
日本各地で市街地の再開発が進む背景には、建物の老朽化や防災対策の必要性があります。こうした大規模な再開発では、地域の価値を長期的に維持し、住民や利用者との関係を育てていくエリアマネジメントが欠かせません。PIAZZA株式会社は、このエリアマネジメントを再開発前の準備段階から、竣工後の運営期まで一貫して担う体制を整え、事業として発展させてきました。代表取締役の矢野晃平さんに、PIAZZAが取り組むエリアマネジメントの特徴と、街づくり会社としての今後の展開について伺いました。
増える再開発事業とエリアマネジメントの需要
地域SNSから事業を広げ、エリアマネジメントに取り組むPIAZZAは、再開発の現場で求められる役割を着実に広げています。矢野さんは、地域SNSを立ち上げた当初と比べて事業の可能性が大きく広がっていると語り、同社が「地域SNS会社」から「街づくり会社」へと進化している現状を強調します。
再開発事業は全国で増加傾向にあり、建物の老朽化が進む地域では建て替えの必要性が高まっています。特に都市部では再開発の規模が拡大し、それに伴ってエリアマネジメントの役割が大きくなっています。
大規模な再開発では、広場や公園、防災拠点など公共性のある空間を計画することで、建築容積が緩和され、事業の収益性が高まります。一方で、こうした空間を長期的に機能させるには、定期的な防災活動の実施や地域住民が交流する場づくりといったソフト面の運営も欠かせません。エリアマネジメントは、このハードとソフトの両面を継続的に整え、再開発後の地域価値を高めていくための仕組みとして重要性が増しています。
エリアマネジメントのコスト面の課題を解決
不動産会社やディベロッパーは、建物の完成後も地域と関わりながら運営するために必要なエリアマネジメント業務を、複数の法人や団体に外部委託するのが一般的です。しかし、エリアマネジメントそのものは収益を生みづらく、業務委託費が長期的な負担になるという課題を抱えていました。
PIAZZAは、この収益化が難しいエリアマネジメントをワンストップで受託し、独自の仕組みで利益を生み出しています。もともと広告事業や地域SNSの運営で培った強みがあるため、多様な手法で収益を確保しながらエリアマネジメントを成立させることができます。
また、地域SNSを活用した情報発信により住民同士の交流を促し、地域経済の活性化にもつなげています。さらに、建物のコミュニティスペースを活用した住民向けイベントを継続的に開催し、地域を巻き込んだ未来志向の街づくりを推進しています。
ソフトとハードの両面から街づくりに関わる
PIAZZAは、分析やデータ活用の分野でも事業を広げています。地域に関する多様なデータをもとに、特性や需要、課題を把握し、改善に向けた提案を行っています。また、市場調査やインタビュー調査に加え、地域コミュニティの活性度を数値化する独自指標「Community Value(コミュニティバリュー)」を活用し、より的確なエリアマネジメントの立案・実行・管理を可能にしています。
事業が急速に拡大した理由について、矢野さんは、PIAZZAがデジタルだけでなく、リアルも掛け合わせたソフトの街づくりの実績も評価されていることが大きいと語ります。同社と取引する企業の8割以上が不動産会社やディベロッパーであり、その多くは国内トップクラスの事業者です。
一つのプロジェクトが3年から10年に及ぶことも多く、長期間にわたって地域と深く関わることでノウハウが蓄積され、事業の効率化にもつながっています。こうした取り組みは国からも注目され、国土交通省が2025年3月に開催した「都市の個性の確立と質や価値の向上に関する懇談会」では、持続可能なエリアマネジメントの先行事例として紹介されました。
「街は建てるものから運営していくものへ」

矢野さんは今後の街づくりについて、建物が完成して売ったら終わりではなく、長期的・持続的に運営することでエリア全体としての価値を最大化していく必要があると考えています。街は地域の人々が主体的に輝く場であり、エリアをマネジメントするという言葉には上から目線の印象があるため、PIAZZAでは「エリアエンパワーメント」という新しい概念で街づくりを進めていきたいと話します。
現在、SNSを通じた市民レベルの活動は地方自治体の政策に影響を与え、さらに国の施策にも波及する可能性があります。PIAZZAが実践する市民参加型の街づくりは、企業としての価値を高めると同時に、地域の資源や人々の活動を活性化させ、地域そのものの価値向上にもつながっています。この取り組みにより、地域の住民や事業者、訪れる人々が主体的に関わる街の文化が育まれ、日本全体がエンパワーメントされていく未来に向かう一歩となっています。



