「Zenport」は煩雑な貿易業務をクラウド上で見える化し、情報の更新や共有のコストを削減するサービスです。効率的なサプライチェーンの構築を実現するサービスの特徴について、株式会社Zenport 代表取締役の太田文行さんに伺いました。
多様な経験を通じて得た、ビジネスを「つなぐ」サービスを作りたいという想い
2015年創業のZenport(創業時の社名はSendee)では、何度かのピボットを経て2017年に貿易業務にフォーカスすることにしました。
新卒で入社した三菱商事で工業用の化学品の海外営業を経験、その後事業家を目指してスイスのビジネススクールでMBAを取得した太田さんは、コンサルティングファームを経て機械部品などの販売を行うミスミへ入社し、顧客の声をサービスにつなげる事業などに携わっていました。
Zenportに参画したのは、仕事や留学の経験を通じて海外と結ぶ、つないでいく仕事をしていきたいという想いがあったためです。ビジネススクールでは国籍も年齢も経験もバラバラの学生たちと接する中で、全く異なるバックグランド同士を組み合わせるほうが素晴らしいアウトプットを得られることに気づき、「組み合わせて何か生み出すこと」の可能性を実感しました。
既存のものごとを組み合わせて違う文脈で解釈し直すことで、素晴らしいアウトプットが生まれます。しかも、全く新しいものを生み出すよりも実際的で、受け入れる側もスムーズです。
これはZenportというサービスを開発し提供する上での原則であるだけでなく、さまざまな国、企業、役割の方々が協業することで出来上がっているグローバルサプライチェーンにも同様のことがいえます。
コミュニケーションの無駄を解決して生産性を向上
「Zenport」では、複数の関係者がエクセルで管理していた業務手続きや進捗状況をクラウド上で見える化し、一元管理できる機能を提供しています。
エクセルは表計算ソフトなので、データベースを使うべきところまでエクセルで代用するのは一見効率的にも見えます。しかし、異なる組織や企業間で使用する際には、それぞれが似たような別のファイルを持つ必要があり、データ管理が大変になります。データ整理や正規化を行うために時間を費やすのは、非生産性的な業務の代表ともいえるものです。
同じように貿易業務でも、輸出者、輸入者などが、それぞれ複数のシステムやエクセルファイルでバラバラに管理しているため、管理が煩雑になることがたくさんあります。このような無駄をなくすことで、より生産的な業務に注力できるようになります。
さらに、サプライチェーン業務の特徴として、同じ取引でも、立場の異なる複数の関係者が異なる見方をしています。輸入者は発注や納期の視点で、輸出者は出荷、物流会社は輸送の観点で同じ取引を見ています。こうした状況がさらに個別の企業で、類似したエクセル表が多数生まれてしまう原因になっており、それがまたコミュニケ―ションを行う上での大きな負担になっています。
協調による持続可能なサプライチェーンの構築を目指す
グローバリゼーションの大きなトレンドで考えると、1990~2000年代に海外で生産し国内で販売するというグローバルなサプライチェーン構築が進み、2008年のリーマンショック後は成熟化の時代に入って、10年近く成長が鈍化しています。
一方で、異常気象の常態化など、経済成長によるひずみが顕著になっており、持続可能性(サステナビリティ)の追求は喫緊の課題です。さらに新型コロナウイルス感染症の影響なども含めて、今後は企業に弾力性がある対応が強く求められていくようになります。その中で変化していくのがグローバルサプライチェーンのビジネスのあり方です。
われわれの生きる社会全体と個別のビジネスを持続させていくためには、消費側の状況をきちんと生産側に反映させながら、効率的な生産や物流システムを構築していくことが求められています。つまり、これまで以上に関係者間でそれぞれの観点や持てる情報を活かしながら、連携をよりスマートに行うこと、そしてその連携を柔軟かつ俊敏に構築していくことがことの成否を分けるといえます。
Zenportは、企業間のコミュニケーションを標準化することにより、異なる立場の関係者が、異なる見方で一つの取引を管理、運営することを実現する仕組みです。これまで結びつきにくかった異なる質の情報やオペレーションを「つなぐ基盤」を用意することで、俊敏さが求められるサプライチェーンマネジメントをテクノロジーの力で民主化していきたいと考えています。