株式会社ファミワンは「子どもを願うすべての人によりそい、幸せな人生を歩める社会をつくる」をビジョンに掲げ、妊活LINEサポート「妊活コンシェルジュ ファミワン」を提供しています。代表取締役 石川勇介さんに、起業のきっかけやサービスの概要について伺いました。
自身の経験から「一生かけても取り組むべき課題」と起業を決意
起業のきっかけは、自分自身の妊活の経験から「妊活に必要なサービスが存在しない」と感じたことです。妊娠についての知識の曖昧さ。子どもが欲しいと思ったとき、病院に行くべきかどうか。病院に行くようになった後は何をしたらいいのか。わからないことを夫婦で話し合うのも簡単ではなく、平行線になることも何度もありました。
石川さんは次第に「妊活自体の課題が深いのに人と話すことがタブー視されていたり、十分なサポートがあるとはいえない現状に対して、誰かが何とかすべきだ」と考えるようになりました。
当時は医療従事者に医療情報を提供するエムスリー株式会社に勤務していました。情報を取り扱う際、エビデンスは必須で、最新の学会の情報をチェックする習慣がありました。しかし、ネットにあふれている妊活の情報は、曖昧で不正確なものが多い。そのまま会社にいながら新規事業として妊活サポートを発案できたかもしれませんが、事業の可能性、市場規模、収益性などを考慮すると非常に難しいとも感じました。だからこそ、エムスリーを飛び出してでも一生かけても自分が取り組むべきだと考えたのです。
情報の提供・整理のサポートと、ユーザーの気持ちによりそうサービス
2015年に起業し、「どんなサービスが一番受け入れてもらえるのか」「どんなサービスなら届けたい価値が届くのか」、何度も何度もピボット(路線変更)を繰り返しました。そして、2018年にLINEを活用した「妊活コンシェルジュ ファミワン」の提供をスタートしました。
特徴として、妊活を始める前の時点からの相談も可能で、具体的な病院や治療方法の選択など幅広く利用されています。治療中の方が病院で聞きにくいことに答えたり、妊活の「やめ時」が見えないというカップルにも、気持ちによりそうサポートを提供しています。
LINEで友達登録をすると、妊活チェックシートが送られてきて、回答すると約3日後にアドバイスが届きます。それをしっかり読み込んで、今後の方針について考えてもらいます。その際、病院選びなどの相談もできます。回答は、不妊症看護認定看護師、臨床心理士、助産師、胚培養士、ピアカウンセラーなど、妊活の専門家が行うので、最適なサポートができる設定になっています。
ユーザーとのやりとりにチャットを採用していないのは、延々とやりとりが続いてしまったり、LINE上ですべてのデータが残ってしまうことを懸念したからです。ユーザーが専門家に依存してしまうことも避けたいと考えています。なぜなら、「こうすれば必ず妊娠する」という正解はないからです。ファミワンは妊活するカップルの知識や思考の整理をサポートします。それに基づいて自分たち自身で考えて選択していただく。「私たちはそこにいつでもよりそっています」というスタンスです。
現在、登録ユーザー数は約3万人で、ここ1年で非常に伸びています。コロナ禍での不安な状態もあり、正しい情報を得て方針を決めたいと考えているカップルのニーズが増えてきたのではないかと感じています。妊活中は、自分たちが決めたことに対して周りから意見を言われたりすると、気持ちが揺れ動きがちです。そうしたカップルに対して、具体的に客観的なアドバイスができることがファミワンの強みと考えています。