音楽好きをターゲットにしたアーティスト情報・チケット見逃し防止アプリの「Freax(フリークス)」は、順調にユーザー数を伸ばし、高い評価を得ています。次のステップとして事業者を支援するフェーズに進もうとしている株式会社Spectra代表取締役の浅香直紀さんに今後の展開について伺いました。
デジタルの力で音楽の「売りやすい仕組み」づくりを
2019年5月にFreaxをリリースしてから約1年が経ち、プッシュ通知許諾も75%以上とメディアとして順調に成長しています。コンテンツを届ける仕組みは整ってきたので、次はそれをどうビジネスに展開するかというフェーズに入ったと感じています。
現在、音楽事業者側の一番の課題は、自社のアーティストのファンになり得る層にどうリーチして、どうファンに転換していくかという認知・集客の部分です。かつてはテレビや雑誌、CDショップが消費者との接点で、テレビの音楽番組を起点にCDが売れる、CDショップで紹介したアーティストの楽曲が聴かれる、というマスメディアを活用した消費の流れがありました。しかし、現在はスマホ中心でそれらメディアの影響力が弱くなり、認知・集客が問題になっています。
SpectraはITに強く、アプリ開発のノウハウを持っているのが強みです。スマホ時代の消費行動に最適化したメディアを開発・運営してユーザーとの接点を強化し、そこを軸とした販促支援策を事業者に提供する戦略を持っています。例えば認知の部分であれば、Freaxが蓄積しているユーザーの視聴履歴データを活用して、自社のアーティストと親和性が高いユーザーにリーチする、またコンテンツをどう課金していくか困っている事業者に対しては、デジタル化の部分でマネタイズにおける課題解決の支援をするなどの施策を検討しています。
データを活用したマーケティングのサイクルが回っていくと、Freaxを情報のハブとして、ユーザーにとっても事業者にとっても課題解決になる仕組みが作れます。音楽側とITとの間に立つことで既存音楽業界のデジタルトランスフォーメーションを支援し、消費者接点としてのメディアを活用することで、業界全体が盛り上がる仕組みを作りたいという思いを持っています。
エンタメコンテンツによる新しい世界観を作りたい
Spectraは、「個々人が好むエンタメコンテンツを最適な場所・タイミングで個人に届けること」、事業者側の課題を解決することで、ファン側にもよりよいファン活動ができる体験を届け、両者をつなぐことを目指しています。
現在(※2020年4月)は、新型コロナウイルスの影響もあり、ライブの中止をはじめ音楽業界は非常に打撃を受けています。withコロナやアフターコロナの世界では、エンタメコンテンツの配信も大きく変わるでしょう。例えば、無人観客ライブや無料参加の投げ銭ライブなども話題になっていますが、今まであまりやってこなかったこと、今までのビジネスモデルに頼らない手法の確立が急務になっていると思っています。
価値の届け方の多様化が進むでしょうし、そこにデジタルの力が働くことは言うまでもありません。現場での活動がメインのエンタメが、オンライン配信によって、身近なものになります。遠隔地の人やそれまで興味があっても参加できなかった人が参加しやすくなります。またその分オフラインではリアルなコンテンツの価値が高くなると思っています。5Gの普及も追い風で、遅延や解像度、通信量などの配信課題も解決され、リッチなコンテンツを配信することが可能になるとも思います。オフラインではなかった「投げ銭ライブ」「双方向ライブ」や「コメント」などが価値として定着し、この1年くらいで、環境が整ってきてコミュニケーションの進化が起こるのではないかと予測しています。
デジタル利用の第一歩として、続々とYouTubeにライブ映像も上がるようになってきていますが、オンラインでのマネタイズや継続的な集客には他のアプローチも必要です。浅香さんは、特化型プラットフォームやコンテンツ配信の仕組みをつくり、デジタルによってファンとの接点を増やす手段を拡大していきたいと考えています。ライブ自体のオンライン化はスタンダードになる可能性も出てくるでしょう。またデジタルコンテンツの販売もあり得ます。アーティストのリハーサル映像や未収録の楽曲をカジュアルに販売できる、好きなアーティストのコンテンツをサブスクリプションで享受できる仕組みを作るなど、アフターコロナ時代においても新しい世界観を構築し、良質なコンテンツが生まれやすくなるようにしたいと考えています。