アパレル産業に特化した業務クラウド「PORTUS CLOUD」を提供するpark & port株式会社。代表の櫟山敦彦さんに、商品情報データに注目した理由や今後の目標を伺いました。
これからは企画情報の蓄積がより重要に
櫟山さんがDX(デジタルトランスフォーメーション)の軸として着目したのが商品情報です。DXと聞くと社内の業務について想像しがちですが、今後は商品情報そのものが流通し、販売する時代が来ると考えています。
アパレル業界では、商品の企画立案・製造・卸売を行うブランドメーカー、商品の素材開発から製造・販売まで幅広く手掛ける商社、商品の企画・製造を代行するOEM・ODMメーカー、消費者に販売する小売などの業態が存在しており、大きく分けて製造する側と販売する側が分かれている製販分離が一般的です。
しかし、近年では消費者ニーズの多様化によって、さまざまなデザインやスタイルが求められるようになって、取り扱い商品点数が増加しています。さらに新型コロナウイルス感染症の影響で対面販売が減少しEC利用が増加するなど、店舗(消費者接点)の役割も大きく変化しています。このようなアパレル業界を取り巻く環境の変化に対応するために、商品を製造する側である商社・OEM・ODMの役割も変化しています。
例えば卸売を介さず、直接消費者に商品を販売するD2Cの登場は、小売の役割をブランドメーカー自身が担うようになった一例です。さらに大手ドラッグストアチェーン、ホームセンターなど他業種の企業がアパレル事業へ参入する動きが活発化してきたことで、計画立案や洋服のデザイン・素材の準備、仕入れなどのノウハウを持たない事業者に代わり、計画・企画などの上流段階までメーカーが担うことが求められるようになってきています。
アパレルの全ての商品情報をデジタル化することで業務効率化を実現
このような流れに対応するためには、たとえばメーカーが商品情報だけでなくそのサンプル(見本)も一元管理することが重要です。例えば発注する企業から柄もののワンピースの問い合わせがあったときに、商品情報データベースがあれば手元に資料がなくても簡単にシステムで検索でき、すぐに見本も手配・出荷できるため機会損失を防げます。
そこで問題になるのが、メーカーのデジタル対応の遅れです。現状は多くのメーカーで商品情報・サンプルは一元管理されておらず、たとえばクライアントから過去に納品した商品の見本の依頼があったとき、机の下や倉庫などをひっくり返して数時間かけて探す、最悪見つからないといったことが日常的に発生しています。
PORTUSCLOUD(ポルタスクラウド)を活用して商品情報を蓄積することで、発注する企業に対して迅速に提案できるだけでなく、都度行っていた資料作成や集計などを効率化できます。さらに自社でデータベース運用が難しい企業向けにはBPOサービスとして商品写真の撮影・商品登録、検品・見本の出荷まで行っているため、メーカー側の負担は最小限で済みます。
蓄積したデータは提案にはもちろん、将来的には昨年の提案数や精度の分析、工場とコストの相関性、発注企業ごとの特性分析などに使用することで本領を発揮します。
将来はPORTUS CLOUDを拡張したマッチングサービスや海外進出まで視野に
今後アパレル業界は製造・企画・販売プロセスの分離(製企販分離)が進み、今以上に企画やデザインの段階からメーカーに委託する流れが加速すると櫟山さんは考えています。さらに広く普及していくと思われる3DCGサンプルの管理も含め、企業サンプル情報のクラウド化は、アパレル産業全体のDXにつながります。
そこでPORTUS CLOUDの次の展開として、蓄積した商品情報を活用して新規獲得を支援するマッチングサービスを展開し、アパレル事業を行いたいがノウハウを持たないブランドや企業、たとえばマーケティングに強みを持つような企業やインフルエンサースタジオなどと、新規顧客を獲得したいメーカーとを仲介するビジネスを計画しています。
さらに将来的にはPORTUS CLOUDの海外展開まで視野に入れています。製企販の分離は日本特有のモデルのため、海外でもニーズがあると見込んでいるためです。アパレル・ライフスタイル商材によるビジネスを検討している世界中の企業・個人に対してサービスを提供していくことを目指しています。