夫婦やカップルをはじめ、家族みんなで使える“家族口座”アプリ「ファミリーバンク」は、お金の管理だけでなく、さまざまな情報を共有し、生活を楽にしていく“時短アプリ”として人気を博しています。ファミリーテックの代表取締役兼最高技術責任者の中村貴一さんに、今後の展開と将来の目標について伺いました。
家族のさまざまなタスクがアプリ内で完結
中村さんは、「個人領域や法人領域ではGoogleやMicrosoftといったテックジャイアントがいます。しかし、まだ家族を対象にしたテックジャイアントは出ていません。世の中には家族で暮らしている人が多いはずなのに、まだITで満たされていない。まさにチャンスがあると考えています。家族領域のテックジャイアントになるのが会社の目標です」と今後の抱負を語ります。
「ファミリーバンク」は、口座の管理だけでなく、クレジットカード、ToDoリスト管理、メールの管理などもできるスーパーアプリです。家族に関するさまざまなタスクがこのアプリ内で完結します。
これまでも、「ファミリーバンク」の各機能と似たアプリはありましたが、アプリごとに招待や設定が必要でした。「ファミリーバンク」は家族に必要な機能がそろっているので、パートナーを一度招待するだけで済みます。この点も、家族に広く受け入れられている背景です。
家族の幸せ度を上げて、ワークライフバランスを実現
今、日本では共働き世帯が1200万世帯を超え、男女ともに働いて家事も子育てもするのが当たり前になっています。その中で、生活費を分担して支払うのも一般化しています。誰がどの費用を支払うのか、どのように折半するのかのやりとりに煩わしさを感じる人が多いといいます。
お金の問題がワークライフバランスを実現する上での大事な要素になっています。お金の管理の問題が解決すると、生活費をめぐるもめ事もなくなり、互いの精神的健康が良くなります。また、お金の問題で離婚することも減るかもしれません。
家事や子育ての分担においても、タスクリストを共有することで見える化され、家庭と仕事の両立が円滑になります。共有のメールアドレスを保育園や学校の連絡先に登録しておけば、互いに確認できます。
「ファミリーバンクを使うと、家族の幸せ度が上がると考えています。今日はどちらが子どものお迎えに行くのか、夕飯の買い物はどちらの担当で、学校からのメールの返信はどちらがしているのか、そういった情報がアプリの中でシームレスに共有できれば、仕事に集中できるため、生産性も向上します。ぜひこのアプリを企業の福利厚生に取り入れてほしい」と中村さんは言います。
また、家族の形態が多様化し、事実婚やLGBTQのパートナーと生活を共にする人もいます。法律婚にとらわれない新しい家族の形は、従来の金融サービスでは「家族」として扱われないこともあります。そのような問題も解決できるのが、“家族口座”アプリ「ファミリーバンク」です。利用者が家族と考える相手なら誰でもアプリを共有でき、1つの口座から引き落とされる複数枚のクレジットカード「家族カード」の発行も可能です。
「家族」「金融」「IT」を掛け合わせた新しいマーケットを作る
ファミリーテックでは、最新技術を駆使してゼロからカード発行システムを構築しているため、柔軟な開発にも対応できます。金融機関の既存のアプリにカードの発行機能を埋め込むといった引き合いもあります。現在、銀行APIはまだまだ前例が少なく、銀行も手探りで活用を進めている状態ですが、ファミリーテックは、更新系APIの先駆者として、更新系APIの改善に向けた活動もしています。
「家族カード」は子どもにも発行できます。限度額や使える店舗を限定するなどのペアレントコントロール機能も追加できます。このように、きめ細やかに家族のニーズに対応できる、家族に特化したクレジットカードは「家族カード」が世界初だといいます。
さらに、これまで作ってきた技術基盤を活用し、今後はキャッシュレス決済そのものの構造を大きく変化させるサービスを提供していくことも検討しています。
アプリの機能は今後もさらに充実させていきます。年内には付加価値を受けられるサブスクリプションサービスを始める予定です。またモールをオープンさせて、家族向けの商材を扱うことも準備中です。
個人での生活者としての消費活動は、それが家族用という切り口になると、購買決定要因が変わってきます。家族のデータを活用してアプリ内に効果的に広告を掲載して、利益向上につなげることもできます。
これからも「ファミリーバンク」の機能拡充を図り、利用者一人ひとりのより良い生活を実現させるとともに、さまざまな企業が家族単位を対象にしたサービスを展開できるような開発を強化していく考えです。