「自分に似合うファッション、メイクが知りたい」という女性のニーズに対し、AIで顔の特徴を分類するアプリmira(ミラ)を開発したKINDLER。アプリ開発の経緯について代表取締役CEOの門脇明日香氏に伺いました。
ビューティーアドバイザーのノウハウを機械学習で自動化
「mira」は、自分の顔写真を送信するとAIが目や鼻など顔のパーツの特徴を判断して4つの顔タイプに分類してくれる顔診断アプリです。自分の顔がどのタイプなのか、有名人の誰に似ているかなどはマイカルテに登録され、タイプに合ったメイクやファッション情報をチェックできるようになっています。2019年1月にリリースしてから半年(ノンプロモーション)で約1万ダウンロード、現在30万回以上使われています。
目指したのは、リアル店舗でのスタッフからのお勧めをわざわざお店に足を運ばなくても受けられるような体験を提供するアプリ完結型サービスです。リアル店舗では、スタッフからの提案が商品購入時に大きな影響力を持ちます。百貨店のコスメカウンターにはビューティーアドバイザーがいて、肌診断をしてお客様のタイプに合った商品を提案してくれます。洋服を買うときにもショップのスタッフが似合いそうな商品を勧めてくれます。
今は自分に本当に似合うもの、納得感があるものは高くても買ってくれる時代です。ただ買い物をするよりも、スタッフがアドバイスしたほうが2倍の購買率になるというデータもあります。このような体験をアプリでも体験できるように設計しています。
開発にあたっては、実際にビューティーアドバイザーが接客時にお客様のどんな箇所を見て判断しているのかを調査しました。すると、顔立ちのバランスやパーソナルカラー、接客中にヒアリングした趣味嗜好の情報を組み合わせて判断していることがわかり、それらの情報を機械学習して自動化しています。
テクノロジーで人の役に立つアプリを開発したいと起業
大学時代は画像処理やロボットに組み込むセンサーの開発をしていました。そこで開発した3D柔軟触覚センサーで特許を取得して企業や研究機関に販売しました。テクノロジーが生活の役に立つという経験は自分にとって衝撃的なものでした。
その後、世界中の人に使われる商品を開発する企業で挑戦したいと思いソニーに入社、デジタルカメラの美肌センサーなどを数年間開発していました。しかし、学生時代の経験に加え、もともと起業志向があったため、退職して自費留学した後、ITベンダー数社を経験してからKINDLERを起業しました。
miraの原型は、会社員時代に個人的に開発したアプリです。全体で5万ダウンロード程度ありましたが、中国メディアに取り上げられたことで日本よりも中国ユーザーのほうが3倍近くになりました。個人で開発したアプリであっても世界中に使われるチャンスがあることを実感し、さらに良いものを作りたいという想いを強めました。
ベータ版リリース時は、ユーザーからmiraのLINEアカウント宛に顔写真を送ってもらい、診断カルテを人力で送るというフローで運営していました。診断カルテを作る部分はAIを使っていたものの、それを送る部分はスタッフが手動で行っていました。リリース後、数週間で300件超えの依頼があり、一気に人手が足りなくなってしまったので、すべて自動化できる現在の形に変更して、2週間でアプリを開発し、正式リリースしました。
名前の由来は鏡(ミラー)からつけています。ギリシャ語で「運命」という意味もあります。社名のKINDLER(キンドラー)は、「輝かせる」「燃やす」という意味のKINDLEにerをつけた造語です。インフルエンサーのように自ら輝く人や、周りを巻き込みながら成長していく企業のパワーを創造したいという想いで名づけました。