晩婚化や未婚率の増加により、結婚式を挙げるカップルの数は減少しています。しかしながら、厳しい状況にあるブライダル業界にあえて参入し、Web招待状や顧客管理システムなどのSaaSを開発しているのが株式会社TAIAN(たいあん)です。創業の経緯やブライダル業界に特化した事業を展開する理由について、代表取締役 CEOの村田磨理子さんと取締役 COOの米倉元気さんに伺いました。
コロナ禍で結婚式の中止・延期が増加したことが起業につながった
早くから起業を意識していたスタートアップ創業者が多い中で、2020年にTAIANを創業した村田さんは、もともと起業を考えていなかったといいます。
村田さんは、大学卒業後にエンジニア派遣事業を行うリクルートスタッフィングに入社しました。その後、エンジニアのHR領域に深く関わりたいと考え、HR tech事業を展開するギブリーへ転職しました。2020年1月にはエンジニアであるパートナーと結婚し、結婚式用に自作したWeb招待状やWeb席次表が好評を博しました。その反響を受け、他のカップルにも使ってもらいたいと考え、「Concept Marry(コンセプトマリー)」としてサービス化しました。
その後すぐに新型コロナウイルスの感染が拡大し、結婚式の延期や中止を余儀なくされたカップルは約24万組にも上り、ブライダル業界は非常に厳しい状況に陥りました。
そのような状況を受けて、「結婚式の延期に伴うペーパーアイテムの再印刷や席次表の変更に対応できるサービス」としてWeb招待状が事業者にも大いに注目されました。結婚式場からの問い合わせが増加したことを受け、BtoCからBtoBtoCにビジネスモデルを転換しました。結婚式場を通じて社会貢献できるサービスとして営業を始めたことが、起業のきっかけとなりました。
取締役の米倉さんと村田さんは、リクルートスタッフィング時代に同じチームで働いていた仲間です。
村田さんは「この事業が芽を出し始めた時に、業界と共に社会を変えていくような大きな動きをしないと意味がないと感じました。その際、業界に寄り添いながら共に前進できる適任者を考えた時に、米倉しか思い浮かびませんでした」と言います。そこで、1年半にわたり熱心に声をかけ続けた結果、米倉さんが正式にTAIANに参加してくれました。
結婚式だけでなく、その前後にある「お祝いごと」までカバーしたい
TAIANは、ブライダル業界に特化した各種サービスを提供するバーティカルSaaS事業を展開しています。現在開発・提供しているサービスには、ブライダル事業者向けのWeb招待状・席次表「Concept Marry」、婚礼宴会システム「Oiwaii(オイワイー)」、そしてブライダル事業者向けWebメディア「ブライダルDXマガジン」があります。
創業当初はWeb招待状を主軸としたサービスを展開していました。しかし、当時はコロナ禍で結婚式の新規集客が非常に難しい状況だったため、結婚式場のビジネスを支援する目的で、LTV(顧客生涯価値)を伸ばす方向性へとシフトしました。挙式したカップルとの関係性を深め、別の機会にも再び利用してもらえるよう、新たなプロダクトを開発したのです。
TAIANが提供するサービスは、誕生日、記念日、イベントなど、さまざまな「お祝いごと」をカバーしています。結婚式という特別なタイミングを活用し、顧客情報に加え、誕生日や記念日の情報を管理するシステムを提供することで、記念日ごとに顧客へアプローチできる仕組みを構築しています。これにより、より広い市場の獲得を目指しています。
覚悟を持って名付けた社名
TAIANという社名は、もちろん大安吉日が由来です。現在の社名になる前は、Web招待状サービス名と同じ「Concept Marry」という社名でした。TAIANという名前に込められた意味については、「覚悟的なところが強かった」と語られています。
「Web招待状サービスをメイン事業として展開していた時期に、他業界に向けて水平展開すべきか、ブライダル業界向けに垂直展開すべきかを迷っていた時期がありました。しかし、ブライダル事業に本格的に取り組むことを決めた際、CEOの村田がその決意を示すために社名をTAIANに変更しました」と、米倉さんは当時の状況を振り返ります。
強い気持ちで付けられたこの社名には、「すべての日を大安にできるように」「お客様にとってめでたい会社でありたい」という思いが込められています。