

LobbyAI株式会社の代表取締役 CEO髙橋京太郎さんは、議員秘書として政治の現場を経験する中で、法律やルールを作る側に立つのではなく、ビジネスの力で社会課題を解決する道に可能性を見いだしました。起業に至った思考の延長線上にある公共情報分析ツール「LobbyLocal」の詳細と、その先に描く社会像について伺いました。
「今、どの自治体に、どのような提案をすべきか」を通知
事業拡大や社会課題の解決を目指し、自治体との連携に関心を持つ企業は増えています。しかし、契約までのプロセスは民間取引に比べて複雑で、参入を断念するケースも少なくありません。入札資格を持つ企業は約9万社あるものの、定期的に落札しているのは約4万社、頻繁に落札している企業は1万社程度にとどまっています。こうした状況を踏まえ、髙橋さんは公平性や競争性を高めるために、入札の門戸を広げるべきだと考えています。
自治体との連携を目指す企業向けの公共情報分析ツール「LobbyLocal」は、議事録や予算、計画書、入札情報などの膨大な公開データをAIで解析し、「今、どの自治体に、どのような提案をすべきか」を通知してくれます。効率的に情報を収集できることで、これまで自治体営業に踏み出せなかった企業にも参入の機会が広がります。
具体的なアプローチには大きく2つのパターンがあります。1つ目は、既存のベンダーに対する市民の不満が見られるケースです。議会の議事録などから課題や要望を読み取り、新規参入の余地がある自治体を見つけることができます。2つ目は、契約更新の周期や期限に着目する方法です。例えば、GIGAスクール構想で導入されたタブレットの更新時期が近づいている自治体を抽出し、満足度の低さが示されている場合に重点的にアプローチすることが可能になります。
自治体営業のハードルの高さを解決
髙橋さんは、自治体営業の現場にはいくつかの構造的な課題があると捉えています。自治体、民間企業の双方で人手不足が進み、従来型の対面営業が成り立ちにくくなっていることに加え、取引に関わる紙の書類が依然として多く、手続きが煩雑になっている点も課題です。
大手企業や入札の常連企業では、自治体営業を専門に担う部署を設けたり、業界団体を通じて働きかけたりするなど、一定の方法が確立されています。ところが、中小企業やスタートアップ企業にはそうした部署もノウハウもなく、自治体営業のハードルは高いままです。
LobbyAIが目指しているのは、単にAIのサービスを提供していくだけではありません。導入時のヒアリングを徹底し、顧客企業が効率的に情報収集できるような設定を構築していきます。また、既に自治体営業のノウハウを持つ企業にはAIやSaaSでさらなる効率化を支援していきます。一方で、中小企業やスタートアップ企業に対しては、BPOやBPaaSを通じて、自治体営業の業務そのものを代替する支援も行っていく考えです。
公共情報のOSとなることを目指して
自治体や議員からも、「LobbyLocal」への関心は高まりつつあります。世論や市民ニーズが多様化する中で、議会対応や答弁書の作成、政務調査にかかる負担は年々増しています。公開情報を横断的に整理し、論点や傾向を把握できる仕組みは、行政や議会の現場にとっても大きな助けになるといいます。
髙橋さんが目指しているのは、単なる業務効率化ツールではありません。「LobbyLocal」を、政策・予算・世論といった公共情報をつなぐ“基盤”として位置づけ、誰もが公共の仕組みにアクセスできる状態をつくることです。その先には、企業や自治体、議員、市民が同じ情報を共有し、それぞれの立場から合理的な意思決定ができる社会があります。
さらに将来的には、公共情報を起点とした政策提言やコンサルティングを担うシンクタンク機能も視野に入れています。これまで、制度や政策は「知っている人」「関われる立場の人」によって運用されがちでした。LobbyAIは、その前提そのものを変えようとしています。情報の非対称性によって閉じていた政治や行政を、より開かれたものへと変えていく。その根底にあるのが、「政治や行政は、使われてこそ意味を持つ」という一貫した思想です。
「目標は『誰もが当たり前に政治を活用できる社会』をつくることです」と髙橋さんは語ります。自治体や議員、企業、市民が「LobbyLocal」を共通基盤として同じ情報を見つめ、それぞれの立場から意思決定を行う。LobbyAIが描いているのは、政治や行政が特別なものではなく、誰もが日常的にアクセスし、意思決定に活用できる社会インフラとして機能する未来です。



