訪日旅行客向けの荷物“当日”配送サービスを展開する株式会社Airporterが、次に目指すのはリアルな場での新たなサービスです。代表 泉谷邦雄さんに今後の展望を伺いました。
効率的に配送するためにタグに工夫を
大手運送会社は大量の荷物を配送するために、特注の大型車で非常に高い貨物密度で輸送し、都心では車両が道路に入れないので、近接エリアの営業所から手押し車で配送します。スーツケースは手押し車に入れるには大きすぎるので往復回数が増え、効率が落ちます。そのため「インバウンド向けの荷物を当日配送」という領域は、大量の荷物を効率よく配達したい大手運送会社は参入しにくく、私たちが先行してシェアを獲得しているので、今後スタートアップの参入も難しいと考えています。
また、大手配送会社では深夜に営業所で仕分け作業を行うことが多いため当日配送が難しいという背景があります。仕分けを簡単にすれば当日配送できるのではないかと考え、Airporterでは仕分けする拠点を持たない代わりに、青と緑と赤に色分けした荷物タグを開発しました。
配送先は全て空港なので色分けで対応できるのです。ドライバーはホテルに集荷へ行き、タグを見た瞬間に行き先がわかります。例えば成田空港行きは緑のタグなので、自分は緑のタグが付いた荷物だけを乗せればいいことになります。「荷物を運ぶ」という点では共通していますが、集荷や配送の仕組みは大手運送会社とは大きく異なります。
次の一手は「リアルの場」を活かした取り組み
Airporterの強みは、事前にやりとりするチャットや現場での荷物の受け渡しなど、海外からの旅行客とのタッチポイントを持っていることです。特に私たちが強いのは「リアルの場」で接触できることに加えて、旅行客が来た国、性別のほか、荷物を送るホテルのランクでもセグメントが可能な点です。それを活かして今後は「空港で直接お客さんに冊子を渡す」「ホテルへ移動する前に商品サンプルを配布する」といったサービスを企業に提案して将来のビジネスにつなげていく計画です。既にコスメ関連の商材などで引き合いがあります。
デジタルでの体験が当たり前になった今だからこそ、リアルでの体験が旅行客の心に響きます。例えば家族連れのグループにおいしいラーメン屋情報をチャットで伝えるよりも、紙媒体の冊子を渡したほうが旅先で持ち運んでもらいやすく、行動を後押しする効果も高くなります。今まではリアルの世界が主体だったのでオンライン施策が強みになりましたが、オンラインの世界が主体になった現在は、リアル施策の価値が高まっていると感じています。
私たちは、「世界の観光時間を創出する」ことをミッションに掲げ、世界中の旅行客にとって便利なサービスを提供していくことを目指しています。
インバウンド領域で起業した背景の一つには、母方のルーツである台湾で経験したある体験があります。大学時代に友人と台湾の九份を訪れたとき、街中で突然見知らぬハンコ屋の女主人に呼び止められてお茶と団子をごちそうになった上、彼女から日本統治時代にもらったという卒業証書を見せてもらったことがありました。見知らぬ人から親切にしてもらい思い出の品を見せてもらった体験は、台湾と日本とのつながりを感じて非常に印象に残っています。まずは日本と近く関係性の深い台湾からサービスを広めていきたいと思っています。そこから中国大陸、東南アジアなどへ拡大して、世界中の人をターゲットにしていきたいと考えています。