株式会社Zenportは、輸出入に関わるさまざまなプレイヤーのデータを一元化し、見える化するクラウドサービス「Zenport」を展開し、大企業を中心に約100社に採用されています。グローバルサプライチェーンマネジメント(SCM)の仕組みと、輸出入のプラットフォームに着眼した理由を、代表の太田文行さんに伺いました。

さまざまなプレイヤーをつなぐサービスの「原点」

もともとさまざまな角度から物事を考える性格だったという太田さんは、新卒で入社した三菱商事での営業時代に、その多角的な視点を仕事に生かしていました。同じ製品を輸出する際でも、売り手や買い手によって異なる見方があり、社内外の多くの人の力を借りて商談をまとめる必要がありました。輸出入に関わるあらゆるプレイヤーをシームレスにつなぐ「Zenport」のサービスの原点は、既にこの時期に芽生えていたのかもしれません。

製造業の主導権が中国や韓国に移行しつつあることを感じ、人件費の高い先進国が生き残るために何をすべきかを常に考えていました。また、商社時代には取引先の工場長からものづくりに対する情熱と奥深さを感じ取り、停滞する日本の製造業に何らかの形で貢献したいと思うようにもなったといいます。

イノベーションを起こしたいという強い思いから、太田さんはスイスのビジネススクールに留学し、MBAを取得。その後、日本に戻りボストンコンサルティンググループに入社しました。しかし、新規事業を自ら立ち上げることを視野に入れた太田さんは、コンサルタントを辞め、機械部品などのファブレスメーカーであるミスミに転職します。

多角的な解釈で生まれる新しい価値

ミスミにおいて、太田さんは顧客の声をマーケティングにどう生かすかを考えるVOC(Voice of Customer)活動に取り組みました。そこで再認識したのが、「多角的な解釈の重要性」でした。統計的に顧客の声を解析するだけでは、製品やサービスのマーケティングに十分に生かすことはできません。例えば、コーヒーショップチェーンの場合、来店者ではなく内装業者の声を聞くことや、障がいのあるユーザーの意見からユニバーサルデザインを導入するなど、多角的な視点が必要です。

また、少数意見であっても重要な声がありますし、顧客の声が必ずしも正しいとも限りません。社会や業界の課題をどの角度から見るかによって、サービスの差別化や競争力が生まれます。「単一の視点や手法ではなく、さまざまな視点を組み合わせ、それぞれの観点から解釈し直すことで、新しい価値が生まれると実感しました」と太田さんは語ります。

2017年に太田さんは株式会社Zenportに参加し、輸出入のサプライチェーンの課題解決に取り組むことになりました。「Zenport」は、グローバルサプライチェーンマネジメントのプラットフォームです。貿易におけるさまざまな商慣行や役割のプレイヤーの視点を解釈し、連携させるという課題解決において、太田さんの「多角的な解釈」が生かされています。

データの見える化で効率的なコミュニケーションを実現

「Zenport」のプロダクトの核は、異なる構造のデータを連携させ、見える化することです。具体的には、海外生産、海外販売などグローバルサプライチェーンに関する需要予測から発注、出荷、国際輸送、国内輸送、在庫、販売までのサプライチェーン全体の連携を、輸出者、輸入者、物流企業の各プレイヤーが同じクラウドシステム上で行えます。

輸出者、輸入者、物流業者は、それぞれ国も商慣行も異なり、企業規模もさまざまです。企業が扱うデータは、エクセルデータやPDF、各自の基幹システムのデータなど多岐にわたります。これらのデータを「Zenport」というプラットフォームに集約し、見える化します。

サプライチェーンでは、同じ取引でも立場が異なれば見方も異なります。発注、受注、精算、出荷、物流、在庫などのプロセスが、それぞれ異なる会社や部署で管理されているため、立場によって必要な情報も異なります。その結果、お互い情報を読み換える作業が発生し、煩雑になります。

「Zenport」は、立場が異なる人たちそれぞれの文脈に沿って、一つの取引を多面的に見せることで、この問題を解決します。太田さんは、「広義のコミュニケーションコストを減らし、人と業務をつないでいくこと」をZenportの提供価値としました。

基幹データとリアルタイムデータの連携

サプライチェーンに携わる各企業のデータをどう連携させるかは、これまで非常に手間のかかる作業でした。しかし、「Zenport」を利用すれば、各企業がそれぞれの基幹システムで持つ生の情報を、共通言語化して相互に接続できます。

各企業のデータは一見異なるように見えますが、実際には共通点が多くあります。太田さんによれば、「非なるが似ている」データが多いのです。例えば、商品の残数など、各プレイヤーが知りたいデータは基本的に同じものが多いのです。これらのキーのずれを共通言語で合わせて、誰もが見て理解できるようにするのが「Zenport」の思想です。

しかし、データ連携の進め方が一番の課題でした。複数のデータソースからのデータ抽出や転記といった無駄な情報のやり取りや入力をどのようにしてなくすかが問題でした。「Zenport」を活用して、取引データを取込んでつなぎ、さらにそこに派生するや書類、コミュニケーションを一元管理することで、それぞれの業務効率が向上し、手作業でのデータ統合・管理によるストレスが軽減されます。

さらに、このデータ連携が実現することで、未着品の納期や数量がリアルタイムで可視化され、需要予測や在庫の最適化が実現します。これにより、在庫の過不足が減少し、無駄なコストが削減されるだけでなく、正確なデータに基づいた迅速な意思決定が行えるようになります。その結果、顧客満足度の向上やビジネスチャンスの最大化といった新しい価値が生まれます。

(後編へ続く)

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