建設業界のDXを推進する株式会社CLUEは、SaaS事業でありながらハードウェアとソフトウェアを合わせて提供するユニークなビジネスモデルを実現しています。屋根外壁点検アプリ「DroneRoofer」を主軸に、エンタープライズ向けの新しいプロダクト展開にも積極的に取り組む同社の将来展望を、代表の阿部亮介さんに伺いました。

カスタマーサクセスチームが並走して、本当に業務に使えるようにサポート

朝田)エンタープライズ向けのサービスも始められて、特に工夫されている点はありますか? リソースが割かれてしまう心配はありませんか?

阿部)エンタープライズのお客様も増えている中で、当社の製品を通じてドローンを日常業務で安心してお使いいただくために、安全面に特に配慮する必要があるので、建設現場のための施工管理アプリ「ドローン施工管理くん」では、最初に飛行制限区域をアプリ上で作って、ドローンが工事現場の外に飛んで行くことを確実に防ぐ機能を提供しています。当社の製品はSMB(中小企業)もエンタープライズも両方、機能要件として満たしていますし、個別のカスタマイズは必要ないので、リソースについての心配はありません。

朝田)顧客数を増やすのか、顧客の中でアップセルを目指していくのか、どちらに振れていますか?

阿部)「DroneRoofer(ドローンルーファー)」は全国の工務店が対象なので、社数が重要です。ただ大手ハウスメーカーは全国に数十拠点あるので、カスタマーサクセスチームの人数が増えていけばいくほど、既存顧客からのアップセルは増えてくると思っています。「施工管理くん」のお客様はゼネコンで、スーパーゼネコンでも導入されています。きちんと1社に愛用していただいて、そこから他の現場でも使っていただけるようにしたいです。

朝田)CLUEの素晴らしいところは、単にハードウェアを売っているのではなく、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせて現場に入り込んで一緒に課題解決しているところだと思います。それをDrone as a Service(DaaS)モデルとして、SaaS型で月額にて提供しているのが、受注請負型ビジネスと大きく違うところですよね。これは、どのような取り組みで実現しているのか、何がポイントなんでしょうか?

阿部)最も重要なポイントは、製品の導入を決定するのは社長や決裁者だったとしても、日々使うのは現場の職人や作業員の方ということです。カスタマーサクセスチームが、一式納品した後に日常業務に使えるところまで細かくレクチャーしています。ドローンを日常業務に使っていただくDXパートナーと認識していただきたいと考えています。CLUEは企業カルチャーとしても、お客様に並走して仕事をするというマインドセットの社員が非常に多いので、結果的にドローン業界で唯一SaaSモデルの提供ができていて、解約率も非常に低いという組織や製品が作れていると思っています。

画像: カスタマーサクセスチームが並走して、本当に業務に使えるようにサポート

お客様のイシューありきで事業を創造し、世の中の「不」を解決したい

朝田)当たり前にドローンが飛び交い、ロボットやIoT機器が配置されている世界において、CLUE はどんなポジションを築くことを目指していますか?

阿部)レガシーな巨大産業はいろんな業界構造的な「不」を抱えていて、ドローンに限らず他のテクノロジーでも解決できることがたくさん見つかってきています。今は私たちはまだスタートアップなので、「選択と集中」で事業を行っておりますので、まずは、ドローンを機軸にして大きな利益を創出できる会社を目指しています。

その後は、周辺のテクノロジー領域を取り込みながら、3次元空間の大量なデータをAIできちんと解析するソリューションを作って、DXパートナーとしてお客様の「不」を本当に解決できる会社を10年20年かけて作っていきたいと考えています。

朝田)たしかに今の事業領域以外のところにもいろんなビジネスチャンスがあると思います。SmartCityでも語られるように、データ駆動社会の中では、ドローンのモビリティデータや収集した画像データ、各社が開発しているドローンの機体を制御するソフトウェア基盤等は、価値の源泉となると思います。その辺りはどのようにお考えですか?

阿部)「DroneCloud(ドローンクラウド)」や遠隔操作システムでは、お客様のイシューからスタートするのではなくて、将来こういうのは必要になるから先んじて作っておこうという仮説思考だったのが、失敗要因だったかなと思っています。テック系スタートアップで陥りがちな「〇〇の技術ありきで作ったプロダクト」になってしまい、お客様にとっては何も付加価値をもたらさない製品を作ってしまっていました。

当社の行動指針(バリュー)にイシュー・ファーストと掲げているのは、この失敗体験に紐づいていて、事業を創造することはお客様のイシューありきで、それを本当に解決できるなら作り始めるという順番です。そのため、ドローンなどで収集したデータを活用してお客様のイシューを解決できる製品や機能が作れるのであれば、お客様の声をしっかりと反映しながらサービス展開を考えていきたいと思います。その上で、価値提供に必要な新しいテクノロジーやパートナー企業が見つかればしっかりと足並みを揃えて事業展開していきたいと考えています。

朝田)建設業界などの個別の業界にとどまらず、例えば、屋根点検サービスだけでみても、損害保険業界と組んで災害時の保険算定に活かすなどドローンで収集できるデータをもとに、いろんな業界にある“イシュー”を解決するような新しいビジネスを展開できそうですね。

「ドローンが当たり前に飛び交う社会」に向けて実直にやり続けていきたい

朝田)今後は5G の本格化、有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル4)なども計画されていますが、CLUE としてはどのような形で取り組んでいくことになるのでしょうか?

阿部)目視内の事業ドメインだけでも十分な市場規模が見込めますし、既存製品の顧客と機能改善を実直にやり続けるのが最も重要かなと思います。もちろん5年後10年後、社内的にもリソースが潤沢にある時に目視外飛行をやる可能性はあります。台風や地震の後に町全体の損害状況を一気に把握したいというニーズは大きいし、既存の事業ドメインの拡張版として、われわれの技術力で解決できるところがあればやりたいなと思っています。

朝田)社会インフラの老朽化と、その点検業務を担う作業者の高齢化という喫緊の課題があります。こういった領域への取り組みはいかがでしょうか?

阿部)ドローンで既存の老朽化したアセットを点検したいという要望もいただいています。適切なパートナー企業が見つかれば、当社の既存の技術力とも相性がいいので、製品として切り出した上で展開したいと思っています。その場合重要なのは、現場の細かいニーズをヒアリングしてフィードバックをもらいながら作ることで、できれば現場に近い会社と組んでやりたいと考えています。

朝田)最後にドローン前提社会への抱負をお願いします。

阿部)ドローンが訓練を重ねた人しか飛ばせない社会になってしまうと、ドローンで解決されるべきはずの課題の解決もできないと考えています。CLUEのサービスが広まっていけばいくほど、さまざまな業界で誰もが簡単で安全にドローンを日常業務に使えるようになり、当社のビジョンである「ドローンが当たり前に飛び交う社会」に近づいていくので、それに向けて実直に事業を進めていきたいです。

朝田)キャナルベンチャーズとしても、CLUEの社会実装力の高さに非常に期待しています。本日はありがとうございました。

阿部社長のプロフィール
阿部 亮介 代表取締役 CEO
東京大学大学院工学系研究科修了後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。エンジニアとしてWebサービスの運用開発経験を経た後、シンガポールに渡り、現地スタートアップに入社。マネージャー及びアプリ開発エンジニアを経て、2014年に日本に帰国し株式会社CLUEを設立。

画像: ドローンによる屋根点検サービス「DroneRoofer(ドローンルーファー)」 www.youtube.com

ドローンによる屋根点検サービス「DroneRoofer(ドローンルーファー)」

www.youtube.com

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