

人材不足が深刻になる一方で、AIの台頭で劇的な変化が起きているIT市場において、企業は社内で必要な技術に適応できる人材を育成していく必要に迫られています。株式会社amoibeは仮想環境OJTとAIメンターで、実務経験に近い形でスキルを習得できる「amoibe OJT」を提供しています。代表取締役CEO新條隼人さんに製品の詳細と今後の展開について伺いました。
「エンジニア不足」と「人余り」が同時に起こる時代
新條さんが経営者として試行錯誤を重ねてきたこの10年で、社会環境は大きく変化しました。労働人口の減少や技術革新の加速により、エンジニアの労働市場では、高度IT人材の不足と従来型IT人材の余剰が同時に進行しています。企業は採用だけで必要な人材を確保することが難しくなり、未経験・微経験層の育成やPM人材の育成、既存人材のリスキリングといった課題に向き合わざるを得なくなりました。

一方で、人材育成には時間とコストがかかり、現場のOJTに依存した方法では、先輩社員や管理職の負担が大きくなりがちです。育成が属人化し、受講者の経験値によって成長速度に差が生まれることも少なくありません。
こうした構造的な課題に対し、新條さんが重視したのは、実務経験の有無によって学習機会に差が生まれない育成の仕組みをつくることでした。その考えを具体的なサービスとして形にしたのが、エンジニア育成サービス「amoibe OJT」です。
「擬似実務」とメンター支援で実務に近い成長体験を
従来のように、現場に配属されてから初めて業務の流れを理解する育成では、本人にも受け入れ側にも大きな負荷がかかっていました。そこでamoibe OJTでは、実務に入る前段階で業務全体を俯瞰し、判断のポイントを体感できる設計を重視しています。
サービスの中核となるのが、実際の業務工程や技術をデジタル上で再現した「擬似実務」です。受講者は、初めて直面する業務プロセスを仮想環境で経験しながら、実務に近い形で学習を進めていきます。学習の過程では、経験豊富なヒューマンメンターが受講者に伴走し、技術面だけでなく思考プロセスの理解まで含めて支援します。加えて、進め方や成果物に対する継続的なフィードバックは、仮想上司として機能するAIが担い、学習の質とスピードを安定的に高めています。
こうした仕組みにより、受講者はつまずいた点をその都度確認しながら学習を進めることができ、経験の差に左右されにくい成長プロセスが実現しました。進捗管理や報告もサービス内で完結するため、導入企業側で新たな業務が発生することはありません。これまで研修を担ってきた人材は、本来のコア業務に集中できるようになります。「擬似的な実務体験」と「伴走型のメンタリング」を組み合わせることで、効率的なスキル習得とキャリア形成の両立を目指しています。
高いリピート率が示す、実践型育成への評価
amoibe OJTでは、エンジニアの業務工程や役割に応じた4つのセグメントで育成プログラムを構成しています。上流工程を担う「PM要件定義コース」、従来型の「開発コース(Java)」「インフラコース(AWS)」、開発支援AIを活用する「AI駆動開発コース」に加え、非エンジニアも対象とした「LLM 1day Program」「LLMコース」を用意しています。業務フェーズや立場に応じて選択できる点が特長です。
2024年10月に有償リリースされて以降、月次でおよそ150%のペースで売り上げを伸ばしています。導入企業からの評価も高く、平均すると初回導入額の約4倍規模で再発注されるなど、高いリピート率につながっています。
特に、AIを活用した開発や業務理解を扱うコースでは、ユーザー企業での利用が広がっています。その背景として、新條さんはAI活用の内製化志向を挙げます。業務要件や社内データを深く理解する人材がAIを使いこなせるようになることで、企業全体の競争力が高まっていくと見ています。amoibe OJTの導入を通じて、受講者がスキルを高め、キャリアの選択肢を広げていくことが、結果として組織の活性化にもつながると考えています。
AIの活用で業界の歪みを改善へ
今後の展開として、SIer事業への参入も視野に入れています。AIやLLMを実装する新しい市場において、ニッチトップを目指す考えです。自社でSIを手掛けることで、OJTの教材をより幅広く実践的に構築できるようになり、人材育成に活用できる開発データを継続的に蓄積できる点にも可能性を見いだしています。
また、新條さんは産業全体の問題として、多重下請けや人手不足など、深刻な歪みが生じている現状を打破したいと考えています。AIを活用することで産業構造が変わり、その歪みが改善されるような働き掛けをしていきたいと話します。
社名のamoibeはギリシャ語に由来し、アメーバの語源です。アメーバが形を変えて時代に適応しながら進化していくように、人々が未来に向けて変化に適応していくことを応援する意味合いを込めています。また、同社が創業から現在まで、業態を変化させながら進化してきたことも示しています。
新條さんは、「AIが台頭しても、価値が高く残り続けられるエンジニアを応援していきたい」と話します。amoibeは、人材育成を起点に、これから顕在化していくエンジニアの労働力や技術力の課題に向き合い、社会に持続的なインパクトを生み出すことを目指しています。


