インフルエンザや肺炎などの感染症は、危険で身近なものです。その原因となる細菌・ウィルスを殺菌する空気の装置「AERO SHIELD(エアロシールド)」を開発するエネフォレスト株式会社 代表取締役 木原寿彦さんに創業の経緯から装置の効果まで伺いました。
祖父の入院がきっかけで細菌を可視化・殺菌できる製品を開発
エアロシールド開発のきっかけは、祖父が介護施設に入所していた際に、同室の入所者が肺炎で亡くなる人が多いという経験でした。室内の空気を採取して細菌の状態を可視化してみたところ、病気の原因になるさまざま菌が浮遊していることがわかったのです。
肺炎は日本人の死因として常に上位で、医療従事者の間でも「高齢者が肺炎になるのは当たり前」という認識がありました。しかし決してそうではなく、原因となる細菌やウィルスなどを死滅させることができれば肺炎も防ぐことができるのではないかと考えています。そこで「大切な人たちが心身健康に暮らせる世界をつくる」という使命を持ち2006年に創業しました。
感染症の感染経路は大きく分けて空気、飛沫、接触の3つがあります。マスクや手洗い・消毒といった方法は飛沫、接触に対する予防策のため、空気経由の感染を防ぐことはできません。空気感染の予防には殺菌が有効なことから、エアロシールドではUVGI(紫外線殺菌照射)方式を採用しました。
従来から知られている薬剤噴霧やオゾン照射などの方法は、人体に影響があるため人がいる空間で行うことは難しいという問題がありました。また紫外線も直接照射すると人体に影響があるため人がいない時間帯しか使われていませんでした。エアロシールドは紫外線の照射で空気を殺菌する装置ですが、独自の技術開発により、人に直接当たらないよう紫外線を制御しています。
重さ3kg、W280×H120×D125mmのコンパクトな装置から、紫外線を天井に水平に照射して空気を殺菌します。紫外線の波長は短いため羽板を平行につけたルーバーで制御し、さらに日本人の平均身長に基づき床から2.1m以上の高さに装置を設置するようにしています。人がいる空間でも殺菌効果があり、かつ安全であるよう、1.8mの高さでの紫外線の値を一定の数値以下になるようにするなど独自の基準を設けています。
人が集まる場所での感染症予防対策として有効
2019年2月には、NTT⻄⽇本と共同で空気環境快適化の実証実験を行いました。約200人のオペレーターがいる大規模コールセンターにエアロシールドを導入し、結果として平均90%の浮遊菌を減少させました。NTT西日本ではコールセンターの稼働率を改善するためにスタッフの欠勤を減少させたいという意図があり、今回の実証実験結果は職場でのBCP(事業継続計画)対策としても大きな可能性を実感していただきました。
エネフォレストのビジネスモデルは主にBtoBでの販売で、病院、介護施設、保育園・幼稚園、ホテルなどがターゲットです。ある介護施設では装置を導入したことで、毎年発生する入居者のインフルエンザが出なくなったなどの効果を上げています。また、学校の調理場、菓子メーカーの製造工場など、菌やカビの混入があっては困る場所での導入が進むほか、最近ではオフィス、社員食堂、駅ナカのデパートなどでも導入され始めています。