「外出時、とにかくWiFiが使いにくかったので」とタウンWiFi CEOの荻田剛大はアプリ開発のきっかけを語る。新卒で2006年に楽天に入社し、9年間、開発を担当した後に独立した荻田氏。
特に動画をみるのが好きな荻田氏は、頻繁に動画を視聴していた時にしばしば通信制限にひっかかっていた。楽天市場というインターネット上のサービス開発に関わっていたこともあり、通信制限でインターネットを我慢しなければいけないのは、インターネット業界にとって損失だと感じた。街のWiFiも便利だが、サービスごとに会員登録をするのは面倒である。そこでどのエリアに行ってもWiFiがすぐに使える、自分が本当に欲しいと思うアプリ「タウンWiFi」を開発した。
当初は、楽天の新規事業にしようと考えた荻田氏だが、最終的に独立して、ユーザが使いやすいアプリを開発することを決める。通常、無料WiFiはサービスを提供する会社ごとに個人情報やメールアドレスの登録が必要になる。一度登録すればさまざまなな無料WiFiにすぐ接続できるタウンWiFiは、リリースするとすぐに20代、30代を中心としたユーザへ広まっていった。荻田氏はニーズを改めて感じたという。
開発当初はビジネスモデルや戦略ということよりも、ひたすらユーザのための便利なアプリを意識して開発を進めてきたタウンWiFi。インタフェースも洗練されていき、現在では40代、50代のビジネスパーソンにも広がっている。
次のステップは、店舗など無料WiFiを提供している側へのメリット提供である。「WiFiマーケティング」を強化していきたい荻田氏。実は、飲食店をはじめ、WiFiを入れている多くの店舗は、その効果を感じていないという。集客につながっているのかどうかが、わからないからである。
そこで、次の3つに注力していく。
1)集客
特定の地域にユーザが入ると、その周辺にあるカフェの新商品などが案内される「WiFiチラシ」を提供する
2)情報の最適化
性別、年齢、国籍などにあわせて発信する情報を変えていく
3)分析
ユーザの動線や、人気エリアを把握するなど、データを集計・分析していく
8月2日には、WiFi対象国を拡大し、世界34カ国での利用が可能となったことがプレスリリースされた。ある国に行って接続できないフリーWiFiがあった際には、自動でWiFi認証AIがログインできるように設定する。1〜2日後には、そのWiFiにも接続できるようになるという。
荻田氏は、まだ多くの人が「WiFiをアプリで使う」ことが新しい体験であるため、まずはより多くの人に利用をうながし、慣れてもらうことが必要だと語る。タウンWiFiの普及を進め、将来的には「WiFiならタウンWiFi」というWiFiの王道になりたいと、荻田氏は意気込みを語った。