ポストコロナ、アフターコロナでは、サプライチェーンの在り方も大きく変化していくと考えられています。そのような中で貿易業務におけるサプライチェーンマネジメントサービス「Zenport」が目指す価値提供や今後の展望について、株式会社Zenport 代表取締役の太田文行さんに伺いました。

システム導入で煩雑なコミュニケーション業務が激減

「Zenport」は繊維商社、アパレル企業、食品企業、日用品メーカーなど、年商数百億円から一兆円に近い規模のメーカー・商社などで導入されています。ターゲットは輸出入に関わる商社・メーカーで、海外で生産した商品を輸入して国内で販売しているような企業が注力分野です。

クラウドサービスではありますが、それぞれの企業の業務に合わせた利用方法の落とし込みや、基幹システムデータの連携インポートなど個別開発に似た部分もあり、導入期間や費用が必要なことから比較的大規模な企業に向いています。また、大手生活用品メーカーから国内外の複数の生産拠点間で活用したいなどの要望もあり、同じ企業内でもシステムでデータをつなぎにくく、メールやエクセルが必要になる業務でも引き合いが増えています。

もともと貿易業務では関係企業が多く、それぞれが違うワークフローを持っているので、システム間の連携が難しいという課題がありました。さらに納期を早めてほしいという要望や、生産や輸送の遅延によって発生する調整などにより、既存のスケジュールを柔軟に変更する必要があります。細かい変更・調整が常に行われているのが貿易業務の特徴であり、複雑になる理由です。さらに産業、国によっても関係者やフローが変わるため標準化が難しく、共通のデータベース構築は非常に困難です。

そこで、業務フローはそのままにしておいて、輸出者と輸入者と輸送者がコミュニケーションしている内容だけを標準化することにしました。そこでわかったことは、輸入者は発注単位、輸出者は商品単位、輸送者は輸送単位でものを見ていることでした。同一取引のことを話していても、立場ごとに見方が違っているので、取引情報が統合できないのです。

「Zenport」では全部ひとまとめにしたデータベースと、それぞれの視点で情報が上書きできるもう一つのデータベースを組み合わせることで、無駄な情報のやりとりや入力作業をなくしていくことができます。また、業務関連書類などの構造化データと、メールでのやりとりといった非構造化データを結び付けられるようにしました。取引書類そのものと、それに関するやりとりをすべて「Zenport」上で行うことでメールや電話のやりとりが激減し、担当者1人当たり週に1~2時間削減できたという話もあります。

厳しい状況が逆に追い風に

「グローバルサプライチェーンに、共通言語を」をミッションにしています。コロナ禍でリモートワークやデジタライゼーションが進み、Zenportへの問い合わせも増えています。その一方でリモート環境が影響しているのか意思決定は長くなっていると感じています。

需要の減退、カントリーリスクの増大などに対して、製造単位を小ロット対応する必要が出てきて、それに伴いコミュニケーション単位も細かくなっていきます。またカントリーリスクに備えて生産国を増やすと、さらにコミュニケーションの量が増えていきます。その反面、コロナによる移動制限があるうちは現地で担当者と直接話すことはできなくなっていて、非対面でいかにスムーズに交渉を進めるかが重要になります。コミュニケーションは増えるのに実際には会えないというジレンマの中で、テクノロジーを使わざるを得ない状況に、サプライチェーン、特に海外とのチェーンマネジメントはあります。

今後の展開としては、各種デジタルサービス、金融関係などを提供するサービスプロバイダー、サービス提供事業者が、「Zenport」上でサービスを供給する仕組みの構築を計画しています。それにより輸入者の在庫最適化を容易にし、輸出者の生産最適化を行い、物流会社における業務最適化を図る、貿易に携わる企業にとってのプラットフォームを目指しています。

その先には蓄積したデータの活用を視野に入れています。サプライチェーンのデータは一個一個で見ると関連性が見えずにバラバラですが、必ず横でつながって他の要素に影響を与えています。このデータを深層学習に活用することで、輸送や生産計画の最適化を行うための支援や取引を改善するBIツールとしての活用ができればと考えています。

複雑な帳票のやりとりも、煩雑なコミュニケーションも、結局は在庫の最適化、生産の最適化が目的です。そのため業務効率化だけでなく、テクノロジーの力によって根本的な問題の解決方法として最適化を実現するサービスにまで進化させ、世界中の人々が共生し協調する持続可能なサプライチェーンを構築する基盤を提供していくのがゴールです。そのためには、さまざまなサービス提供者と連携していきたいと思っています。

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