10/17(水)、HR Tech Meetupが仙台市主催、キャナルベンチャーズ協力で開催された。イベント前半はHR Techスタートアップ3社によるサービス概要のプレゼンテーション、後半はトークセッションが行われた。

「中小企業のお悩み解決」と「起業家支援」 

イベント冒頭、仙台市経済局産業政策部の白川裕也氏が、HR Tech Meetup開催の背景や趣旨を紹介した。

HR Techとは、求人や採用、育成や評価などの人事関連業務について、ITやAIなどのテクノロジーを活用する手法およびその手法を生かしたサービスのことだ。IT環境の急速な発展により、比較的コストが安く、短期で導入できるなど、導入にあたってのハードルが低くなってきている。

今回のHR Tech Meetupは、仙台の中小企業の経営者・人事担当者とHR Tech分野への進出を考える起業家との交流を目的に、首都圏で活躍するHR Techスタートアップ関係者を招いて開催された。また、仙台で起業に挑戦する人を増やし、その支援をすることも意図したイベントだった。

リファラル採用を促進〜社員が人材を紹介したくなるような会社に

最初に株式会社リフカム代表取締役の清水巧氏が、リファラル採用を支援するクラウドサービス「Refcome(リフカム)」を紹介した。

リファラル採用とは、社員に自社とマッチしそうな人材を紹介してもらう採用手法である。採用の決定率が高く、採用のコストを抑え、ミスマッチを防ぐことが期待できる。

「Refcome」はリファラル採用の導入を容易にする。各社員のメールアドレスを登録し、社員が簡単なアンケートに回答すれば、利用できるようになる。このサービスを使うと、社内で募集している人材の情報(募集理由、募集しているポジション)をスマホアプリ上で社員に周知することができ、人材を紹介してもらいやすくなる。

社員が実際にどの程度紹介に動くかは、企業と社員のエンゲージメントが大きく影響する。したがって高い成果を上げるためには、社員のエンゲージメントの向上とリファラル採用をセットで回していくことが重要となるという。リフカムではエンゲージメントの調査により、リファラル採用に対する社員の協力率を事前に予測することもできる。

リファラル採用の支援からはじまったリフカムだが、いまではエンゲージメントに関するサービスや、企業のブランディング、オンボーディングプロセスの支援もてがけている。リファラル採用をきっかけに、社員がその会社のファンになり、人材を紹介したくなるような会社づくりを支援している。

画像: 株式会社リフカム代表取締役 清水巧氏

株式会社リフカム代表取締役 清水巧氏

目標設定、人事評価を効率的に

次に、株式会社HRBrain代表取締役社長の堀浩輝氏が人事評価管理クラウドサービス「HRBrain」を紹介した。HRBrainは、目標設定や人事評価をクラウド型のソフトウェアで効率化・データ化するサービスである。

目標設定や人事評価は、従業員満足度とそれに伴う業績の向上に繋がる重要な業務だ。多くの企業ではエクセルのデータやプリントアウトされた資料で行われており、管理職は煩雑で時間がかかる仕事に追われる。前職で事業部門の管理職に就いていた堀氏はそこにニーズを感じ、このサービスが生まれた。

HRBrainは、目標設定、期中の面談、進捗の管理、期末の評価、集計という一連のプロセスを効率化する。たとえば目標設定を制度化するために必要なフレームワークをフォーマット化することで、中小企業などが導入したい制度を素早く構築することができる。

また、社員との面談情報は、社員や人事関係者などが同じ画面を見ながら、進捗やその人のキャリアプランを可視化する。これは社員の成長に向き合い、期末に認識のズレのない評価をすることに寄与する。また、マネージャーから社員へのフィードバックがオープンになるため、マネージャーの育成にも繋がる。

HRBrainのサービスを導入することによって、社員の目標達成に対する意欲を高められるとともに、人事担当やマネージャーの事務作業を効率化できる。これによりマネージャーは、社員との面談などのコミュニケーションや人事戦略の構想に、より多くの時間を割くことができるようになるのだ。

画像: 株式会社HRBrain 代表取締役社長 堀 浩輝氏

株式会社HRBrain 代表取締役社長 堀 浩輝氏

労務管理の現状を変える

続いて株式会社BEC代表取締役の高谷元悠氏が、クラウド労務管理サービス「Gozal」について紹介した。

日本企業の現状として、労務管理は手作業や目視チェックが大半を占める。効率的かつ正確に行えている企業はあまり多くない。法律関連など注意すべきデータが多すぎることや、経験豊富な労務担当者の不足などがその原因となっている。そのような現状を踏まえ、労務管理業務を快適にするのがこのサービスだ。

Gozalは各社員を登録したら、すぐに導入できる。本格運用にむけて、Gozalの専門チームが就業環境や労働時間の設計などをヒアリングし、それを基に環境構築を代行してくれる。過去の勤怠データを計算メソッドに当てはめ、その会社に合った自動計算が機能しているかを確認した後に、運用のレクチャーも行う。

社員はスマホ上で勤怠の打刻、休暇の申請などができる。労務管理や給与計算も自動化される。また、働く時間が可視化されるので、それを基に「この部署ならフレックスタイム制を導入してはどうか」など、新たな人事制度の検討などを行うことも可能にする。

画像: 労務管理の現状を変える

株式会社BEC 代表取締役 高谷元悠氏

「テクノロジー」とはいえ、対人コミュニケーションが鍵

仙台を中心に組織活性化/働き方デザインのコンサルティングをしている株式会社Pallet代表取締役の羽山暁子氏とキャナルベンチャーズ代表取締役の保科剛、スタートアップ3社の各代表で、トークセッションが行われた。

画像1: 「テクノロジー」とはいえ、対人コミュニケーションが鍵

羽山氏は、仙台の中小企業の課題として人材不足を挙げる。人事のプロフェッショナルがいる中小企業は少なく、経営者自身が管理していることが多い。今回紹介されたサービスを導入することで、経営者が本来すべき業務に使える時間を増やすことができるだろうと期待する。

「テクノロジー」で便利になるとはいえ、抵抗を感じる社員も少なくない。効率をもとめる部分と人間的な部分のバランスが鍵だという指摘もあった。

Gozalは、機能がわからない時にはすぐにGozalのサポートに問い合わせができる体制をとっている。人事担当者が新システム導入の問い合わせで煩わしい思いをすることがない。ある地方では、導入の壁をとりはらうのは「方言」だと言われ、その土地の言葉を覚えて会話することで受け入れてもらえた事例もあったという。

堀氏は、アメリカの企業はクラウドサービスを平均16件入れているというデータを紹介した。日本は5件程度。この16件はおもにエクセル、メールなどのコミュニケーション、SIerの代替だという。エクセルや紙の資料のままで運用していると、データ化やデータの活用が大変である。たとえば、業務の評価と勤務時間を組み合わせたうえでの勤務評価をエクセルで行うにはマクロを組まなければならないなど、非常に時間がかかる。エクセルやメールが使えるのであれば、クラウドサービスも難しいものではないと指摘する。

清水氏は、リファラル採用をしたいが着手できなかった企業には、いきなりサービスを導入してもらうのではなく、まずは社内調査をするという。たとえば福利厚生がしっかりしているとうたっていても、従業員はそう思っていないケースがある。現状を見える化し、導入できる状況かどうか確認した先にHR Techがあると語った。

「テクノロジーは難しいのではなく、テクノロジーはものごとを簡単にしていると考えたほうがいい」と保科。

画像2: 「テクノロジー」とはいえ、対人コミュニケーションが鍵

羽山氏の“やってみないとわからない”の壁をいかに超えるか、という話に頷く人も多かった。この先、就労人口の減少が周知の事実である状況下では、課題解決のために新しいことを取り入れて変革を試みる姿勢が必要だ。新たなサービスに対しては「使ってみて、ダメならやめればいい」というくらいの柔軟な考え方が求められるのである。

これからHR Techサービスがどのようにビジネスを活性化させていくのか、そしてどのようなサービスが新たに生まれてくるのか、今後の動向にも注目だ。

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