目指す組織です。JAグループではAgVenture Labでの活動を通じて外部企業との連携を強化し、第一次産業や地方が抱える社会的課題の解決につながるような新たな価値の創出に積極的に挑戦しております。

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