配信からマネタイズまで、音声ライブアプリ「Wacha」の事業拡張戦略~Coeto(後編)

Coeto株式会社 代表取締役 湊健二

コロナ禍を経て、共通の趣味や関心を持つ人が集まり、情報交換や交流を行うSNSコミュニティは、距離を超えた社会的なつながりとして広がっています。Coeto株式会社が提供する音声ライブアプリ「Wacha」は、配信者とリスナー双方の参加ハードルが低く、リスナーがコンテンツを発信する側へと自然に移行できることも強みです。代表取締役の湊健二さんに、サービスの詳細と今後の展開について話を聞きました。

ライバーとリスナーが循環するコミュニティへ

「Wacha(ワチャ)」は、配信者(ライバー)とリスナーが双方向でやり取りできる音声配信アプリです。最大8名による会話をライブ配信でき、リスナーはコメントを通じて気軽に参加できます。

サービス開始当初はリスナーが大多数を占めていましたが、次第にコメント参加者が増え、ライバーと直接会話する人も多くなっていきました。聴いているだけのつもりのリスナーが、壇上に招かれたことをきっかけに自ら配信に挑戦するケースも増えています。ライバーとリスナーが横並びの関係にあり、立場が入れ替わることも珍しくありません。そうした動きから新たなつながりが生まれていることも、人気の理由の一つです。

現在は海外からのユーザー登録も見られ、日本のほか台湾、韓国、フィリピン、インドネシアなどからの利用も広がっています。

カテゴリー特化型コミュニティが広がる

コミュニティの具体例としては「声劇グループ」があります。台本を書く人と演じる人が参加し、リアルタイムで物語を創り上げていきます。その場限りのライブ感や即興性が際立っています。

そのほか、漫画のセリフを演じる場や歌を披露する場など、テーマを明確にしたコミュニティが形成されています。推し活の広がりも背景にあり、共通の関心を持つファン同士が、限られた仲間内で盛り上がる場が生まれています。日常の雑談配信が中心となる音声SNSも多いなか、「Wacha」では声劇や歌など、カテゴリーを絞ったコミュニティが多い点も支持されています。

また、ライバーへのインセンティブ制度に加え、場を盛り上げたリスナーにも投げ銭の一部を分配する仕組みを導入しています。コメント投稿や会話参加といった行動を可視化し、貢献度に応じて報酬が還元されます。同社によると、リスナーへの収益分配は業界でも珍しい取り組みとして注目を集めています。

ライバー創出とAI活用による拡張戦略

リスナーが能動的に参加し、そのままライバーに挑戦するケースも多く見られます。リスナーからライバーへの転換率が高いことは、「Wacha」の成長を支える要因の一つです。1人のライバーに多数のリスナーが集まる形よりも、少人数のコミュニティが複数生まれる方が活発な交流が生まれやすいと湊さんは語ります。そのため、ライバーの裾野を広げていくことが重要なテーマとなっています。

「Wacha」では、リスナーからライバーへの転換が自然な形で増えているため、サービスの成長につながっています。ライブ配信は即時性のある交流が中心ですが、アーカイブは24時間公開されており、後から視聴することも可能です。

一方で、人気ライバーに対しては長時間配信を望む声もあり、負担の増大が課題となっています。そこで同社は、これまでのライブデータを解析し、ライバーの音声や話し方をAIで再現するワンツーワンサービスの提供を予定しています。ライバーの負担を抑えながら、リスナーがいつでもコンテンツに触れられる環境の構築を目指しています。

ライバーのキャリアを広げるシステムへ

湊さんは、ユーザーにとって価値のある施策のみを実行することを基本方針に据えています。企業協賛についても、ユーザーにとって魅力がある場合に限って取り入れる考えで、会社都合の施策は行わない姿勢です。孤独の解消を目的に立ち上げたサービスであることから、リスナーとライバーがフラットな関係で心地よく過ごせる場であることを何より重視しています。

今後は、ライバーの活動を包括的に支援する体制の強化を進めていく方針です。現在、同社は約9割のライバーと直接マネジメント契約を結び、プロダクション機能も担っています。AIを活用したワンツーワンサービスは、ライバーが稼働していない時間帯にも収益機会を広げる役割を担います。さらに物販やファンクラブの展開なども視野に入れ、マネタイズ手法も広げていく考えです。

将来的には、ライバーを一つのIPとして育成し、タレントや芸能人のように「Wacha」以外のSNSやメディアでも活躍できる存在へと広げていく構想です。音声を起点としたコミュニティから、ライバーの活動領域を拡張していく取り組みを進めています。