兄弟全員が起業家という環境で育ったKiyoshi Nakayamaさんは、2020年に分散学習・連合学習技術の普及を目指し、TieSetを設立しました。世界最先端の分散AI技術を実現させる連合学習プラットフォーム「STADLE」は、プライバシー保護やデータセキュリティーを重視する医療・製造業・金融業界での活用が期待されています。
研究成果を社会に生かすために起業
アメリカの大学を卒業したNakayamaさんは、シリコンバレーの研究所でAIのコア技術に関する研究開発に従事しましたが、「研究成果をビジネスにつなげる」という課題に直面します。学術的な知見を実社会の課題解決に活用するためには、単なる技術的理解だけでなく、市場ニーズや事業化のプロセスに関する深い洞察が必要でした。
この課題に挑むため、2020年に米国カリフォルニア州サンタクララ(Santa Clara, CA)でスタートアップ TieSet, Inc. を設立しました。主力技術である分散学習・連合学習(Federated Learning)は、データが保管されている環境で学習する手法で、プライバシーとセキュリティーの両立、通信負荷と学習に要するサーバー負荷の軽減を実現する革新的技術として注目されています。
「研究所に閉じ込めておくのではなく、社会で役立つものにすることが使命」と語るNakayamaさんは、特に医療・製造業・金融業界での技術活用を目指し、具体的な課題解決に取り組んでいます。
医療から金融まで、データセキュリティーを重視した連合学習の活用
連合学習は、データを直接共有することなく、それぞれのデータソース(病院や金融機関など)でAIモデルを学習し、その学習結果を統合する新しいAIの学習アプローチです。個別のデータを外部に持ち出すことなく、全体の分析結果を得られる点が最大の強みであることから、データセキュリティーやプライバシー保護が重要視される業界において、大きな価値を生み出します。
例えば、医療分野では、患者データの機密性を維持しながら診断精度の向上や治療プロセスの改善が可能です。不妊治療のようなデリケートな領域でも、個人情報を保護しつつ、診断・治療精度を向上させる可能性を秘めています。
また、製造業では、各製造拠点から得られる膨大なログデータを活用し、生産プロセスの最適化や異常検知が期待されています。STADLEの連合学習を利用すれば、各製造拠点で個別に管理されサイロ化されているデータでも効果的にAIの学習に利用することができます。これにより、個々の拠点の状況を考慮しながら、導入負荷を下げつつAIを効果的に利用することが可能になります。
金融業においても、連合学習の活用は顧客データや取引データを安全に分析する新しい道を切り開いています。特に、不正取引検知やリスク管理の分野での応用が期待されており、データのセキュリティーと運用効率を同時に向上させる可能性があります。
STADLEが提供する効率的なAI運用ソリューション

TieSetの提供するサービス「STADLE」は、AIモデルの学習から運用、改善までを一元管理するAIプラットフォームです。
ライフサイクルマネジメントも提供しており、モデルのリポジトリやバージョン管理も可能です。まさに、学習からデプロイ、デプロイ後の運用や改善までの全プロセスを包括的に管理することができます。学習においては、モデルのパフォーマンスを時系列で表示・可視化することで、直観的で操作性の高いGUIも実現しています。
STADLEは、プライバシー保護とセキュリティーが求められる業界でのAI導入を加速し、データ活用の可能性を広げるプラットフォームとして注目されています。