O株式会社は、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン在学中にa春さんが立ち上げた日米スタートアップです。メタバース上でクリエイター同士がつながり、アイデアを創発しながらクリエイションできるプラットフォーム「MEs」を開発し、さまざまな業種の企業や団体とのコラボレーションを実践しています。
SFCのバーチャルキャンパスを「MEs」上に構築
メタバースプラットフォーム「MEs(ミーズ)」は、言わばヘッドクォーターツールです。ヘッドクォーターは、組織においてはオフィス、大学においてはキャンパスにあたる場所であり、コミュニティやプロジェクト、チームなど、さまざまな要素が集まる場所です。
慶應義塾大学SFCのバーチャルキャンパスを「MEs」上に構築し、その中で講義などを行う実証実験を、2023年9月から実施しています。この取り組みは、学生がバーチャルキャンパス内を自由に動き回りながら、講義を受けたり、建物や授業のシステムをデザインし直したりすることで、学生の主体的な行動を促進する次世代キャンパスの実現を目的としています。
これまでは、バーチャルキャンパスらしさを体験しようとすると、複数のツールを結びつける必要がありました。例えば、Zoomで画面共有し、Discordで各クラスの授業のメッセージグループを作成し、MiroやFigJamを使ってワークショップやブレインストーミングを行い、研究をシェアし、Dropboxを使ってファイル共有を行うなどです。しかし、さまざまなツールを横断していることにより、思考が分断されてしまい、クリエイティブ思考が生まれにくくなってしまいます。
実際にキャンパスに行かなければ体験できないもの、いろいろな感覚を使いながら思考できるような環境を「MEs」は1箇所でできる場所を作っています。没入感のある体験を提供している「MEs」の中で、メンバーそれぞれのクリエイティブ思考を高め、コラボレーションを通じてより良いアイデアやひらめきを生み出すことができます。
実証実験だけでなく、既に多くの企業や大学などで「MEs」が利用されています。直近では、「建築・都市学生のアイデアや才能を社会に届ける」ことを目指すASIBAインキュベーション・プログラム参加者(第2期生)に対して、「MEs」の無償提供を実施しています。
独自開発で唯一無二の体験を実現
O(オー)株式会社では、バーチャル空間をSaaSとして提供しており、オーダーメイドのバーチャルオフィスやデジタルキャンパスなども提供しています。
例えば、新規事業のプロジェクトを立ち上げる際に、「MEs」を使ってその空間を共有することで、WeWorkやQWSにも近い体験になります。チームメンバーが集まり、ミーティングを行ったり、プロジェクトファイルを交換したり、ブレインストーミングやイベントを開催したり、プロダクトを発表したり、リアルな空間を借りているかのような感覚で利用できます。
a春(アハル)さんは、クリエイティブ思考やナレッジマネジメントの新しいツールとして、「Future of Work(新しい仕事のあり方)」などのすべての要素がクリエイティブ思考とフロー状態、空間認識に紐づいていることに着目し、ゼロからプラットフォームを開発してきました。
「MEs」の空間は、フロー状態に入りやすいデザインで構成されており、ブロッカーを全部排除して、フローに入りやすいトリガーが多数用意されています。例えば、オンライン会議が5時間続くと集中力が切れてしまいますが、好きなゲームなら何時間でも集中してモチベーション高く没頭できて、ゲームの中の問題やチャレンジを乗り越えていけるという経験をした方は多いのではないでしょうか。このようなフロー状態が発生する条件を網羅したUI/UXを、日常的に行う思考プロセスやコラボレーションに紐付けることがポイントになります。
クリエイティブ思考を育てる「MEs」によってゾーンへのディープダイブが容易になる
デザイン思考とクリエイティブ思考の重要性は以前から認識されていましたが、AIの発展により、人間だけが行うことができる作業や、人間だけが有するクリエイティビティの需要が高まっています。
新しい価値を創造するクリエイティブ思考は、アーティストやデザイナーだけでなく、ビジネスパーソン、エンジニア、教育者などにとっても有益な思考手段です。この感覚を掴み、自分自身のユニークな表現やアイデアを開発することが重要です。
「MEs」はプロトタイプリリース時から現在まで、世界トップクラスのクリエイターに使用され、インスピレーションやアイデアの生成を促進するために進化してきました。製品は、ブレインストーミングや共感によるコミュニケーションを容易にするために洗練されています。a春さんは、「MEsは、日常的な使用を通して、自分のアイデアプロセスの蓄積が自然に深まる経験を提供する」と考えています。
「将来の開発については、好奇心を育て、アイデアの有機的な流れを増幅するためのマルチプレイヤースペーシャルコンピュータとしてMEsを引き続き開発していきます。私の夢は、最終的にMEsで生まれたアウトプットが、より多くのユーザーにクリエーションのエネルギーを与え続けることです。」とa春さんは語りました。