11月17日開催のセミナー「業務改善の成功方程式とは?」では、ITツールを駆使して中小企業の業務効率化、資金調達をサポートするベンチャー企業2社による講演、豊中商工会議所による取組事例と公的支援施策紹介に続き、トークセッションが行われました。

2回に分けて講演を報告しましたが、今回は「業務改善のコツ」をテーマにしたトークセッションを紹介します。

【登壇者】
 株式会社キャップドゥ 代表取締役 森田晃輝さん
 Scheeme株式会社 代表取締役 杉守一樹さん
 株式会社池田泉州銀行 地域共創イノベーション部 副部長 真鍋充宏さん
【進行】
 キャナルベンチャーズ株式会社 取締役CSO 駒木敬

働きたい人が働ける環境を作る

駒木)真鍋さんは近畿経済産業局に出向されて、どんな活動をされましたか。

真鍋)2府5県の中小企業を中心に回りましたが、工夫しながら効率化されている事例がたくさんあったので、その中で特徴的なものをご紹介します。

丹波市のA社はパート募集にあたって、早退OK、出勤日数は前週に自己申告、生産ノルマによって給料を決定という条件を提示したところ、たくさんの応募がありました。毎日出勤する人には毎日ある仕事、週3回なら週3回でできる仕事を割り当て、それをラインにのせ、一人が2役3役できるようにしています。

人手不足に悩んでフレキシブルな働き方を提案したA社社長は「働きたい人がたくさんいることがよくわかった」とおっしゃっていました。人手不足は、システムや働き方の提案で解消される可能性があるのではないでしょうか。

コロナ禍で在宅勤務が増え、印鑑を押すためだけに出勤しなければならないことが問題になりました。kintoneを中心にした業務システムを開発しているノベルワークスは、印鑑の電子化にいち早く対応し、非常に多くの中小企業、大企業が導入しています。日誌などもまとめて管理するようになり、効率化できた事例もありました。

画像: 働きたい人が働ける環境を作る

「夢がある人を応援します」

駒木)キャップドゥは営業マンがいなくて、営業活動はどのようにされているのですか?

森田)サービスの紹介などの最初のきっかけづくりは自社サイトで行っています。サイトを一度訪問して興味を持ってもらったら、そのときはそれで終わったとしても、3日後くらいにまたクリックしてもらえるよう作っています。24時間365日、ITを使って営業をかけています。毎日のように問い合わせがあり、そこからカスタマーサポートチームがお客様に寄り添っていく。

人で攻めるプッシュ型の営業もあっていいと思いますが、これからは営業マンを入れずに人を引き寄せる営業手法が重要なのではないでしょうか。

駒木)Cookieがあるので、名前を入れていなくても追跡されていて、再訪問したところを解析して案内するんですね。自社のサービスに自信のある会社はぜひ取り組んでいただくと効果が出やすいと思います。

多くの中小企業は採用で悩んでいると思いますが、何かアドバイスを教えてください。

森田)キャップドゥでは今年「ロアッソ熊本サポーター限定枠」を作ってみました。ロアッソを愛してやまない人なら誰でも応募可能で、全試合観戦できる、仕事よりも試合優先という求人です。チケット代も会社が負担します。チケット自体は高価ではありませんが、ロアッソを応援できる職場で働きたいという人を実際に採用しました。当初は全くスキルがなく、パソコンも使えませんでしたが、「ロアッソ愛」で必死に頑張っていました。「夢がある人を応援します」という枠には、三味線奏者の男の子が応募してきました。キャップドゥはテレワークも可能なので、三味線を演奏して各地を回りながら仕事をしてもらっています。
仕事を目的としないところにフォーカスした採用活動も面白いと思います。

駒木)仕事だけではない、会社としての強いメッセージが重要ということですね。

森田)仕事も頑張りつつ夢を実現できるというメッセージです。スキルアップや教育の仕組みは必要ですが、見せ方も非常に大事かなと思います。

自社を知ってもらう発信の方法

駒木)杉守さんは前職でWebマーケティングをされていたということですが、マーケティングという分野から採用についてどのようにアプローチされていましたか?

杉守)Sheemeもこの半年くらい採用に力を入れていて、100名くらい面接をしました。エンジニアの採用は非常に大変で、獲得するだけで150万円くらいかかります。たくさんの媒体に求人を出して、反応を検証して媒体を選定しました。さらに、その媒体をきちんと運営しようと考え、アルバイトやインターンに毎日情報を更新してもらうことで非常に応募率が上がりました。たくさん応募してもらえると、採用担当のモチベーションが上がりますし、従業員のモチベーションも上がり、社員が自分でブログを書き始めたりするという動きも起きて、すべてが相乗効果で良くなりました。

駒木)森田さんもメルマガを配信されていますね。

森田)中小企業は採用が難しいですが、何もしないことが一番問題です。キャップドゥは、自社サイトに毎月3つ、4つ何かのヒントになる記事を掲載しています。すると、就職活動をする人にも見てもらえて、毎月更新していると、毎月見に来てくれます。その後、何かしらのタイミングで見学の申し込みやコンタクトがあります。お金をかけなくてもできることはたくさんあって、そこに自社を知ってもらうための情報をどうやって入れ込んでいくかが大事だと思っています。採用の期間だけではなくて継続してやっていくことです。
中小企業は社長の思いを記事の中に入れた方がいいと思っています。毎月1回、掲載記事についてミーティングを行い、社員から質問を投げかけてもらって、こういうことをやりたい、こういう人と出逢いたいという話をして、メンバーが記事化しています。

真鍋)3年ほど前から大阪で「オープンファクトリー」という催しが行われています。SNSなどで発信しにくい企業が、年に3日ほど一般の方に工場を見てもらうイベントです。社員は自社の仕事を来場者に説明するために整理することになります。また、子どもたちも来てくれるのでわかりやすさが必要です。

11月に東大阪で約20社のオープンファクトリーを開催しましたが、採用や社員教育にもつながっているという声がありました。

近畿経済産業局は大阪万博でオープンファクトリーの実施を提案しています。日本の中小企業の技術を知りたい、自分たちと違う技術を知りたいという海外の企業がたくさんありますが、点在していると訪問が難しい。そこで、万博期間中に開催したいと思っています。

画像: 自社を知ってもらう発信の方法

駒木)補助金申請のための時間が取れないというのが現状だと思います。Scheemeでは相談に来た方々にどのようなサポートをされているのでしょうか。

杉守)補助金は年間スケジュールで見ると、春に始まって3月に終わるのが一般的な流れです。年間で例えば3つの補助金が使えると提案して、資金調達予定を組み、申請前にこちらからお知らせをします。これはオートメーション化されていて、このお客さんはこれとこれを使うというものをセットしておいて、TO DOで上がってくるようにしています。

駒木)資金調達の支援というよりは、一度相談を受けたお客さんを継続的に、いろんな形で支援するということですね。

会場)補助金の申請が通った後のサポート、活用するときのアドバイスはありますか?

杉守)採択されても入金は1年後とか事業が終わった後になりますので、先に支出がどんどん出てしまいます。新規事業を立ち上げて回収がまだまだ先というときに、かなり資金繰りが厳しくなります。採択の結果を持ってメインバンクなどに相談して、お金を先に入れて帳尻を合わせていくことが大事です。

駒木)真鍋さんは中小企業の融資のご相談を受けると思いますが、いかがですか?

真鍋)資金の部分は経営者なのである程度わかっていらっしゃいますが、終わった後の書類の管理が大変と聞いています。

駒木)手続きの申請のところで楽になったとは言いつつ、まだまだ大変なところがたくさんあるんですね。

会場)人手不足の問題について、事務の人員を半分にするのか、営業職を減らすのか、具体的に聞きたいと思って参加しました。

森田)ユニフォームのクリーニング会社をサポートしています。人手不足で悩んでいましたが、発想を変えて顧客との協力体制を取れる仕組みを整え、顧客側である程度のデータを入れてもらうことで、業務が1割くらい減りました。

駒木)「仕組みを整える」とは具体的にどういうことですか? 標準化するとか、入力フォームを整えるということですか?

森田)ITで仕組み化しただけです。顧客側は自分たちのペースで入力できるし、状況が見えるというメリットがあったようです。毎月の売り上げ集計や請求書、在庫の管理などが大変で、この業務は増える一方でした。お客様を巻き込む、喜んで手伝ってくれるような仕組みを作るということです。

駒木)コストはどうでしたか?

森田)IT導入補助費を活用しました。3年ほど前で300万円くらいだったと思います。今、これが問題でこれを解決したいというビジョンが明確だったので、採択されました。ただ時間がかかります。採択後も伴走することでさらに仕組みを整えていき、少しずつ手を放していきます。すると、もっとこういうことできるという点が見えてきます。結局ずっと一緒に走ろうよということになります。

駒木)これからも「働き方改革」が進む中、業務改善を成功させるためのお手伝いをしていきたいと思っています。本日はありがとうございました。

This article is a sponsored article by
''.