Blue Farmは、企業にサステナブルなお茶の導入を提案し、企業価値の向上を目指すビジネスを展開しています。今回は、代表取締役社長の青木大輔さんに、同社のお茶が企業の環境活動にどのように貢献するかと今後の展望についてお聞きしました。
サステナブルなお茶の導入が企業の環境活動になる
理想的なサステナビリティ活動は、企業全体で理念を共有し、実践することです。しかし、日本企業ではサステナビリティ対応が社内に十分浸透していないのが現状です。たとえば、カーボンクレジットの購入や再生可能エネルギーの導入は、数値としての環境対策にはなっても、従業員が企業の貢献度を実感する機会が少なくなりがちです。
一方、これまでBlue Farmに引き合いがあった企業からは、「お茶をサステナブルなものに変えるだけで、会社の取り組みが実体を伴って従業員に伝わる。取引先に対しても効果的に発信することもできる。まさにリアルなサスティナブルソリューションだ」と高く評価されています。お茶であれば、従業員が実際に手にすることができるため、主体性をもって活動に参加できます。モチベーションが上がり、活動に対する意識も変わってきます。
企業はお茶を「買うもの」から「作るもの」へ
農業では植物が光合成で二酸化炭素を吸収して炭素を蓄積しますが、肥料の投入や機械の使用でエネルギーを使っているため温室効果ガスも発生しています。お茶の栽培も同様で、お茶の木が吸収する炭素の量と栽培で排出する炭素の量の正確な数値がわからず、実際の環境価値が十分に活用されていませんでした。
Blue Farmは、測定されてこなかった茶園の環境価値を顕在化させ、サステナビリティ課題を抱える企業に提供することで、環境貢献の新たな手段を生み出しました。また、有機JAS認証を受けた茶園と連携することで、さらに環境価値を高めています。有機栽培は手間とコストがかかりますが、長期的に見れば環境への負荷を抑えられます。
さらに、茶園には契約農園として企業名の看板を設置し、その茶園で社員向けの茶摘み体験などのイベントも実施可能です。これにより、従業員が実際に環境活動を体験する機会を提供できます。
紙製の飲料容器には、間伐材を活用したサステナブルな素材で製造された紙製容器を使用しています。6万本以上の注文があれば、企業ごとのオリジナルデザインも製造可能です。このように、企業の視点を「お茶を買うもの」から「お茶を作るもの」へと転換しています。
ITと自動化で茶業を持続可能な農業にする
Blue Farmは、茶園のデータをセンサーで自動的に収集し、それを分析・処理してダッシュボードに表示する仕組みを提供しています。ダッシュボードは生産者向けと企業向けのページがあり、各ユーザーに適した最新の情報が提供されます。生産者向けページでは、有機栽培に役立つ情報がデータに基づいて更新され、企業向けページでは、サステナブルな取り組みに活用できるデータが提示されます。
茶園での温室効果ガス削減効果は、森林の約3分の2に相当します。年間6万本の環境に配慮した容器を使用することで、30アールの茶園に相当する管理が可能となります。炭素削減量は1.5トン、プラスチック削減量は1.92トンになります。
農業データの活用がさまざまな問題を解決する
このデータ活用の仕組みは、お茶以外の農作物や生物多様性の保全にも応用できる可能性があります。農業をモニタリングし、数値化することで、今後さまざまな分野でのデータ利用が期待されています。
青木さんは、前職を辞めることなく、経済産業省の補助金を受けて出向起業し、2021年にBlue Farmを創業しました。静岡大学との共同研究が静岡市の産学共同研究事業に採択されたり、中小企業基盤整備機構のアクセラレーションプログラム「FASTAR」にも参加したりするなど、数多くの成果を上げています。さらに、独立系投資会社からの資金調達も完了しました。事業は順調に拡大しており、契約数やユーザー数の増加が見込まれています。
「将来的には、Blue Farmのシステムを活用することで、有機栽培の手間とコストを削減しつつ、最も環境価値の高いお茶を栽培できるようにしたい。農家の経験や熟練の技術をシステムに集約し、後継者不足の解決にも役立てたい」と青木さんは語ります。Blue Farmは、茶業のボトルネックを解消し、未来を見据えた取り組みを推進しています。