2月24日開催のオンラインイベント「Digital Transformation Webinar Zero」では、「VUCA時代における働き方」をテーマに、「これからの働き方はどのように変わっていくのか」「人材のパフォーマンスを最大化していくためにはどうしたらよいか」を議論しました。
【パネリスト】
未来予報株式会社 代表取締役 宮川麻衣子さん
株式会社HRBrain 代表取締役 堀浩輝さん
株式会社リフカム 代表取締役CEO 清水巧さん
株式会社タイミー 代表取締役 小川嶺さん
株式会社グランストーリー 代表取締役CEO 越智敬之さん
【モデレーター】
キャナルベンチャーズ株式会社 取締役 駒木敬
これからの働き方はどう変わっていくのか
駒木)これからの働き方についてディスカッションをするにあたり、まずはタイミーについての紹介をお願いします。
小川)スキマバイトサービスのタイミーは、アプリ一つですぐに働けてすぐにお金をもらえるサービスです。「この時間だけ働きたい」人と、「この時間だけ働いてほしい」事業者とをマッチングし、事業者にとってはすぐに働く人が見つかる、働く側にとっては面接や履歴書不要で働けて、勤務終了後すぐに入金されるのが魅力です。アプリをリリースして2年で導入企業数1万3000社、ワーカー数160万人を突破しました。飲食、小売り、物流などでのお仕事があり、中でも物流の募集は全体の60%を占めています。
総務省「労働力調査」によると2018年には非正規労働者数は前年より45万人増加し、今後も増加が見込まれます。従来のように正規の仕事がないから非正規で働くのではなく、都合の良い時間で働きたいからというニーズが顕在化しています。そのため単にアルバイトを探すにとどまらない、より自由な働き方の提案など、新たな付加価値創出にも可能性も感じています。
駒木)若い人を中心に、働くことやライフスタイルに対する意識が変わってきていると感じています。私が若いころは、卒業後企業に就職し、そのまま定年まで働くのが普通でした。今は、あえてフリーターやギグワーカー(単発で仕事を受ける人)として働いたり、フリーエージェントとして独立したりする時代になってきているかと思います。最近の若い人にとって「働く」という意識がどう変わってきたか、気づきを教えていただけますか。
宮川)今の若者は、一定のところにとどまりたくないといった、所属の意識が稀薄なのが特徴だと認識しています。また、従来日本人の中にあった「他人と異なることは変だ」という意識が低くなり、自分が否定されることを良しとしない世代でもあります。
採用する側としても一括新卒採用で何年入社といった所属意識を持たせる従来型の採用より、インターン採用や通年採用などにシフトしていくのかなと思います。
小川)自分もZ世代のひとりですが、(周りを見ると)社会貢献性を重視するようになってきたと思います。東日本大震災やコロナ禍などの経験を通じて、自分がなぜ生きているのか、自分は何を貢献できるのかを考えるようになっているのかなと思います。所属意識がなくなった代わりに、個として貢献していきたい、個としてどうやって生きていくべきかを考え始めるようになったのかと思っています。
清水)他の世代が報酬や労働環境を重視するのに対して、Z世代ではやりがいや社会貢献性を重視する傾向があります。そのことを踏まえた上で、HRテックを推進していくべきでしょう。
越智)私は40代ですが、周りや親の価値観に影響されて就職した感覚があります。それに対してZ世代は自己選択、キャリア、興味とか成長可能性で職業選択をするし、それを後押しする枠組みがギグワーカーや副業だと思います。
そのような考え方の人と私たちが接するときに必要なのが、ポリシーサーチでしょう。SDGsとか社会的な貢献価値が果たせる場所だということを情報発信することが、企業は重要になってくるだろうと経験的にも感じています。
HRテックはどのように活用すべきか
駒木)企業と組織のパフォーマンスを上げるためにはどうすればいいか、迷われている人も多い。まずはHRBrainとリフカムの2社に、自社紹介をお願いします。
堀)HRBrainは人事評価クラウドをコアとしたタレントマネジメント領域全般のSaaS企業です。開始5年ほどで1000社に導入、4期連続満足度No.1の評価を得ているサービスで、各業界のリーディングカンパニーが導入しています。
人事評価、目標管理、スキルデータや評価データなどの従業員データを一元管理しており、人事マネジメント領域での業務効率が向上します。また人事評価領域では蓄積したデータをいろいろなインターフェースで見える化することで、より高度な組織分析が可能です。採用や配置、育成、離職防止などに活用できる機能を提供しています。
HRテックの導入で失敗しないポイントは、ツールを選ぶだけでなく、事前にツールに合わせて組織の制度設計をした上で導入することです。私たちはコンサルティングも提供しており、評価制度設計から運用サポートまでワンストップで提供しているのが特徴です。
清水)リフカムは、社員が友だちに自分の会社をすすめるリファラル採用の活性化支援プロダクトを提供しています。経済産業省をはじめ、多種多様な業種・業態で利用されています。
多店舗展開をしている企業では、現場において何が起きているかブラックボックス化してしまう、トップダウンの一方向なコミュニケーションによりスタッフの生産性が低下するなどの課題があります。さらにアルバイトを採用しても約70%が6カ月以内に退職を検討するといったことも大きな課題です。
このような課題の原因はコミュニケーションにあると分析し、アルバイト、店長、全員が見られる業務連絡兼コミュニケーションツールを提供し、付加価値としてリファラル採用もできる機能を付けました。現在、アルバイトで働く人で自分の職場を推奨したいと思う人は3.3%しかいないと言われており、コミュニケーションの課題を解決することで、働く人の幸福度向上を目指しています。
駒木)HRテックはアメリカが先行して、日本は3~4年遅れているように見えます。人事や人材開発の分野で日本と欧米は何が違うのでしょうか。また日本は今後何に注力していけばいいのでしょうか。
堀)HRテックのSaaS普及度合いは遅れていますが、考え方については「遅れている」というよりは「違う」のほうが正しいと思います。テック企業においてはアメリカではジョブ型雇用の色が強く、職務内容を明記した職務記述書(ジョブスクリプション)がある場合が多い。変化に迅速に対応できるアジリティの高い経営ができるのがメリットですが、社員にとっては即時性のあるパフォーマンスが求められ、できなければ解雇という、経営側が非常にパワーを持つ組織になります。このシステムをそのまま日本に当てはめるとおそらく大変なことになるでしょう。