

少子高齢化と人手不足が進む中で、行政サービスを維持していくために、民間企業との連携が広がっています。しかし、民間企業にとっては、国や自治体の入札情報を収集し、自社に合う案件を探し出すのは大変な作業です。こうした負担の解消を目指して、LobbyAI株式会社は自治体との連携を図る企業向けに、公共情報分析ツール「LobbyLocal」を開発しています。代表取締役 CEOの髙橋京太郎さんに起業までの経緯について伺いました。
法律や政治の現場を知るため政治家のもとで活動する
子どものころから経済や現代社会に関心を持っていた髙橋さんは、高校時代の社会科を通じて、社会の仕組みを考えることに確かな手応えを感じるようになりました。世の中の動きや制度の背景をより深く理解したいと考え、大学では法律や経済を学ぶ道を選びます。
転機となったのは、地元の駅前で演説をしていた若手政治家との出会いでした。SNSでのフォローをきっかけに交流が生まれ、その後、法学部に進学して法律や政治を学び、「知識だけでなく現場を見たい」という思いが次第に強まっていきました。
大学卒業のタイミングで、以前から関わりのあったその政治家のもとで活動することを決意します。政治活動を二人三脚で支えながら、生活面ではウェブ制作会社やスタートアップ企業で働き、生計を立てていました。そうした活動を続ける中で、その政治家が国会議員に当選し、髙橋さんは秘書として政務を支える立場を任されることになります。
民間側からやれるアプローチに可能性を感じる
秘書として政治の世界に身を置いた髙橋さんがまず感じたのは、民間企業やスタートアップとのスピード感の違いでした。業務の多くがFAXや電話、郵便を前提としており、デジタル化が進みにくい構造が残っていたといいます。
髙橋さんはこれまでの経験を活かし、ネット戦略やチラシやビラといった配布物のデザイン改善など、新たな取り組みを試みていきました。さらに、学生団体や市議団を立ち上げ、民意を政治の場に届ける仕組みづくりにも挑戦しますが、内部からの働きかけだけでは、変化を生み出すには限界があることを実感しました。
活動を通じて見えてきたのは、政治の現場では意思決定に時間がかかり、その過程で現場や市民の声が十分に反映されにくいという構造でした。その背景には、人が人を介して制度を運用する構造そのものがあると捉えるようになります。民間側から明確なニーズや要望が示され、それが外部からの圧力として作用したときに初めて政治が動く場面を目の当たりにし、髙橋さんは民間の立場から働きかけるアプローチに可能性を見いだしました。
政治や行政は「道具」である
秘書として活動していた当時、事務所には市民や企業から多くの問い合わせが寄せられていました。その内容を行政に確認し、得られた回答を市民に伝えるというやり取りが行われていたといいます。髙橋さんは、行政に声を届けるのであれば、デジタルやAIの力によって当事者が直接つながれる仕組みがあってもよいのではないかと考えるようになりました。
同時に、情報の偏在にも強い問題意識を抱きます。行政の制度や各種支援策、入札や補助金に関する情報は公開されているものの、実際に活用できているのは一部の人や企業に限られていました。そのため、多くの人にとって行政は「使える存在」になっていないと感じていたといいます。
こうした問題意識の根底にあったのが、政治や行政を「目的」ではなく「手段」として捉える考え方でした。政治や行政は、人々がより良い生活を送り、困ったときに支えを得るためのサービスであり、社会のセーフティネットでもあります。その機能が十分に生かされてこそ、人々は安心して生活できる。髙橋さんは、「政治や行政はある意味『道具』なのです」と語ります。この道具を、誰もが使いこなせる状態にする必要性を強く意識するようになりました。
「すべての企業が制度・補助金を使いこなす時代」の実現へ
政治や行政の課題は、特定の政治家や組織に起因するものではなく、仕組みそのものにあると髙橋さんは考えます。国や自治体がAIやデータを活用し、EBPM(Evidence Based Policy Making/証拠やデータに基づく政策立案)や政策科学の考え方を取り入れていく一方で、民間も政策や制度の動きを読み取り、自社の技術やノウハウをどう生かせるかを考えなければなりません。髙橋さんは、こうした官民両軸からの働きかけがなければ、日本の政治は変わらないと断言します。
その官民連携を難しくしているのが、人手不足です。国や自治体は限られた職員数で多様な業務を担い、民間でも人材不足が深刻化する中、従来のような人手に頼った営業やロビー活動は成り立たなくなっています。
こうした状況を踏まえ、髙橋さんは、政策や制度に関する情報をAIで解析し、企業と行政がより戦略的に連携できる仕組みが必要だと考えました。2025年1月、「すべての企業が制度や補助金を使いこなす時代」の実現を目指して、LobbyAI株式会社を立ち上げました。
(後編につづく)


