ドローンの特許開発を行う株式会社エアロネクストでは2020年から物流領域に参入し、自治体や企業と連携しながら社会的な課題解決にも取り組んでいます。地域の課題やドローンが持つ将来の可能性について代表取締役 CEOの田路圭輔さんに伺いました。
特許技術が活きる物流分野に注力
エアロネクストの特許が最も価値を生むのは物流です。荷物を積み高速で一方向に移動するためには傾きに強く重心が変わらない4D GRAVITY®︎のような技術が不可欠だからです。2020年には物流領域に参入し、ANAホールディングスとの業務提携契約によるドローンの機体開発や産業用ドローンメーカー大手のACSLとのライセンス契約によるドローンの共同開発・量産にも力を入れています。
現在物流業界では、ECの発展による物流量の増加や働き手不足など、多くの課題が顕在化しています。特に人の集積度が低い地方では物流効率も悪く、自動化、省人化が強く求められています。さらに過疎地では店舗減少による買い物難民の増加や配達困難地域の発生などの課題もあり、無在庫・無人化や共同配送など、IT活用によって効率化する「スマート物流」に注目が集まっています。さらに社会的にも規制緩和など物流ドローンに追い風が吹き始めました。
エアロネクストでは、物流大手のセイノーグループと協業し、従来輸送とドローン配送をつないだ新しいスマート物流プラットフォーム「SkyHub®(スカイハブ)」を共同開発しました。異なる物流会社の荷物をドローンデポ®に集約し、ドローン等で共同配送することで、ラストワンマイル配送効率を大きく改善することを目的にしています。
さらに都心から電車で約2時間という立地にある山梨県小菅村では、子会社として設立したNEXT DELIVERYと小菅村とで協業して「町ごと倉庫化プロジェクト」を実施しました。町や村をまるごと一つの倉庫に見立ててモノの出入りを管理するプロジェクトで、配送用ドローンを活用して省人化・自動化を実現しています。この取り組みは大きな反響を呼び、多くの自治体・企業が視察に訪れました。今後全国885の過疎地域に導入していきたいと思っています。
ドローンがある生活が当たり前の未来になる
航空法でドローンが飛行可能な高さは地上から約150メートルです。この低空域には電波と鳥しか飛んでおらず、経済には影響していません。田路さんは「この低空域を経済に変えてみせます」と明言しています。ドローンの用途としてイメージしやすいのは点検や空撮ですが、本質的なドローンの価値は「移動」にあると考えています。エアロネクストが掲げる「新しい空域の経済化」ロードマップでも、空飛ぶカメラとしてのドローンから、モノを移動する空飛ぶロボットへ、そして将来的にはヒトを移動する空飛ぶクルマとしてドローンを位置付けています。
物流や移動のドローンは、すべての人に共通の夢だと考えています。測量や点検もドローンの重要な用途ですが、目的は効率化、合理化が主目的であって、ワクワクしない。起業家視点で見ると、やはり新しい世界、新しい市場を創造したいという気持ちがあります。
ドローンはトラック・飛行機などと並んで人々の生活やビジネスに不可欠な物流インフラに成長すると予測しています。それはビジネス領域だけでなくCtoC領域にまで及び、例えばオンラインで友人と会話中に「そのワインおいしそうだね」「じゃあすぐに送るね」と会話のやり取りをした後に、すぐにドローンがワインを友人宅まで送ってくれる、そういう世界が実現する未来を描いています。
エアロネクストとしては、最終的にドローン市場のプラットフォーマーを目指しています。Googleが検索から、Amazonが書籍から、ビジネス領域を広げて成功したように、誰もが利用するプラットフォームに成長した後に、「ああ、エアロネクストって最初はドローンから始まった会社だったね」と言われるのが理想です。