11月17日開催のセミナー「業務改善の成功方程式とは?」から、前回はキャップドゥ森田社長による講演「人手不足解消・人材育成に向けた業務効率化」を報告しました。今回は、中小企業の資金調達をサポートするScheemeの杉守社長による講演と、豊中商工会議所による取組事例を紹介します。

今どきの賢い資金調達法
Scheeme株式会社 代表取締役 杉守一樹さん

杉守さんは、石川県の会計事務所で月次監査や決算申告業務を行うかたわら、資金調達援助や補助金申請などの業務に従事していました。その後、金沢にあるブランディング会社で新規事業開発・マーケティング業務に従事し、2016年9月にScheemeを設立しました。また、金沢市創造推進事業ディレクターとして、創業支援や新規事業開発、マーケティング支援などの相談業務にも携わっています。

Scheemeでは、資金調達や資金繰りの管理をクラウドでできるサービス、補助金の申請や融資書類の作成、資金繰りの管理などができるサービスを自社で開発して運営しています。

コロナ禍で注目される公的資金制度

多くの中小企業が行う資金調達の方法は、①営業利益や内部留保、②金融機関からの融資、③補助金や公的機関からの公的資金、④役員などの事業主貸付の4つがあります。コロナ禍によって、①と②は非常に苦しくなりました。国は特に③と④を支援していて、新型コロナウイルス感染症特別貸付、利子補給、資本性ローン(コロナ型)などが新設されています。

しかし、実際の利用率は5~6%と低く、予算はかなり余っています。なぜ使われないのか? そもそも約8割の方が制度を理解していません。まず、分厚い資料を読むことにハードルがあります。また通常の業務が忙しすぎること、申請手続きの面倒さも理由として挙げられます。

補助金申請のポイント

補助金を採択してもらうためには、次の3点が重要です。
1)要件に沿った申請をすること。
2)加点要素をふんだんに盛り込むこと。
3)複数回申請すること。

まず、補助金の申請にはルールがあります。ルールに沿わないと採択どころか受け取ってもらえません。要件に必ず合わせる必要があります。

例えばAという補助金を申請するにあたり、Bという書類を追加することによって、加点される場合があります。これを盛り込むことで非常に有利になります。多くの方が1回目の応募が最も採択率が高いと思っているようですが、全くそんなことはありません。できるだけ複数回申請することが大事です。例えば1回から6回まで申請できる場合には、最初から申請した方が通る可能性は高い。なぜなら、落ちた理由を回収し改善していくことで、精度が上がるからです。

ポストコロナ時代の中小企業を支援する「事業再構築補助金」

今年注目されている「事業再構築補助金」は、Scheemeでも100社近く支援していますので、申請のポイントについてご紹介します。

補助金申請の審査は、1社当たり5分くらいです。その中で長いテキストをすべて読むことは難しいため、できるだけサマリーを伝えることが重要です。強み、弱みなど、極力わかりやすい言葉で書くことが大事です。また、リスクや実際の業務などを具体化することで、採択が非常に通りやりやすくなります。

採択されなかった事例から見えてきたポイントもお伝えします。
まず、売り上げ要件が確認できないなど、書類の不備がかなり多くあります。不採択の30~40%は書類がそろっていません。

次にSWOT分析ができていないこと。補助金の申請、計算書系は特に中小企業診断士の照会を受けて審査をしているので、SWOT分析は必ず押さえておくべきです。

3つ目に、差別化、新規性、最先端の技術を取り入れているか。例えばテイクアウトのお店を新しく始めるときに、顧客管理ツールやLINEのAIツールの導入など、他店との差別化が必要です。今まで人が行っていた部分をデジタル化することは、大きな差別化になります。

4つ目に事業再構築におけるリスクの把握と解決策を明記することです。こういうことをするとこういうリスクがある、しかしこのリスクについてはこのように解決します、という先読みをすることが非常に大事です。

補助金申請に関する情報は、商工会議所や金融機関からも案内はあると思いますが、どちらかというと企業側から聞いていかないと出てこない情報なので、各機関と連携しながら資金調達につなげていただけたらと思います。

中小・小規模事業者の取組事例と公的支援施策紹介
豊中商工会議所
吉田事務局長

画像: 中小・小規模事業者の取組事例と公的支援施策紹介 豊中商工会議所 吉田事務局長

商工会議所は、特に小規模の企業、個人事業主への経営支援をメイン業務としています。吉田事務局長は、11年間現場で経営支援を行い、約1000社の事業者と面談を重ねてきました。その中から、某製造業のIT支援の事例を紹介してくれました。

中小事業社内に多い「シャドーIT」

40、50人規模の製造業の事例です。生産管理、販売管理のシステムは導入していますが、データの共有は昔ながらのサーバーを利用していました。社内にあるサーバーに、社員がアクセスして情報を共有していました。今もそういう会社は多いですし、珍しいことではないと思います。

社内ネットワークの中はしっかり制御できていましたが、社員がUSBやストレージにデータを持ち出したり、自宅のパソコンで作業したりということが起きていました。例えば、メモリを落としてしまったらどうするのか、セキュリティはどうなっているのか。IDパスワード、クラウドのストレージは大丈夫なのかなど、問題が山積していました。

経営側からすると、なぜ勝手にデータを持ち出すのかと思うかもしれませんが、現場側は仕事の効率を上げたいという気持ちがあります。会社がそういう仕組みを用意してくれないという言葉も出てきました。

これは「シャドーIT」といい、見えないところでそれぞれがそれぞれのやり方でデータを持ち出して仕事をしている状態です。コロナ禍で在宅勤務などがあり、シャドーITが増えていると思われます。経営者側が認知していないケースも多く、7割が認知していなくて、3割が黙認状態といわれています。いずれにしても、業務効率化ができていないからこそ現場でこういう動きが起きてしまっています。

コストを抑えたクラウドツールの導入を

一方で、経営側の話を聴くと、共有データ、メール、スケジューラーをどこからでもアクセスできるようにしたい、セキュリティ対策や、何かあったときに後から確認できる仕組みも必要、操作はややこしいと困るので、できるだけ従来どおり現場が混乱しないようにしたいなど、いろいろやりたいことがあるようです。

もちろんいきなり全部はできないので、できるもの、できないもの、コストがかかるものをはっきり伝えつつ、一緒に考えるというスタイルで提案しました。以前はかなりコストがかかりましたが、今はいろいろなクラウドツールが低価格で出ています。コストをかけずにデータが共有できる仕組みが整ってきました。

この事例の場合は、会社がパソコンを支給して、認証さえ行えばどこからでもOffice 365のクラウドに上がっているデータにアクセスすることができるようになりました。

併走してくれるベンダーの重要性

これまでは社員の方がITツールに詳しかったので、それを活用しながら好き勝手に仕事をしていました。社員の知識に経営者側、管理者側がついていけず、社員主導で社内のIT化が進んでしまっていたのです。ルールの整備、パソコンの貸与など、しっかり会社側が用意することで、業務の効率化、セキュリティの強化を実現できました。

あとは、この仕組みを維持できるかどうか。業者によってはシステムを入れたらおしまい、というところも実際にあります。そうではなく、ずっと伴走してくれる業者にしっかりついてもらうことが重要です。商工会議所もITコンシェルジュとして伴走できる仕組みを持っています。もしくは取引のあるベンダーに、こちらからどんどん訊くことが大切です。第三者を確保して伴走してもらえる形でやっていくことが重要です。

豊中商工会議所は、豊中市から委託を受けて、豊中市内の企業に限り、ITの専門家を無料で派遣できる仕組みを持っています。どんなささいなことも、逆にこんなことを解決できるのかというレベルの高いことでも、あるいはベンダーとの取引におけるセカンドオピニオン的に使ってもらってもいいと思います。ぜひご活用いただけたらと思っています。

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