人間のクリエイティビティの拡張を目指すO株式会社は、「デジタル空間だからこそできる体験」によって、誰もが簡単に新しいアイデアを創出できる3Dデジタル空間「MEs」を提供しています。創業者のa春さんに、起業の経緯と目指すものを伺いました。
非言語コミュニケーションによって広がる世界
アメリカ生まれのa春(アハル)さんは、アメリカ最高の美大と言われるロードアイランド・スクール・オブ・デザインで、工業デザインとコンピュテーションナルアートを学びました。また、隣接するブラウン大学で心理学を受講し、人間のマインドとそれがどうテクノロジーで結び合うかを学びました。
a春さんにとって、コンピューターはアイデアを深めたり、実装するプロセスにおいて欠かせないものですが、既存のインターフェースはクリエイティブ思考を十分に引き出している実感は薄い状況でした。そこで、インターフェースを刷新することで、クリエイティビティを高めていくことができるのではないかと考えるようになりました。
また、個人的にも言葉で自分の感情を伝えることが苦手で、自分が感じていることと表現しようとすることがマッチしないという悩みがありました。しかし、アニメーションを使ったコミュニケーションを始めてから、初めて伝えたいことが伝えられるようになったのです。その経験から、非言語コミュニケーションで自分の内面世界を伝えることに興味を持ち始めました。
現状、多くの人はデジタルツールを使ってコミュニケーションを行う際、主に使われるのは「テキスト」です。Oでは、言葉が主となるコミュニケーションではなく、コンピュテーショナルオブジェクト(画像、動画、3DCGデータなど)を通じた、より有機的なコミュニケーションがデフォルトとなるカルチャーを作ろうとしています。
コンピューター体験を3次元で考えて生まれた「MEs」
美大ならではのユニークな講義を通じてひらめきのプロセスを学んだa春さんは、人間のクリエイティビティを拡張する環境を実現できないかと考え、「MEs(ミーズ)」の元になる研究に着手します。そして、O(オー)株式会社を起業し、本格的に「MEs」の開発を始めました。
50年前に登場したグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)は、フォルダーやファイル、デスクトップの管理システムを生みだしました。それは2次元の中で思考をまとめるものですが、人間の脳は3次元で考えるものです。
コンピューター体験を3次元で考えたときに、どのような新しい価値が得られるのか、クリエイティブ思考をもっと高められるのか、そういう観点から開発された「MEs」は、マルチプレイヤーの空間コンピューターのようなものになります。
クリエイティブ思考を拡張していくコミュニケーションツールを目指して
AIの時代に入ってから、求められるスキルセットは大きく変化し、どんなスキルよりもクリエイティブ思考が重視されるようになりました。変化が激しく、複雑な問題が日々発生する中で、確度の高いクリエイティブなソリューションを迅速に提供する必要があります。また、デザインやアートに対するリテラシーが高まり、カスタマーが求めるプラットフォームのイノベーションレベルも上がってきています。
クリエイティブ思考を学ぶには、美大が最適な場所ですが、誰もが美大に行けるわけではありません。そこで、a春さんはクリエイティブ思考を誰でも学べ、自然に育てていけるようなツールを作りたいと考えました。それが「MEs」の核心となる思想です。ゼロイチで考える時に誰でも深いゾーンに簡単に入ることができて、クリエイティブ思考を拡張するようなコミュニケーション・コラボレーションツールを目指しています。
クリエイティビティを発揮するためのカギは、いかにフロー状態に入るかです。「MEs」は、「チームでフロー状態になることを可能にする」3Dデジタルコラボレーションプラットフォームです。3Dデジタルワールド上でテキストや画像、ウェブリンク、3Dオブジェクトなど、さまざまなデジタルオブジェクトを手に取るように操作し、メンバーと対話することが可能になります。これにより、クリエイティブ思考やコミュニケーションが促進され、プロジェクトの効率や革新性が格段に向上します。
「MEs」の空間では、さまざまなプロジェクトデータをシェアしたり、リサーチを共同で行ったり、リアルタイムなインタラクションが多様な形で行えます。言語情報だけに頼らないコミュニケーションによって、さらなる創造性が発揮されます。
操作は誰でもすぐに慣れるように設計されており、フリクションやバリアも低いです。「MEs」へのアーリーアクセスを希望する場合は、Oのサイトから応募できます。