自動搬送ロボットの開発・販売を手掛けるLexxPluss(レックスプラス)は、ハードウェアスタートアップでありながら技術情報をオープンソース化する決断をしました。ベンダーロックインとは真逆の戦略を採用した理由や、物流業務の自動化の先に見すえる将来について、ファウンダー兼CEOの阿蘓将也さんに話を伺いました。
オープンイノベーションでデファクトスタンダードの地位獲得を目指す
2020年3月に創業したLexxPlussは、自動化ニーズが高い物流業界をターゲットに、自動搬送システムの開発事業を展開しています。同社が開発する自動搬送ロボット「Lexx500」は、センサーを搭載し自律走行するAMR(自律移動ロボット)タイプで、ガイドレスで柔軟な荷物運搬が可能です。
物流現場では、荷物運搬用としてコンベアが広く用いられてきましたが、経路が固定的で償却期間が長いことや、コンベアの設置スペースが確保できない現場があることが課題となっています。コンベアに代わる運搬手段として、固定ルートを自動走行するAGV(自動誘導車)も普及していますが、より制約が少ない運搬手段として、自由に動き情報連携が可能なAMRのニーズが高まっています。
搬送ロボットを導入する際には、エレベーターやコンベアなど既存設備との連携が重要なポイントになります。そこで同社では、工場設備で標準的なPLC(プログラマブルロジックコントローラ)制御機器との連携を容易にするインターフェイス「LexxHub」を開発したほか、製品の設計情報をオープンソースとしてパートナー企業に公開するという選択をしました。これにより企業間の連携を深めることができます。
「現代のビジネス環境では、製品をブラックボックスにして囲い込むよりも、各社が互いに連携して相乗効果を生み出すことが求められています。私たちは多様な製品と連携して幅広いニーズに対応することで付加価値を創出し、企業が生産現場の自動化を検討する際には自動化インフラのデファクトスタンダードとしてLexxPlussが選ばれるよう、その地位を確立したいと考えています。」
目指すは「次世代のファナック、キーエンス」
産業用ロボット市場では、ファナックを中心に国内メーカーが高いシェアを占めています。しかし、ロボティックス技術ではアメリカや中国企業がリードしており、将来的には日本の市場影響力が低下する可能性が指摘されています。次世代の産業機器メーカーを日本から生み出さないと日本企業の競争力が衰えるという危機感から、阿蘓さんは「次世代のファナックや次世代のキーエンスと呼ばれるような産業機器メーカーを目指す」と明言しています。
そこで、海外展開を積極的に進めています。阿蘓さんは、「現在が市場の変革期であるため」と述べ、海外事業の展開が不可欠であるとしています。例えば、アメリカではコロナ禍とインフレの影響で、自動搬送ロボット市場が33%成長しています。この市場の変化に対応するため、米国市場でのビジネス展開を加速すれば、さらなる成長が見込めるとしています。また、日本のサプライチェーンを活用することで、リスクを低く抑えた展開が可能です。
2023年1月に米国法人を設立し、2024年4月には大規模なブランド再編と拡大を実施しました。これにより、今後さらに自動搬送ソリューションのニーズが高まる米国市場での地位強化を図る戦略の一環となります。現在40社以上のパートナー企業もグローバルに拡大し、さらなる事業展開を目指しています。
直近の目標は自動化比率の向上、中長期的には付加価値創出の強化
LexxPlussは「自律的産業インフラへの進化を加速させる」ことをミッションに掲げています。単に物流業務を自動化するだけでなく、人間と機械の協調によって産業インフラ自体を持続的に発展させることで、産業の変革を推進しようとしています。
阿蘓さんは、ボッシュで自動運転開発に携わった経験から、課題解決のアプローチとしてソフトウェアとハードウェアは密接に関連していることを実感しました。そのためLexxPlussでは機器の設計からソフトウェア開発、製造・販売からオペレーションの自動化支援まで一貫して行う形態をとっており、それが強みにつながっています。
将来的な展望として、まずは自動搬送ロボットの提供により物流現場の自動化を支援し、人手によるオペレーションからの移行を促進することを目指しています。さらに、自動化を通じて新たな付加価値を創出します。具体的には技術情報の公開による他社製品との連携や、倉庫管理システムおよび工場の生産管理システムとの統合によって、より高度な自動化を実現します。