エンターテインメント×テクノロジーで「推せる未来をつくる。」~Pictoria(後編)

株式会社Pictoria 代表取締役CEO明渡隼人

AIキャラクターを軸に、コンテンツ配信にとどまらず、AI案内サービスや企業向けAIキャラクター開発といったBtoB領域へも事業を広げている株式会社Pictoria。同社が手がけるAI VTuberの強みや、エンターテインメントとテクノロジーの融合によって描こうとしている今後の展望について、代表取締役CEOの明渡隼人さんに伺いました。

VTuberとAI VTuberの違い

VTuberとAI VTuberの最も大きな違いは、キャラクターを動かす主体が人間かAIかという点にあります。この違いは、見た目や配信スタイルにとどまらず、開発や運用のプロセスそのものにも大きな影響を及ぼしています。

一般的なVTuberでは、配信者本人がキャラクターのプランナーとしても機能します。そのため、複数のVTuberを展開する場合は、キャラクター数に応じて配信者を確保する必要があります。一方、AI VTuberはプログラムによって動作するため、専任のプランナーを別途配置しない限り、キャラクター設計やコンテンツ企画はエンジニアが担うことになります。その結果、AI VTuberを複数展開しようとすると、開発側の設計・企画に関わる負荷が急激に増大します。

こうした背景もあり、OpenAIが2023年にChatGPT APIを公開して以降、多くの企業がAI VTuber領域に参入しました。しかし、事業を継続できずに撤退するケースも少なくありません。その中でPictoriaは、累計400万件以上のユーザーコメントと数万時間に及ぶ配信データを蓄積しており、これらに基づく安定した運用能力が大きな差別化要因になっていると明渡さんは捉えています。

独自技術を軸に、コンテンツ配信からAI接客まで事業を拡大

Pictoriaの事業は、大きく3つの柱で構成されています。1つ目は、自社オリジナルのAI VTuberを開発・運営するプロダクション事業です。ユーザーからの投げ銭やYouTube広告収益、スポンサー案件などによって収益を得るBtoCモデルで、登録者数が10万人を超える「紡ネン」や、自発的で自然な発話を実現した「魔法少女アイリーン」などのAIキャラクターを展開しています。

2つ目は、企業向けにAIキャラクターを活用したサービスを提供するソリューション事業です。AIキャラクターに付加価値を持たせたサービスをサブスクリプション形式で提供するBtoBモデルで、商業施設やショールーム、イベント会場などで導入が進んでいます。

例えば、北海道内7空港を運営する北海道エアポートでは、スタッフ確保の難しさやインバウンド客への英語・中国語対応といった課題を抱えていました。そこで、PictoriaのAI案内サービス「Picto STAND(ピクトスタンド)」を採用し、定型的な問い合わせをAIが担うことで、スタッフの業務負荷を大幅に軽減できたといいます。

また、外部の既存IP(キャラクター)をAI VTuber化する取り組みも積極的に手掛けています。福岡ソフトバンクホークスのキャラクター「バリカタ君」を対話型AI案内サービスとして実証導入した事例では、キャラクターの世界観を保ちながら、ファンが「バリカタ君」と自然に会話できる新たな体験を実現しました。

どちらの事業も共通のAIキャラクターエンジンを基盤としています。同社では3つ目の事業としてAIキャラクター研究開発事業にも取り組んでおり、大規模言語モデル(LLM)や独自の音声合成技術「talk shape」を含めた先端AI技術の研究開発を進めています。

AIキャラクターが日常に溶け込む未来へ

Pictoriaは2024年に「推せる未来をつくる。」というミッションを掲げ、AI VTuberの価値を改めて定義しました。単なる技術やエンターテインメントにとどまらず、人の感情や生活に寄り添う存在として、AIキャラクターの可能性を広げていく姿勢を明確にしています。

近年、アイドルやキャラクターを応援する「推し文化」は広がりを見せています。一方で、不祥事や活動停止による突然の別れが、ファンに大きな喪失感を与えるケースもあります。そうしたリスクを伴わないAI VTuberは、「安心して推し続けられる存在」であると明渡さんは指摘します。その上で、推しになり得るタレント性を備えたAIキャラクターの開発に注力していく考えです。

AIキャラクターの将来性について、明渡さんはAI人格を用いたビジネスは想像以上の規模に成長していくと見ています。その実現に向け、直近ではAI案内サービスや企業向けAIキャラクター開発といったBtoB領域での実績拡大を重視しています。特にAI案内サービスについては、数百から数千規模へと展開し、日常生活の中でAIキャラクターが接客を担う光景を当たり前にしていきたいとしています。

さらに明渡さんが見据えるのは、人口減少や人手不足によって活力が失われつつある地方都市の未来です。AIキャラクターが街の中に広がり、自律的に活動し、人と交流する。そんな新しい街の姿を実装していくことで、社会課題の解決にも貢献していきたいと語っています。