スノーボードから生まれたグループ通話システムのBONXは、遊びやスポーツの場で100メートル先の仲間とあたかも隣にいるように会話できるという、今までになかった体験を提供しています。サービス開始の経緯を株式会社BONX 代表取締役の宮坂貴大さんに伺いました。
GoProに感銘を受けてスノーボーダー向けのサービスを開発
BONXとは、耳に装着するイヤフォン型のデバイスとアプリを組み合わせて使い、無料版だと最大10人まで、有料版だと30人まで同時に話すことができるサービスです。相手とはインターネット経由で音声をやり取りするので距離の制限なく遠方の相手とも通話することができ、スポーツをしながら友人同士が会話したり、店舗でスタッフ同士が会話したりする目的で使われています。人が話すと自動的に通信が始まり、話し終わると通信が終わるので、バッテリーや通信量を気にせずに利用できるのが特徴です。
サービス開発のきっかけは、大手コンサルティング会社で働いていたときにアクションカメラのGoPro(ゴープロ)の創業ストーリーを知ったことです。サーファーだった創業者が、サーフィン中に簡単に撮影できる機器がないことに着目してGoProを開発しました。波が立っているような過酷な環境でも使えるカメラを作れば、どこでも使えるようになるだろうと創業者は考え、結果的にその通りになり、アクションカメラという今までなかったカテゴリーを生み出しました。
「大学時代からスノーボードがとても好きで、毎年北半球と南半球を往復して1年中雪を追っかけていたほどでした。GoProのストーリーを知り、同じようなイノベーションがスノーボードでも起こせるに違いないと考えて思いついたのがBONXのアイデアです」。これは実際に雪山で不便に感じていた経験がもとになっています。今はスマートフォンのような便利なツールを1人1台持っていて、どこでも電波が来ている環境なのに、スノーボードを楽しみながら会話をすることができない不便さを感じていました。
新しいサービスを生み出せば自分も使いたいし、ほかのスノーボーダーにも便利なはず。さらに広いビジネス分野で使ってもらえればグローバルでも戦える可能性もある。日本初のオリジナルなプロダクトを世界に発信したいという思いもあり、2014年にBONXを創業しました。
独自開発の技術が新たな体験を生み出す
スノーボードをしながら会話するという新しい体験を実現するために、独自開発したBluetoothのイヤフォンとVoIP(Voice over Internet Protocol)によるグループ通話システムを組み合わせています。サービスの肝となる通話システムは自社で開発し、特許性も認められています。
BONXの価値は、常に音声で相手とつながっているということです。距離が離れていても話したいと思った瞬間に接続できる発話検知技術をはじめ、ストレスなく会話できるためのテクノロジーがたくさん組み込まれています。
例えばランニングでお互い自宅の周りを走っていながら、声がつながっているだけで一緒に走っている感覚が得られます。相手があたかも隣にいるかのように感じられ、常時その状態が続くことは今までとは全く違う新しい体験です。