Pathfinder株式会社が提供する片道専用のレンタカーサービス「Simpway」は、利便性の高さだけでなくレンタカー業界が抱える課題解決手段としても注目されています。代表取締役の小野崎悠介さんに、MaaS事業を通じて社会に貢献することを目指して起業した経緯やサービスが持つ可能性について伺いました。

このままだと日本は自動運転時代に存在感をなくしてしまう

Pathfinderは、片道専用のレンタカーサービス「Simpway(シンプウェイ)」を提供するスタートアップです。創業者の小野崎さんは、以前勤めていた豊田通商で自動運転関連のプロジェクトに関わっていました。その中で、政府がとりまとめた2030年に向けた自動運転実現のロードマップに違和感を持ったことが起業のきっかけになりました。

「自動運転が普及した世界では、メーカーや車種といったハードウェアは関係なく『移動』そのものが価値になります。日本はハードウェアにこだわるあまりソフトウェアをおろそかにしがちで、このままだと日本は自動運転時代に存在感をなくしてしまうのではないかという危機感を持ちました。日本が自動車開発分野に強みを持っているうちに、GAFAも着手していない領域に先行して取り組めば世界に勝てるのではないかと考えました。」

開拓者という意味を持つPathfinderを起業したのが2020年。火星探査機Mars Pathfinder(マーズ・パスファインダー)をもじって、MaaS(マース)時代の開拓者となる意気込みが込められています。順調にサービス開発を進めていったものの、新型コロナウイルス感染症の拡大と時期が重なり一時事業はストップしました。その後、物流関連事業にシフトするなどの困難を乗り越えて、2022年3月にようやく片道専用のレンタカーサービスSimpwayを東京・大阪間で開始しました。

サービス利用には特別な手続きは不要で、LINEから予約後、デジタルキーアプリに鍵情報が配信され、最寄りの指定駐車場にある車を利用する仕組みです。利用者からはレンタカー料金を、レンタカー事業者からは手数料を徴収するビジネスモデルで、利用者は延べ7500人に達しました。

利便性だけでなく年間50億円ものコストを削減できるポテンシャル

「片道専用」に目を付けたのは、レンタカー事業者と利用者の両方にニーズがあるからです。通常のレンタカーでは、片道のみ利用したい場合には追加で乗り捨て料金がかかります。大都市間では片道利用のニーズが一定数あるものの、高額な乗り捨て料金がかかることがネックとなっていました。

乗り捨て料金が必要な理由は、道路運送車両法により貸し出し元店舗に車両を一定期間以内に戻すことが定められているためです。そのため乗り捨てられた車両は、レンタカー事業者が別途費用を支払って元の店舗へ戻しています。しかし利用者が支払う「乗り捨て料金」よりも「車両を戻す費用」のほうが高額なため、業界全体で年間50億円もの空車両の回送コストが発生していました。

行きと帰りの利用者をマッチングすることで、利用者が廉価でレンタカーを利用できるだけでなく、レンタカー事業者が負担する回送コストの削減と無駄な移動による環境負荷も軽減することができます。

「空港を出たらすぐに運転できる」 外国人旅行者の移動手段としても期待

成田空港を運営する成田国際空港株式会社からのオファーを受け、2022年10月から成田空港専用片道レンタカー「Simpway for Narita」も開始しています。外国人観光客の受け入れ再開に伴い空港利用者が増加する一方で、早朝・深夜の移動や非接触での移動など利便性の高いアクセス手段に対するニーズが高まったことが背景にあります。通常のレンタカーやタクシーに比べて低価格であることに加え、空港にある駐車場で車両を引き受けできる点も魅力です。

利用人数や荷物状況によっては成田エクスプレスやリムジンバスと比較しても低価格で利便性が高いことから利用数を伸ばしており、将来的には関西国際空港や中部国際空港をはじめとした他の空港への横展開を視野に入れています。

(後編へ続く)

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