「BIPROGYグループ中国支店カンファレンス2023」が2023年11月7日に広島市で開催されました。3セッションのセミナーのうち、セッション1「AI SaaSの力で現場を活性化~Generative AIの衝撃を受けて、起業にかけた熱い志~」にて、株式会社バベル代表取締役社長の杉山大幹さんに登壇いただき、起業のきっかけから、顧客から高い評価を受けている商談解析クラウド「ailead」の開発経緯まで語っていただきました。

登壇者 株式会社バベル 創業者/代表取締役社長 杉山大幹さん

1冊の本が人生を変えた

バベルは生成AIとSaaSを組み合わせて、特にセールスの分野でプロダクトを展開しています。講演のタイトルに「起業にかけた熱い志」とありますので、まず最初に起業のきっかけについてお話します。

大学時代にインターンを経験した企業で、『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』という本に出会い、人生の方向性が変わりました。

画像: 1冊の本が人生を変えた

1990年代後半から2000年代のインターネット業界の歴史が大体全部載っていて、ソフトバンクやDeNAなどの会社が大きくなる過程が非常に細かく描かれていました。登場人物を全員検索してみたところ、ビットバレー(渋谷を中心としたIT業界のコミュニティー)のトップであった松山太河さんが率いるベンチャーキャピタルEastVenturesがインターンを募集しているのを見つけ、そこでインターン生としてインターネット業界に足を踏み入れたわけです。最初は短期の契約だったのですが、そこで何とかインパクトを残そうとがんばって、同社にフルタイムで採用されました。

他社のチャレンジが刺激に

当時は小さなシェアオフィスでしたが、右隣はメルカリ、左はBASEでした。両社とも社員数は10~20人ほどの会社でしたが、ものすごい勢いで成長していきました。ベンチャーキャピタルの仕事ももちろん魅力的でしたが、自分でプロダクトやサービスを作って世の中を変えていくことが本当にできることを実感しました。メルカリの競合にはヤフオクが、BASEの競合には楽天が既に存在しており、賛同してくれる人は今ほどは多くなかったと思いますが、今やメルカリは2000人規模の上場企業となり、5年、10年でこれほどまで変わることができるのです。

そこで自分でもプロダクトを開発してみましたが、そんなにうまくいくはずもなく、修行が必要だと感じ、メルカリの新規事業を行うチームに入り、プロダクト開発をゼロから作ることを学びました。泥臭い仕事がほとんどで、メルカリほどの優秀な人材がいても新規事業を成功させることは非常に難しいという現実を目の当たりにしました。しかし、それでも何とか自分でプロダクトを開発したいという思いが募っていきました。そこで、松山さんと当時メルカリの子会社の社長を務めていた松本さんに相談したところ、「会社を立ち上げるなら支援するよ」と言っていただき、出資が決まりました。

この時の経験から、結論としては、「チャレンジしている人を近くで見ていると、自分もチャレンジできるのではないかと勇気づけられる」ということと、「まずは目の前の仕事に向き合い、一生懸命働くと応援してくれる人が現れる」ということ、この2つが起業する上で大切なのではないかと思います。

コロナ禍で変わる人々の働き方と新たに生じた課題

当初は海外向けにEコマースを展開したり、広告のクリエイティブなどをAIで自動化したりする事業にチャレンジしていました。これはこれである程度売上が伸びていたのですが、コロナ禍で海外がロックダウンされてしまって、広告主の出稿が減ってしまいました。2020年の記憶はほぼないくらいの心理状況でした。ただ、コロナ禍で人々の働き方が変わり、自分たちもリモートで営業をかける中で、リモートワークでのセールス業務において、ある普遍的な課題があることに気付いたのです。それは、商談がリモートワークで進む中で、「お客様との関係構築や、チーム内の進捗把握、管理職の情報収集、報告・連絡・相談がうまくいかない」といった課題です。また、「新しく入った営業パーソンが育たない」、「パフォーマンスの低い営業パーソンのパフォーマンスを向上させたい」、といった課題も存在します。リモートワークのこうした点を改善しないと生産性は向上しません。

一方で、リモートワークやハイブリッドワークが急速に進展し、お客様とのコミュニケーションはますますデジタル化しています。そこで、あらゆるコミュニケーションのデータを自動で収集し、AIで分析することで、業務効率化や営業人材の育成につなげられると考え、プロダクトを開発しました。そのような経緯を経て生まれたのが、商談解析クラウド「ailead(エーアイリード)」というプロダクトです。

ブラックボックス化していた「商談の内容」を明らかにするailead

商談の前段階では、商談の機会を判定・創出するMarketing Automation(MA)ツールや商談日程調整のツールがあります。商談後にはSFAやCRMなどの商談ステータスを記録したり、商談を後工程へと引き継ぎ管理をしたりするツールが存在します。しかし、商談の中身については、ブラックボックス化や属人化がなされたままです。ここに当社のaileadが入ることで、商談の内容のデータを蓄積し、そのデータを活用して業務効率化や生産性向上、営業パーソンの育成などに寄与できると考えています。

画像1: ブラックボックス化していた「商談の内容」を明らかにするailead

aileadの特長の一つは、既に業務フローを確立した企業にも導入が容易であることが挙げられます。通常、ソフトウェアを導入する際には、従来のオペレーションを変更したり、新たな入力作業が発生したりすることがあり、そのデメリットがメリットを上回ることがあります。しかし、aileadはこのような課題がなく、例えばGoogleカレンダーにてWeb会議を予約しておくと、aileadのBotアカウントが自動的にWeb会議に参加してきて、会議を録画し、文字起こしをしてくれます。録画やデータのダウンロード・アップロードなどの手間も発生せず、自動的に大量のデータが蓄積されていきます。

そして、例えばお客様が自社の課題について話しているシーンやそのニュアンスを営業チーム内で共有することができます。マネージャーは、営業パーソンの主観なしにファクトを確認でき、何分何秒の部分で何を話すべきだったかを営業パーソンにきちんと伝えていくことができます。また、これらの情報を営業チームやこれから新たに入ってくる営業パーソンにも共有できる点も大きなメリットです。日々の商談が会社のアセットに変わっていくわけです。

その結果aileadは、セールスイネーブルメント(営業力強化の取り組み)の事業領域では、7四半期連続で顧客満足度1位を獲得し、この領域で恐らく最も使用されているツールとして、メガベンチャーやスタートアップはもちろん、大企業でも幅広く活用されています。

画像2: ブラックボックス化していた「商談の内容」を明らかにするailead

日本の生産性向上を果たす「AIオートメーション」の世界

セールスフォースなどのSFAやCRMツールへの入力も自動化されており、入力の手間も省けます。そして何より、営業の過程と結果を整合することができます。今までのSFAやCRMツールでは、受注金額/失注などの結果しかわからなかったものが、aileadでは、誰がどのようにアポイントを取って、商談でどんな会話をして、どうやってクロージングまで持っていったか、という過程のデータがどんどん入ってきます。過程と結果がわかるとPDCAを回して改善・強化していくことができるようになります。

生成AIの文脈で言うと、その商談における意思決定事項は何だったのか、どういう提案が行われたのか、懸念点は何か、などの情報も自動的に抽出されます。議事録を新人時代から何年も書かせるといった働き方が、LLMによって変わっていくと思います。

ある上場企業の方から「リモートワークになるとフィードバックが減る。そうすると会社がやってほしいことと個人が実際にやっていることがずれていって、会社が思った方向に向かっていかない」という意見がありました。こういったプロダクトがあると、商談内容などが可視化されることで、どういうフィードバックをすればいいのかということもわかってきます。

商談売上などの結果の定量データだけでなく、商談の過程・内容などの定性データも利活用されるような営業組織に進化していければ、もっともっと日本の生産性は上がると思います。

このように、aileadによって、自動的に商談内容を蓄積し、AIが商談の過程や内容を明らかにし、商談データが自動的にSFC/CRMへの入力や議事録として抽出されて、ビジネスの後工程がスムーズに流れていく、「AIオートメーション」の世界を実現し、日本社会全体の生産性の向上を目指しています。

(後編へ続く)

This article is a sponsored article by
''.