仮想環境OJTとAIメンターでエンジニアを育成~amoibe(前編)

株式会社amoibe 代表取締役CEO新條隼人

AIの進歩によって業務の自動化が進む中、エンジニアに求められるスキルも急速に変化しています。こうした環境変化を背景に、実務に近い形で学び直す「リスキリング」への関心が高まっています。株式会社amoibeが提供する「amoibe OJT」は、仮想環境でのOJTとAIメンターを組み合わせることで、現場に即した実践的なスキル習得を可能にするエンジニア育成ツールです。代表取締役CEO新條隼人さんに起業までの経緯を伺いました。

キャリア形成をテーマに起業するまで

新條さんは、父親が着物職人、母方の家系が提灯職人という伝統技能が身近にある家庭で育ちました。両親は、家業を継がせることよりも、子ども自身がやりたいことを見つけることを重視しており、その姿勢は新條さんの価値観にも大きな影響を与えました。幼少期から、自分は何に取り組むべきなのか、人生を通じて社会にどのような価値を提供できるのかを考えるようになり、次第に起業やビジネスへの関心を深めていきます。

2012年に一橋大学商学部を卒業後、後払い決済サービスを提供する企業に新卒入社し、営業グループリーダーや採用担当としての経験を積みました。社会人1年目の頃、周囲にはキャリアや生き方に悩む人が少なくないことに気づき、その違和感が次第に起業への動機として明確になっていきました。

事業として取り組む以上、自身が長期的に向き合い続けられるテーマでなければならないと考えた新條さんは、困難に直面しても意義を見失わずにいられる分野として「キャリア形成」を選びます。こうして2014年1月、「やりたいことをやる人生を、あたりまえに」というミッションを掲げ、24歳で株式会社ドットライフを創業しました。

人生のストーリーを共感性をもって伝えるメディアが成長

創業当時は、副業が一般的とは言えず、キャリア形成の手段は転職に限られていました。大きな決断には踏み切れないものの、現状に違和感を抱く人にとって、異なる職場環境を体験することは、視野を広げる有効な手段になり得ました。

人生経験のシェアリングサービス「another life.」は、こうした発想を起点に、職場体験のマッチングからスタートします。その後、体験の背景にある仕事観や人生の歩みを丁寧に伝える記事が支持を集め、事業の軸足はWebメディアへと移っていきました。

個人の人生をストーリーとして描く手法は評価を受け、企業のオウンドメディア向けコンテンツ制作など、事業領域も広がっていきました。一方で、職場体験のマッチングには運営上の制約も多く、オペレーションの難しさを抱えていたためメディア事業への集中を選択しました。

成長の手応えと残り続けた違和感

メディア事業は売り上げを伸ばし、外部からの評価も高まっていきました。経営は安定し、組織としても順調に成長していましたが、新條さんの中には拭いきれない違和感が残っていました。

社会に大きなインパクトを与えるスタートアップを志していたにもかかわらず、事業は急成長を目指すフェーズから離れつつあったのです。そこで、ファンドの満期を一つの節目とし、自己資本での買い戻しを決断します。そして、より大きな成長曲線を描ける事業へと舵を切ることを選びました。

技術の進化に置き去りにされる人を減らすために

新たな事業を模索するにあたっても、新條さんの関心の軸は変わりませんでした。キャリアや生き方に悩む人が、環境の変化によってどのように前向きな転換を遂げられるのか。その問いを起点に、次の事業構想が形づくられていきます。

2022年の秋、リスキリングという言葉が広く使われるようになる中で、新條さんはスキルの学び直しによって、技術革新の影響で職を失う人を減らし、新たなキャリアへの移行を支えられるのではないかと考えるようになりました。AIの台頭を前提とした時代においても価値を発揮し続けられるエンジニアを育成することは、社会的な意義が大きく、自身の価値観とも重なっていました。

こうした問題意識を背景に、2025年、経営体制や資本構成、事業領域を見直し、社名を株式会社amoibeへと改めて“再創業”します。デジタル上で実務環境を再現する仮想環境でのOJTと、AIによるメンタリングを組み合わせたエンジニア育成サービス「amoibe OJT」の構想は、ここから本格的に動き始めました。

(後編につづく)